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更新日:2022年10月20日

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ジアルジア症

疫学

消化管寄生虫鞭毛虫のジアルジア(Giardia lamblia.)による原虫感染症です。世界中 に広く分布しますが、特に熱帯や亜熱帯地域(南アジア、東南アジア、北アフリカ、カリブ 海、南アメリカ)で衛生環境が粗悪な地域に多発しています。

わが国でも戦後に多くの患者が発生しました。衛生状態の改善にともない発生数も低下し ましたが、年間50例以上の患者がみられています。このうち6割以上が海外での感染と推 定されます。発展途上国からの帰国者の下痢症例で検出率が高く、旅行者下痢症の一因でも あります。また、海外旅行での感染例では、細菌性赤痢や下痢原性大腸菌、赤痢アメーバな どとの混合感染例が少なくありません。

京都府においてはこの11年間(2011年~2021年)で14例の報告がありました。全国で は680例であるが減少傾向を示しています。近畿地方2府4県の合計は144例、東京都は 11年間と通じて最多で11年間で173例、大阪は11年間で54例が報告されています(表 1、図1)。

表1

全国 近畿 京都府 東京都
2011 65 14 2 13
2012 72 19 1 16
2013 82 20 1 22
2014 68 15 2 15
2015 81 17 0 20
2016 71 18 5 16
2017 60 9 1 24
2018 68 10 0 19
2019 53 10 2 12
2020 28 8 0 8
2021 32 4 0 8
合計 680 144 14 173

 

ジアルジア図2

 

原因と感染経路

糞便中に排出された原虫嚢子により食物や水が汚染され、経口感染を起こします。氷や 生野菜などを介した食品媒介感染のほか、汚染された水道による水系感染や、性的接触に よる感染もあります。嚢子は湿った状態で抵抗力が強く、通常の塩素消毒では死滅せず、 60℃・数分以上の加熱で死滅します。流行地では生水や生野菜などに注意しなければいけ ません。飲料水を介した大規模な集団感染と、ヒトとヒトの接触や食品を介した小規模集 団感染があります。

症状

潜伏期 は1~3週間で、主な臨床症状は下痢、全身衰弱、体重減少、腹痛、悪心や脂肪 便です。下痢はすべての症例でみられ、非血性で水様または泥状便です。排便回数は1日 数回~20回以上と様々です。発熱は多くの場合みられません。

予防

衛生環境の劣悪な地域では、充分に加熱調理された食品以外は摂取を避け、飲料水にも 充分注意してください。アルコールや消毒剤では死滅せず、熱湯消毒が有効です。

治療と予後

治療にはメトロニダゾールを処方します。下痢は1-2週間程度で自然治癒しますが、一 部は慢性感染に移行します。慢性感染では、脂肪便、乳糖不耐症、体重減少の原因となり ます。

感染症法における取り扱い(2012年7月更新)

全数報告対象(5類感染症)であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け 出なければならない。