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京都府レッドデータブック2015

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地質

うじたわらのじてっこう

宇治田原の磁鉄鉱

京都府カテゴリー

消滅危惧

2002年版 消滅危惧 2002年版を参照する
綴喜郡宇治田原町

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分類

鉱物

細分

酸化鉱物

時代区分

中生代白亜紀

地域

綴喜郡宇治田原町

選定理由

弱変成作用を受けた緑色岩中に磁鉄鉱結晶が濃集している。このような産状は府内では本地域以外に見られない。

分布

国内では本地域に類似した磁鉄鉱の産状として長崎県西彼杵郡大串の結晶片岩中の数mm~1cmに及ぶ結晶が有名である。磁鉄鉱は通常、ひん岩岩脈、あるいは花崗岩体周辺に形成された接触鉱床に産する。山陰地方の花崗岩が風化してできた砂鉄は古くから知られている。府内では磁鉄鉱のまとまった産地は知られていないが、左京区花背別所の花崗岩体付近では少量ながら砂鉄が分布する(貴治ほか 2012)。

特徴(特異性)

丹波帯の泥質岩が広範に分布する地域の北西~南東走向の緑色岩中に磁鉄鉱が産する。これらの堆積岩の分布は領家変成帯に近く、弱い変成作用を受けている。泥質岩にはスレートへき開が発達し、緑色岩には片理が発達している。厚さ約15mの緑色岩層の中央部において幅約6mにわたって磁鉄鉱が濃集している。その内部では粒径の大きいものが、みかけ上、地層の下位の部分に見られる。緑色岩は変質したハイアロクラスタイトで片理面はしばしば酸化鉄によって汚染されている。緑色岩層中部より得た試料では、片理面1cm²当たり、0.5mm程度の大きさの磁鉄鉱結晶が平均15個ほど含まれている。顕微鏡下では磁鉄鉱の周囲に羽状石英が発達したプレッシャーシャドウが観察される。磁鉄鉱の結晶は八面体の単晶が最も多く、一部に回転双晶が少量見いだされる。化学組成ではTi、Ca、Mg、Mnなどの含有は検出されず、ほぼ純粋な酸化鉄である(貴治、丹波地帯研究グループ 1980)。

現状

宇治田原町犬打川沿いの道路から南に向かって400mほど小谷をさかのぼった地点で露頭が認められたが、最近の暴風雨により山林が荒れ、露頭は土石や倒木により埋没された状態にある。転石の分布によって概ね露頭の位置がわかる。

保存に対する脅威

本地域は山中にあるため、人為的な露頭消失のおそれはないが、林道の開設や送電線の建設によって露頭の一部が破壊される可能性はある。

必要な保存対策

緑色岩の分布状態を詳細に把握し、他地点の緑色岩について、磁鉄鉱結晶の有無を確かめる必要がある。

地質文献一覧

執筆者 貴治康夫

宇治田原町の磁鉄鉱

宇治田原町の磁鉄鉱。走査型電子顕微鏡写真(大きさ約1mm)

細粒の磁鉄鉱結晶を含む緑色岩(益富地学会館標本)

細粒の磁鉄鉱結晶を含む緑色岩(益富地学会館標本)

薄片写真で不透明菱形の磁鉄鉱のまわりにプレッシャーシャドウができている

薄片写真で不透明菱形の磁鉄鉱のまわりにプレッシャーシャドウができている

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