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環境は、あらゆる生命の母胎であり、存続の基盤である。
人類は、この環境の恵沢を享受し、今日の高度な科学技術文明を構築してきたが、その活動は地球全体の環境に影響を及ぼす規模にまで拡大しており、将来の世代への影響が懸念されている。
このため、私たちは、一人ひとりが環境の有限性を深く認識し、すべての者の参加と協働によって事業活動や日常生活など私たちの活動全般を環境への負荷の少ないものに改め、持続的発展が可能な京都府社会を構築するとともに、こうした取組を通じて地球環境の保全に貢献していかなければならない。(「京都府環境を守り育てる条例」前文より)
地球環境を良好な状態で保持するため、92年6月、ブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開かれました。
この地球サミットでは、87年に国連が打ち出した「持続的な開発」がキーワードとされ、国際的合意づくりが行われ、「アジェンダ21」等の採択、「気候変動に関する国際連合枠組み条約」等の署名が開始されました。
これらの骨子にはいずれも世界各国が地球的なパートナーシップの下にそれぞれの立場で努力し、協力しあうことが盛込まれています。
京都府においても、府民、事業者、行政が、パートナーシップを形成しながら、よりよい環境を目指し、各々の役割を果たしていく必要があり、事業活動においては、自主的に省エネルギー、省資源、ごみの発生抑制、汚染物質の排出抑制、情報の公開等に取組むこと、製造販売した製品の廃棄やリサイクルに一定の役割を分担することなど、自主的な環境管理の推進が、あらゆる分野で求められています。
89年 バーゼル条約の締結
91年 経済団体連合会地球環境憲章発表
92年 英国でBS7750の制定/地球サミット、リオ宣言、アジェンダ21/気候変動枠組み条約の締結
93年 環境庁「環境にやさしい企業行動指針」の作成/環境基本法の制定
96年 京都府環境を守り育てる条例施行/ISO14000シリーズの制定
条例第61条第1項に規定されていますように、「事業の実施に当たって自主的に環境の保全及び創造に関する方針及び目標を定め、その方針及び目標を達成するための計画を策定して実施し、その実施状況を点検して必要な見直しを行う一連の取組」をいいます。
次の効果が期待できます。
持続的に企業経営を行うためには、環境配慮も重要なポイントであり、その取組として、環境負荷の削減等が考えられますが、これらを達成するとともに、環境に関する法令、規則、基準について、系統だった把握・管理を行うためには、環境管理が有効になります。
環境管理を推進することは、総合的に環境負荷を少なくするといった観点から事業活動を改善することだともいえます。
省エネルギー・省資源の徹底、廃棄物の徹底削減と再利用などの環境保全対策は、エネルギーや資源の節約によってコストダウンにもつながります。
地域の環境保全活動に積極的に参加して、地域アメニティの推進に貢献することも企業のイメージアップにつながることとなります。
また、環境管理の内容を積極的に公表することにより、地球環境保全に配慮していることが明らかになり、企業のイメージアップにもつながるのではないでしょうか。
はじめて環境管理を推進する場合、環境方針などを策定するに当たっては、自社における環境への負荷の排出状況などを詳細に把握することが必要であり、この把握方法として、予備調査を行うことが望ましいと考えます。
これは、環境管理の一要素ではなく、それを構築するための準備作業となります。
予備調査では、主に、法令の要求事項や、自社の環境対策、環境への負荷の把握、社内体制などの確認を行うことが重要であり、チェックリスト等を活用すれば、網羅的に把握でき、非常に効果的です。
次に、その確認の結果に基づいて、環境方針や環境目標を定めて下さい。
環境管理を行うには、企業全体として環境の保全及び創造に資する事業活動を行うための根本理念となる環境方針が必要となります 。
環境方針には、事業活動に伴う環境への負荷に関し、法律及び条例に基づく規制基準等を遵守するだけでなく、良好な環境の保全などを目指しての取組みや、環境に関して社会に貢献する活動への積極的な協力や参加について、理念を明確にすることが重要です。
また、環境方針を文書化し、事業活動に携わるすべての人々に周知することも必要です。
環境方針を具体化するため、それぞれの事業活動の内容に応じて個別に、例えば、廃棄物の排出抑制や省エネルギー対策などについて、なるべく具体的な目標(できれば数値目標)と達成期間を定めていただくことが重要です。
