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第1章 市町村の現状と課題

本格的な地方分権時代を迎え、これからの市町村は、少子高齢化、高度情報化、環境問題などの広範な行政課題に的確に対応していかなければなりません。そのためには、行政能力や財政基盤をより一層充実していくことが必要です。

しかしながら、「市町村行財政研究調査会報告書」に述べられているように、市町村、特に小規模市町村は、行政水準や財政力、行政運営の効率性などにおいて総じて厳しい状況にあり、少子高齢化や過疎化、日常生活圏の拡大等がもたらす影響を踏まえるならば、今後難しい局面を迎えることも予想されます。

したがって、府内のそれぞれの地域において、市町村や議会はもとより住民の方々が自らの地域の現状と行政課題を踏まえながら、これからの市町村はどうあるべきか、そのために必要な行政体制や行財政基盤をいかに整備・充実していくかを、合併や事務の共同化を含む幅広い視点から真剣に検討していくべき時期にあると考えます。

今、私達の周りでは少子高齢化や高度情報化、環境問題の顕在化といった様々な変化が同時並行的に進行しています。住民に最も身近な基礎的地方公共団体である市町村が、これらの変化に的確に対応していくためには、それぞれの市町村において人口動向や行政水準等を的確に把握するとともに、こうした潮流を踏まえ、今後の市町村の行政課題をしっかりと認識することが必要であると考えます。この点に関して、「市町村行財政研究調査会報告書」では、京都府内の市町村における行財政の現状認識や将来展望について概観し、次のように述べています。

1 人口等の動向

わが国の総人口は2007年(平成19年)をピークに減少に向かい、高齢化率も1995年(平成7年)の14.6%から2025年(平成37年)には27.4%まで上昇し、世界でも例のない速さで高齢化が進むものと予測されています。

府内市町村においては、人口規模が小規模な団体、人口が減少してきている団体、高齢化の進んでいる団体は、概ね共通しています。

  • わが国では、平均寿命が大幅に伸びる一方、生まれてくる子供の数は減少を続けてきました。この傾向が今後も続くと、わが国の総人口は2007年(平成19年)をピークに減少に向かい、高齢化率も1995年(平成7年)の14.6%から2025年(平成37年)には27.4%まで上昇し、世界でも例のない速さで高齢化が進むものと予測されています。
  • 府内44市町村のうち、人口2万人未満の団体が30団体(府内市町村数の約68%に該当)あり、うち8千人未満が15団体(同34%)を占めています。
  • 「昭和の大合併」以後、約半世紀の間(昭和35年と平成11年の人口を比較)に、北・中部地域では人口が半減した団体がある一方、南部地域では5倍以上になった団体もあります。
  • 過疎団体に該当する12団体(うち1団体は経過措置)はいずれも人口規模が小規模(8千人未満)であり、高齢化も進行しています。

2 行政水準(社会基盤の整備状況)

社会基盤の整備状況をみると、全体としてかなりのばらつきが見られるが、概して言えば、小規模市町村において、整備が進んでいないところが多く見うけられます。経年的にみても、これらの市町村間の格差は拡大する傾向が窺われます。(これは、小規模市町村の中には、地理的条件や過疎化の影響によって、社会基盤の整備が難しい地域があることも影響していると考えられます。)

  • 道路交通基盤に関して「道路改良率」を例に見ると、地域的に見ても人口規模で見てもばらつきが見られますが、一部小規模の町村において30%を割り込むところも見られ、平成10年度と昭和55年度の整備水準と比べると、各団体とも上昇しているものの、整備率の格差は広がっています。
  • 住環境基盤に関して「汚水処理施設整備率」を例に見ると、平成に入って全団体が施設整備の取組みを始めましたが、人口2万人未満の団体の一部においては、平成10年度も10%を割り込む団体が見られ、伸び率も低く、平成2年度と比較して格差が広がっています。
  • 環境問題への対応に関して「ゴミ収集率」を例に見ると、昭和45年度と平成10年度を比較すると、全体的に上昇しているものの、特に都市部ではいずれも90%を越えているのに対し、小規模町村の一部では80%を割り込んでいます。

3 財政力

過疎化や地理的条件もあり、市町村の規模が小さくなるほど、地方交付税や地方債の割合が高くなり、自主財源以外に依存する財務体質が窺われます。また、全体的な傾向として、近年、経常収支比率の上昇や公債費の増大がみられます。

  • 財政力指数は、人口規模が大きな団体ほど高い値となる傾向が見られます。また、人口一人当たり地方税は、都市部及び南部の町村に高い値の団体が集中し、小規模町村では低い値の傾向が見られ、平成元年 度からの伸びも小さくなっています。
  • 一方、人口一人当たり地方交付税は、人口規模が小さな団体ほど高い値となる傾向が見られ、平成元年度から比べると各団体とも概ね伸びていますが、小規模町村ほど伸びが大きくなっており、相関曲線は人口1万~2万の辺りで屈曲点が見られます。
  • 人口一人当たり起債残高は、人口規模が小さな団体ほど高い値となる傾向が見られ、また、地方債を活用した事業等の積極的推進、経済対策や地方税減収に伴う財源対策により、平成元年度と比べて高くなっている団体が多くなっています。一方、起債制限比率は、交付税措置の充実した起債の増加等を背景として全体的にはやや低下傾向にあります。
  • 財政状況の弾力性を示す経常収支比率については、南部の市町を中心に90%を超え、平成元年度と比べて2桁の伸びを示す団体も多く、全体的に硬直化が進んでいます。

