介護保険制度創設のねらい
介護問題は高齢社会の最大の課題
今後、高齢化の進展に伴って、寝たきりや痴呆の高齢者が急速に増えることが見込まれています。
また、介護が必要な期間が長期化し、介護する家族の高齢化などが進んでおり、家族による介護では十分な対応が困難となってきています。こうした中、今日、介護問題は、国民の老後生活最大の不安要因となっています。
現行制度は医療と福祉の縦割り
高齢者介護に関する現行の制度は、医療と福祉の縦割りの制度となっており、サービスが自由に選択できない、サービス利用時の負担に不公平が生じている、介護を理由とする長期入院(いわゆる社会的入院)等医療サービスが不適切に利用されている等の問題が指摘されています。
老人福祉
<対象となるサービス>
- 特別養護老人ホーム
- ホームヘルプサービス、デイサービス等
<問題点>
- 市町村がサービスの種類、提供機関を決めるため、利用者がサービスの選択をすることができない
- 所得調査が必要なため、利用に当たって心理的抵抗感が伴う
- 市町村が直接あるいは委託により提供するサービスが基本であるため、コストに競争原理が働かず、サービス内容が画一的となりがち
- 本人と扶養義務者の収入に応じた利用者負担(応能負担)となるため、中高所得層(サラリーマンOB層)にとって重い負担
- サラリーマン世帯(年収800万円)老親が平均的な老齢厚生年金受給者の場合の特別養護老人ホームの老親本人の負担は、14.9万円/月、扶養義務者の負担は、4.1万円/月、合計19万円/月
老人医療
<対象となるサービス>
- 老人保健施設、療養型病床群、一般病院等
- 訪問看護、デイケア等
<問題点>
- 福祉サービスの基盤整備が不十分である一方、利用者負担が中高所得層にとって入院の方が低いことなどから、介護を理由とする一般病院への長期入院の問題が発生(特別養護老人ホームや老人保健施設に比べてコストが高く、医療費のムダ)
- 治療を目的とする病院では、スタッフや生活環境の面で、介護を要する者が長期に療養する場としての体制が不十分(居室面積が狭い、食堂や風呂がない)
急速に増加する介護費用への対応
こうした不安や問題の解消を図り、今後、急速に増加することが見込まれる介護費用を将来にわたって国民全体で公平に賄う仕組みの確立が求められています。
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介護保険制度の創設
介護保険制度は、老人福祉と老人医療に分かれている高齢者の介護に関する制度を再編成し、利用しやすく公平で効率的な社会的支援システムを構築するものです。
- 利用者本位の制度として、自らの選択に基づいたサービス利用が可能となります。
- 高齢者介護に関する福祉サービスと医療サービスの総合的・一体的な提供が可能となります。
- 公的機関のほか、多様な民間事業者の参入促進が図られ、効率的て良質なサービス提供が期待できます。
- 社会的入院の是正などにより医療費のムダが解消されます。