その際には、規制基準より厳しい自主的な目標となる基準を設定することが望ましく、策定される際には、当マニュアルの「取組のチェックリストの例」を活用してください。
なお、環境目標も、具体的な内容で文書化し、関係する部署に周知することが必要です。
地域の環境保全が地球環境の保全につながることを踏まえ、公害防止施設の設置、低公害機器の使用等大気汚染、水質汚濁等の公害防止対策を行う。
(例)
二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスの発生を抑制し、地球環境の保全に努める。
(例)
今世紀中に事業活動に伴う二酸化炭素排出量を90年度レベルにする。
省エネルギー対策、未利用エネルギーの活用、新エネルギーの利用等を行う。
(例)
電力使用量を今世紀中に90年度比の90パーセントに削減させる。
生産プロセス等で投入される無駄を抑制し原材料等の削減を図る。
(例)
今後3年間で、燃料、上水、紙の使用量を93年度の80パーセントとする。
廃棄物の減量化、資源ごみのリサイクルを推進する。
(例)
植物の持つ水資源かん養機能、二酸化炭素吸収機能、大気浄化機能に着目し、緑化を積極的に推進する。
(例)
自動車交通公害対策として、モーダルシフト(交通手段の見直しによるエネルギー効率の向上等)、エネルギー効率の高い運輸交通機関の導入、物流の共同化等、輸送システムの効率化、低公害車の利用等を図る。
(例)
環境目標をどのような方法で達成していくのかを具体的に計画として定めるものが環境行動計画です。
なお、環境行動計画も事業活動に関わる者に周知し、着実に実施していくことが必要です。
例えば、環境管理総括者が策定することが考えられます。
この計画には、環境目標を達成するための方途や、環境行動計画の実施状況を把握する方法、また、事業活動に伴って生じる事故や緊急事態への対応、環境影響を緩和するための緊急時の措置、さらに環境管理を推進する上で関連する会社等との協力体制及びこれらの責任者について具体的に定めることが望まれます。
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策定した環境行動計画を実施するに当り、はじめに実施する単位については、当マニュアル「環境管理の推進に係る指針」では、府内に1事業所だけ設置されている場合を想定していますが、その他、府内に複数の事業所を設置されている場合や、府外で同様の取組が行われている場合には、その適用範囲を工夫していただいたら良いと考えています。
例えば、府内に本社がなく、工場や支店だけがある場合には、本社の方針などを踏襲しても良いと考えます。
環境目標の達成状況を的確に判断するには、社内での報告を定期的に行うことが重要になります。
例えば、事業者、環境管理総括者及び環境行動計画を実施する責任者で、環境行動計画に沿った取組の実施体制を構築している場合には、環境管理がより円滑に推進できますので、この報告の仕方について、あらかじめ手順を定めていただくことが望ましいと考えます。
さらに、環境管理を円滑に推進するためには、事業活動に関わるすべての者が、環境管理の考え方や必要性を認識して業務に従事することが必要です。
そのためには意識の形成を図るための教育を行うことが重要になります。
また、その効果を検証して、教育プログラムを見直したり、社員との意見を交換する機会を設けることも重要であると考えます。
そして、環境管理の考え方や必要性を認識した社員は、家庭や地域社会においても、積極的に環境に配慮した行動を行うことが期待されますので、この点でも大きな相乗効果を生むと考えられます。
環境目標の達成状況や環境行動計画の実施状況など、一連の環境管理の取組状況について、点検を行い、今後の環境管理の推進に生かす必要があります。
また、環境管理に関する取組状況については、定期的にその結果や評価を環境管理総括者に報告することが必要です。
点検(内部による監査)を行う者は、点検の対象となる事業活動の関係者からの影響を受けず、また、必要な知識を有する者のなかから選任することが望ましいと考えます。
また、より客観的な診断を受けるために事業の関係者以外の者によって、点検(外部による監査)を行うようにすることがさらに望ましいことです。
環境管理を推進するためには、環境管理の適正さ、妥当性及び有効性を保つことが重要であり、環境行動計画の実施状況や点検等の結果に基づき、環境方針などの見直しを行うことが必要になります。
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