更新日:2025年1月21日

ここから本文です。

梅毒

梅毒とは

口や性器などの粘膜や皮膚から性的な接触などによってうつる感染症で梅毒 トレポネーマという細菌の感染が原因です。感染症法で第5類感染症に指定さ れています。バラ疹と呼ばれる赤い発疹が出ることがありますが、症状は様々 です。症状が自然軽快しても病気が進行していることがあり、発見が遅れるこ ともあります。適切な治療を受けなければ長期間の経過で脳や心臓に重大な合 併症を起こすことがあります。一度完治しても繰り返し感染する可能性があり 予防が重要です。

発生状況

梅毒は全国的にも京都府内でも増加傾向であり、府内では2014年の年間 13例に対し近年は100件以上の届出があります。2024年は現在の集計方 法になった1999年以降最多の156例(速報値)の報告がありました。全国 でも2022年以降は年間10,000例を超える報告が続いており、2023年に は14,906例が報告されています。また、かつては男性患者の割合が多かった のですが、近年は女性(特に20代)の患者が急増しています。

梅毒推移

速報値のため、実際の報告数と違う場合があります。

妊婦の梅毒と先天性梅毒

妊娠中に梅毒に感染すると流産や死産のリスクが高まります。また無事出生 に至っても、こどもが神経や骨などに異常をきたす先天性梅毒を発症すること があります。梅毒報告数の増加に伴い、妊婦の梅毒、そして先天性梅毒の報告 数も増加(2000年代は全国で概ね年間10例未満に対し、2023年は37 例)しており、注意が必要です。これらを防ぐためにも適切な感染予防と早期 の診断、そして適切な治療が不可欠です。治療で使用されるペニシリンは、胎 児を含むこどもにも安全性の高い薬剤です。 臨床経過 適切な治療を行わなかった場合、病期によって以下のような症状が現れます

1.期顕症梅毒(感染後数週間)

口の中、肛門、性器等に痛みを伴わないしこりや潰瘍ができることがありま す。また、股の付け根の部分のリンパ節が腫れることもあります。治療をしな くても症状は自然に軽快しますが、体内の病原体は残存しており、病状が進行 します(潜伏梅毒(後述))

2.期顕症梅毒(感染後数か月)

バラ疹とよばれる淡い赤い色の発疹が、手のひら、足の裏、体幹部などに出 ることがあります。その他にも肝臓、腎臓など全身の臓器に様々な症状を呈す ることがあります。1.期と同様これらも自然に軽快しますが、その後も病状は 進行します。

晩期顕性梅毒(感染後数年)

感染後数年を経過すると、ゴムのような腫瘤(ゴム腫)が皮膚や筋肉、骨な どに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また大動脈瘤(だ いどうみゃくりゅう)などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下 などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられる こともあります。

病期によらない分類

先天性梅毒、神経梅毒、眼梅毒、耳梅毒などはどの病期でも起こる可能性が あります。

潜伏梅毒

自他覚症状のない活動性梅毒。感染後1年以内の早期はこの状態でも性的接 触による感染や妊娠期の母子感染は起こる可能性があります。感染後1年以降 の後期になるとこの状態での性的接触での感染性や母子感染はほぼないとされ ています。

治療

梅毒にはペニシリン系などの抗菌薬が有効です。2021年には、梅毒の世界 的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤の国内での製造 販売が承認されました(神経梅毒を除く)。早期であれば1回の注射で治療が 完了しますが、治療開始後24時間以内にJarish-Herxheimer反応と呼ばれ る発熱、発疹などの症状が起こりうるため注意が必要です。内服治療の期間は 病期などを考慮して医師が判断します。医師の許可を得るまでは、症状が良く なっても、自己判断で内服を中断しないようにしましょう。また、梅毒は症状 が消失しても感染力が残っているため、医師が安全と判断するまでは、性交渉 等の感染拡大につながる行為は控えましょう。

また、感染の可能性があるパートナー等も検査を受け、必要に応じて治療を 受けることが重要です。

予防

皮膚や粘膜に異常がある場合は性交渉を避け、早めに医療機関を受診しまし ょう。また同様の症状がある人との性交渉は避けましょう。潜伏梅毒の場合は 症状だけでは分からないため、性交渉の際はコンドームを適切に使用しましょ う。ただし、コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染がおこる可能性が あるため、コンドームを使用しても、100%予防できるとは限りません。不安 を感じた場合は早めに検査を受けましょう。

また不特定多数の人との性的接触は感染リスクを高めます。過去に感染して 治癒していても再び感染します。リスクが高い場合は早めに検査を受けましょ う。京都府内の保健所では、梅毒を含む性感染症の検査・相談を匿名・無料で 受け付けています。

さらに先天性梅毒を予防するために妊婦健診を確実に受けましょう。妊娠初 期に感染していなくても、妊娠中に少しでも心当たりや疑わしい症状があった 場合は、早めに検査を受けましょう。

関連情報

梅毒の報告数が増加しています!(2024年6月26日)