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夏になると子どもを中心に患者数が増える感染症が、「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」で、"子どもの三大夏風邪"とも言われますが、例年6月から8月にかけてそれぞれの流行がピークを迎えます。
この内、「手足口病」には、以下の特徴があります。
※ 新型コロナウイルス感染症流行開始後は流行状況に変化が認められ、2020年は報告数が例年を大きく下回り、2021年から2023年は例年とは異なる時期の9月から10月にかけて定点当たり報告数がピークをむかえました。
手足口病とは、手のひらや足の裏、口の中などに小さな発疹ができるウイルス感染症です。原因はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスです。2歳以下が半数を占めますが、小学生でも流行的発生がみられることがあります。
潜伏期間は、3〜6日で、臨床症状は、口の中の粘膜や手のひら、足の裏、足の甲などに水疱性の発疹が現れ、1〜3日間発熱する場合もあります。水疱は、かさぶたにならずに治る場合が多く、1週間程度で消失します。また、1〜2ヶ月後に手足の爪がはがれることがありますが、すぐに新しい爪が生えてきます。口内の水疱がつぶれた後にできる口内炎がひどく、食事や水分の摂取が出来ないと、脱水症状を引き起こす可能性もあります。基本的に予後は良好な疾患ですが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、更に稀ではありますが急性脳炎を生ずることもあります。なかでもエンテロウイルス71による場合は中枢神経系合併症の発生率が他のウイルスより高いことが知られており、注意が必要です。
手足口病は、飛沫感染と接触感染が主な感染経路です。また、回復後も便から2〜4週間にわたりウイルスが排泄されるので、おむつなどの交換後に汚染された手指を介して感染が広がります。
日本国内で使用できる有効なワクチンはありません。一般的な感染対策は、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理することです。特に、保育施設などの乳幼児の集団生活では、通常の手洗いに加え、おむつを交換時には、排泄物を適切に処理し、しっかりと手洗いをしてください。手洗いは流水と石けんで十分に行ってください。また、タオルの共用は避けて下さい。また、感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もあります。日頃からしっかりとした手洗いを心がけてください。
手足口病に特別な治療方法はありません。基本的には症状が軽いので、経過観察を含め、症状に応じた治療となります。脱水症状にならないよう水分を少量頻回に摂取するようにして下さい。まれに髄膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症などが起こる場合があるので、高熱、2日以上続く発熱、嘔吐、頭痛、意識低下、呼吸困難、脱水などの症状がみられた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
受診を迷った場合や夜間・休日の場合は、「こどもの救急(外部リンク)」などのWebサイトを参照したり、 #8000(こども医療電話相談)にご相談ください。