鉱物

中生代白亜紀

国内でも有数のタングステン・錫鉱床である。大谷鉱山とは産出鉱物も異なり、鉄重石が多く産する。

付近は丹波帯Ｉ型地層群に属する東西走向の粘板岩、砂岩、およびチャートからなる。鉱山付近ではこれらの堆積岩はホルンフェルス化しており、地下に花崗岩の潜在が推定される。東西性と南北性の二つの鉱脈群が知られている。南北性の鉱脈が卓越し、東西性の鉱脈は小規模である。

鉱脈の中で最大規模の通洞鉱床は走向方向に最大約600m、傾斜方向に最大約450mで、脈幅の平均は15～40cm、最大80cmであった。鉱脈を切る多くの東西性の断層が発達し、鉱床の富鉱部は断層付近に生じる傾向がある。鉱脈は粘板岩中で優勢である。鉱脈は石英を主体とし、これに鉄重石および灰重石と若干の硫化鉱物をともなう。しばしば長石、白雲母、錫石を含み、さらに少量の電気石、燐灰石、方解石などをともなう。硫化鉱物では黄銅鉱、黄鉄鉱、硫砒鉄鉱が主であるが、輝水鉛鉱、閃亜鉛鉱、磁硫鉄鉱、方鉛鉱なども存在する。鉄重石はマンガンに富み、灰重石とともにタングステン鉱石の主体をなすが、一般にC軸方向に伸び、Ａ軸方向に薄い形でＢ軸に直角な方向に完全なへき開が見られる。鉄重石は普通2～5cmの長さであるがときには20cmに達する巨晶も見られる。

灰重石は白色、淡黄色、黄色、褐色で、一般に球状または不規則塊状であるが、ときに結晶を示すことがある。鉱脈内の鉱物の配列では鉱物の生成過程を明瞭に示す例がよく知られている。鉄重石は電気石を含む母岩から垂直に結晶が伸びていることが多い。（原口、菊池 1952、瀧本、中村 1973）

土地の再開発によって地表付近の鉱脈が消失するおそれがある。

近傍には和知、白土といった小規模なタングステン鉱床が分布する。