4 行政運営の効率性・専門能力

人口規模1~2万人を境として、住民1人当たりの財政支出や職員数等の指標が急激に増大する傾向が見られます。小規模町村では、管理部門が占めるウェイトが大きく事業部門への配分が相対的に低くなる傾向が見られます。また、専門的な組織体制や専門職員の配置が全体的にみると難しい状況が見られます。

  • 人口一人当たりの歳出は、人口規模が小さくなるほど高い値となる傾向が見られます。平成元年度と比べると各団体とも伸びていますが、南部の市部では増加額が小さく、市町村の規模による格差は広がっています。
  • 人口一万人当たり一般行政職員数は、人口規模が小さくなるほど高い値となる傾向が見られ、最大と最小の比率が4倍以上と、大きな格差が見られます。相関曲線は人口が小規模のところでより傾斜が急になっており、人口1万~2万の辺りで屈曲点が見られます。
  • 法令等により設置が義務付けられている専門職員については一定配置されているものの、任意設置の専門職員については、市町村によって配置状況にばらつきが見られます。
  • 小規模町村では、管理部門が占めるウェイトが大きく事業部門への配分が相対的に低くなる傾向があり、一部の例外を除き、小規模町村ほど、専門的な組織体制や専門職員の配置が難しい状況が見られます。

5 市町村の行財政運営を取り巻く社会潮流と地域別の特徴

(1)少子高齢化がもたらす影響

北中部地域の団体では、少子高齢化が相当進行しています。一方、南部地域の人口急増団体においては、今後25年間で高齢者数が2~5倍に急増すると見込まれ、今後、要介護高齢者の増大とそれに伴う行政需要の増大が予想されます。

  • 北中部地域の団体では、1小学校あたりの児童数が100人を割り込む団体もあるなど、少子化が相当進行しています。
  • 人口規模と高齢化率との間には負の相関が見られますが、特に北中部では、既に高齢化比率が30%を超える団体もあり、いずれも人口8千未満の中山間地域の過疎・小規模町村となっています。
  • 平成37年における高齢化率は、全ての団体で20%を超えることが予想されます。現在、高齢化率が比較的低い南部都市地域においても、今後、高齢化が急速に進行し、平成37年までに2~5倍という急速な高齢者数の増加が予想されます。要介護高齢者は高齢者の一定割合(12%前後)を占めることが予想されることから、今後も要介護高齢者の増大とそれに伴う行政需要の増大が見込まれます。
  • 人口1人当たり地方税や国保繰出金と高齢化率の相関をみると、高齢化率の高い団体ほど税収が低く、国保繰出金が多くなる傾向が見受けられます。
  • 生産年齢人口比率は、昭和45年当時は各団体とも概ね60~70%の幅に収まっていましたが、平成7年時点では55~75%の幅に拡散し、特に低いのは北中部や小規模過疎町村、特に高いのは南部や都市部という二極化傾向がより顕著になっています。

(2)過疎化がもたらす影響

北・中部地域では、「限界集落(高齢化率50%超)」や「準限界集落(55歳以上人口比率50%超)」が多くみられ、過疎化により将来的に地域の維持が困難になることや、高齢化に伴う財政への影響、地域の活力の低下などが懸念されます。

北・中部地域では、「限界集落(高齢化率50%超)」「準限界集落(55歳以上人口比率50%超)」が多くみられ、将来的に地域の維持が困難となることが懸念されます。

また、人口千人あたりの消防団員数(非常備)は、都市部で低く、町村部、特に小規模町村では高い傾向がありますが、昭和55年と比べると、ほとんどの団体で減少しています。

さらに、生産年齢人口も減少する傾向にあり、今後、税収の減少や高齢化に伴う行財政需要の増大を通じた財政への影響など、地域の活力の低下が懸念されます。

(3)日常生活圏域の広域化の影響

通勤・通学、医療、買物等、日常生活における広範な移動が定着し、市町村域を超える人口流動が増大する傾向が窺われます。

  • 昼間人口比率について、昭和60年と平成7年を比較して見ると、全体的に流入超過であった団体はより流入が多く、流出超過であった団体はより流出が多くなり、市町村域を超える人口流動が増大する傾向が窺われます。

このように「市町村行財政研究調査会報告書」では、市町村とりわけ小規模市町村が、行政水準や財政力、行政運営の効率性などの点において総じて厳しい状況にあるとともに、市町村間の格差が拡大する傾向にあることが、一例ではありますが具体的な数値データを用いて示されています。また、今後は、少子高齢化や過疎化に伴う行財政需要の増大や、日常生活圏の拡大に対応した広域的な行政の実現が、解決を迫られる大きな課題となることが指摘されています。

これらの課題に迅速かつ的確に対応するためには、行財政基盤の充実や広域的な行政体制の整備が不可欠であり、合併や事務の共同化等について、真剣に検討するべき時期が来ていると考えます。

また、これらの課題はいずれも住民生活に直結するものであり、地方自治の本旨を踏まえれば、市町村や議会、住民の方々による幅広い議論が行われることが何よりも重要であると考えます。

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