更新日:2022年11月17日

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オウム病

オウム病とは

オウム病は(Chlamydia psittaci )による人獣共通感染症です。

感染様式としては病鳥の排泄物から の吸入が主ですが、口移しの給餌や噛ま れて感染することもあります。 飼育しているトリから家族が同時に感染する家 族内発生も認められます。オウム病の潜伏期間は1〜2週間で、急激な高熱と咳 嗽で発症し、軽症の気道感染から、肺炎や髄膜炎までの多様な病態を含みます。 市中肺炎における頻度は高くはないものの、中等症までの非定型肺炎と原因菌 不明の重症肺炎においては、鑑別に入れるべきです。かなりの症例が確定診断を されず、異型肺炎として治療されていると思われます。

ドバトの保菌率は20%程度と高く、ヒトへの感染源となりえます。本邦にお いて、オウム病の感染源となった 鳥類の追跡調査では、60%がオウム・インコ 類であり、そのうち約3分の1はセキセイインコです。オウム病は主として30〜60歳の成人に発症することが多く、小児の感染は比較的少ないとされています。

臨床症状

潜伏期は1〜2週間で、高熱で突然発症する例が多く、頭痛、全身倦怠感、筋 肉痛、関節痛などがみられます。徐脈や肝障害を示すことが多く、乾性あるいは 湿性咳嗽がみられ、重症では、血痰、チアノーゼを認めます。初期治療が不適切 な場合、重症肺炎、さらに髄膜炎、多臓器障害、ショック症状を呈し致死的とな ることもあります。

胸部病理学所見は、胸部X線所見もマイコプラズマ肺炎に類似し、オウム病 に特有な所見はないとされています。検査所見では白血球数は正常で、CRP や 赤沈は亢進します。中等度の肝機能異常をきたすことが多いです。

診断

オウム病の診断には、トリとの接触歴についての問診が重要です。飼育鳥が 死んだ場合は特に疑いが強くなります。ペットショップに行ったとか、トリと の接触歴がある場合が多い。 病原診断には、患者の気道や病鳥からのC. psittaci 検出、血清特異抗体の測 定が行なわれます。患者咽頭材料やトリからは分離、PCR で検出可能です が、分離は細胞培養が必要で、特定の施設でのみ行われます。

臨床においては、血清診断が主体です。従来のオウム病の血清診断に用いら れた補体結合反応は、他のクラミジア種感染でも陽性となり、種の特定ができ るmicro-IF 法などが望ましいです。ペア血清で4 倍以上の上昇を認めた場合 に確定診断とします。

治療と予防

テトラサイクリン系薬が第一選択薬で、マクロライド系、ニューキノロン 系薬がこれに次ぎます。血清診断の結果はすぐには出ていないので、明らかに トリとの接触歴がある場合は、直ちに治療を開始します。ペニシリン系薬やセ フェム系薬などのβ-ラクタム薬、アミノ配糖体は効果はありません。

中等症以上では、入院治療を行います。ミノサイクリン(100mg)1 日2 回 点滴静注を10〜14 日行い、軽快後は内服に切り替えも可能です。

軽症では、ミノサイクリン(100mg )2錠 分2朝夕 または、クラリスロ マイシン(200mg )2錠 分2朝夕を投与します。幼小児や妊婦では、テトラ サイクリン系薬の歯牙や骨への沈着を考慮して、エリスロマイシンの点滴静注 やニューマクロライド薬の内服などを行います。投与期間については、約2週 間の投与が望ましいです。

全身症状によっては補助療法を行います。肺炎が両側に広がり低酸素血症を 来たした場合には、酸素投与や呼吸管理を行い、またステロイドを使用しま す。DIC への対応が必要になることもあります。

予防としては、トリの飼育者にオウム病の知識の啓発が必要である。過度な 濃厚接触を避け、鳥を飼うときはケージ内の羽や糞をこまめに掃除する、鳥の 世話をした後は、手洗い、うがいをするなど心がけるようにしましょう。健康 な鳥でも保菌している場合が有り、体調を崩すと糞便や唾液中に菌を排出し感 染源となる場合があるので、鳥の健康管理に注意しましょう。

トリの感染が疑われる場合には、獣医師の診察を受け、テトラサイクリン入 りの餌を1週間程度与えることもあります。

感染症法における取り扱い(2012年7月更新)

全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所 に届け出なければならない。