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更新日:2025年9月10日

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エムポックス(旧名:サル痘)

エムポックスとは

令和5年5月26日に「サル痘」から「エムポックス」に感染症法上の名称が変更されました。

エムポックスはオルソポックスウイルス属のモンキーポックスウイルス(別名:エムポックスウイルス)(MPXV)による感染症で、同じオルソポックスウイルス属には天然痘(痘そう)ウイルスなども含まれます。国内では感染症法上の4類感染症に指定されています。自然宿主は現時点では不明です。MPXVにはクレードⅠ(Ⅰa,Ⅰb)とⅡ(Ⅱa,Ⅱb)との二つの系統が存在し、有痛性の発疹や粘膜病変などを特徴とする急性発疹性疾患です。多くは2−4週間で自然に回復しますが、小児や免疫不全がある場合、重症化する可能性があり、死亡例も報告されています。

感染動物や感染者との密な接触や寝具の共有等により感染します。母体が感染した場合、胎児や新生児にも感染する恐れがあります。

発生状況

エムポックスは1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告されて以降、アフリカ東~中央部(クレードⅠ)および西部(クレードⅡ)の人々の間で感染がみられ、当時の患者は15歳以下の子どもの割合が多くみられていました。

2022年5月以降、クレードⅡbが世界的に流行し、WHOは同年7月に国際的な公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言しました。2023年5月に宣言は解除されましたが、2023年3月以降東アジア、東南アジアなどからの報告が増加し、国内でも、2022年7月に1例目の患者が確認され、京都府でも2024年7月に初めて患者の届出がありました。

それらとは別に、2023年秋以降、コンゴ民主共和国でクレードⅠa及びⅠbが流行しました。クレードⅠbは感染者との密着により感染し、感染者は主に成人で、主に性交渉を介して他の集団へと拡大しています。2024年7月にコンゴ民主共和国に隣接した国々への感染拡大を受け、8月WHOは再度PHEICを宣言しましたが、2025年9月に終了宣言が行われました。国内では、2025年9月5日時点でクレードⅠの発生報告はありません。

エムポックスに関する関係省庁対策会議第3回資料(外部リンク)

臨床経過

潜伏期間は5~21日(通常6~13日)で、発熱・頭痛・リンパ節腫脹などの症状が0-5日程度持続し、発熱の1-3日後に発疹が出現します。多くの場合2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがあります。

致命率は0-11%で、2022年以前の報告では致命率はクレードⅠでクレードⅡよりも高いと報告されています。ただ、2022年以降の流行では上記と異なる臨床経過も報告されていますので、適宜国立感染症研究所などのホームページもご参照ください(※)。

治療薬

治療の基本は、補液などの支持療法と疼痛コントロールです。また、MPXVに対する特異的治療薬としてテコビリマットが2024年12月に国内で承認されました。テコビリマットはウイルスがヒトの細胞内で複製されるのを防ぐ作用を持った薬剤です。

感染対策

発熱、皮疹等がありエムポックスが疑われる患者には、標準予防策(マスク着用・咳エチケット・手指衛生)を基本とし、患者が使用したリネン類や衣類は直接的な接触を避けます。MPXVの主な感染経路は接触感染や飛沫感染です。しかし水痘、麻疹等の空気感染を起こす感染症が鑑別診断に入ること、MPXVに関する知見は限定的であること、入院中の免疫不全者における重症化リスク等を考慮し、現時点では、医療機関内では空気予防策の実施が推奨されます。

天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があると言われています(FinePE,1988)。

詳しい情報

2024年7月にクレードⅠbが同定されて以降、現在も新たな知見が随時発表されています。最新の知見については、国立感染症研究所等の関連文章をご参照ください。

国立感染症研究所エムポックス(外部リンク)