更新日:2025年4月23日

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麻しん

麻しん(はしか)とは

麻しんは麻しんウイルスによって生じる急性の全身感染症であり、空気感染 (飛沫核感染)、飛沫感染、あるいは接触感染することで、非常に強いヒトから ヒトへの感染力を持ちます。免疫を持っていない人がこのウイルスに曝露され るとほぼすべての人が感染すると考えられています。ワクチンによって予防が 可能で、1歳児と小学校入学前1年間の小児を対象に計2回の定期接種が行わ れています。

臨床経過

潜伏期間は10~12日間(最大21日間)で、発熱や咳、鼻水、目の充血と いった風邪のような症状が現れます。この時期に頬の内側に小さな白い斑点(コ プリック斑)が出現することがあります。発熱は2~4日続き、この期間を前駆 期(カタル期)と呼びます。この期間の感染力が最も高いと言われています。そ の後いったん熱が下がり、再び39℃以上の高熱と発疹が出現します(発疹期)。 発疹出現後、発熱は3~4日間で解熱し、全身状態や元気さが回復します(回復 期)。合併症が無ければ症状は7~10日で回復します。

一方で肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎が発 症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人 と言われています。その他の合併症として、10 万人に 1人程度と頻度は高く ないものの、麻しんウイルスに感染後、特に学童期に亜急性硬化性全脳炎(SSPE) と呼ばれる中枢神経疾患を発症することもあります。

また、妊娠中に麻しんにかかると流産や早産を起こす可能性があります。

治療

麻しんウイルスに対する特別な治療法は無く対症療法が行われます。ワクチ ン接種歴が不明な場合や未接種の場合は、早期(接触後72時間以内)に麻しん ワクチンを接種することで発症予防が期待されます。また、生後6か月未満の 乳児や免疫のない妊婦などには、医師の判断で免疫グロブリンの投与が行われ ることもあります。

発生状況

麻しんは、平成19年ごろに10~20代を中心に国内で大きな流行がみられ ましたが、追加のワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以 降10~20代の患者数は激減しました。

平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻 しんの排除状態にあることが認定され、現在は海外からの輸入例と、輸入例から の感染事例のみを認める状況となっています。 京都府でも散発的に発生が報告されています。

海外での流行状況

厚生労働省検疫所FORTHは2025年3月現在、麻しんは“世界中で流行 している感染症”として、海外渡航者には渡航前に麻しんの予防接種歴の確認と、 接種歴がない場合は接種の検討を呼び掛けています。なお日本国内における麻 しん患者の推定感染地域(2025年第1週~第10週)は多い順にベトナム、 タイ、パキスタン、フィリピン、イタリア/フランスと報告されています。アジ アではインドやアフガニスタン、インドネシアも麻しん報告数の多い上位10国 に挙がっています(FORTH, 2025年3月)。またアメリカ疾病予防管理セン ター(CDC)は 2025年4月4日、アメリカ国内の年間感染者数がすでに607 人に上っていると警鐘を鳴らしています(2024年は年間合計285件)。

最新の情報

最新の情報については下記ページをご確認ください。

麻しん(はしか)は世界で流行している感染症です | FORTH |(外部リンク)

Measles Cases and Outbreaks | Measles (Rubeola) | CDC(外部リンク)

京都府の麻しんワクチンの接種状況(2025年3月現在)

麻しんウイルスは、「基本再生産数(R0; 免疫を持たない集団の中で, 1人の 感染者が平均して何名の二次感染者を発生させるかを推定した値)」がインフル エンザ(R0 1-3)等に比べて高く(R0 12-18)、 世界保健機関(WHO)はア ウトブレイクを防ぐうえで集団における麻しんワクチンの 2回接種率を95% 以上に保つ必要があるとしています。厚生労働省の発表では京都府の2023年 度の麻しんワクチン2回接種率は91.1%でこの基準を下回っています。全2 回のワクチン接種が未完了の人はこの機に接種完了をご検討ください。

WHO Immunization Agenda 2030: A Global Strategy to Leave No One Behind P.21(外部リンク)

麻しん風しん予防接種の実施状況 | 厚生労働省(外部リンク)

麻しん患者と接触があった(疑いがある)ときは

最終接触後3週間(21日間)の間に症状(高熱・発疹・咳・鼻水・目の充血 等)が現れた場合は、必ず事前に医療機関へ電話で連絡し、麻しん(はしか)の 疑いがあることを伝え、医療機関の指示に従って受診してください。なお、受診 の際は公共交通機関の利用を控えてください。

なお、麻しんウイルスの空気中での生存期間は 2 時間以下とされています (Remington PL, et al. JAMA. 1985)。それ以降に麻しん患者が利用した施 設や公共交通機関を利用しても感染の心配はありません。