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更新日:2012年6月7日

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国民的理解のための原発政策への再提言

 

内閣総理大臣 野田佳彦 様
経済産業大臣 枝野幸男 様
内閣府特命担当大臣(原子力行政) 細野豪志 様



国民的理解のための原発政策への再提言

 

京都府知事 山田 啓二
滋賀県知事 嘉田 由紀子

平成24年6月6日


 私どもは、いったん原発事故が起きれば、立地県と変わりない被害を受ける恐れのある「被害地元」として4月17日に野田内閣総理大臣と枝野経済産業大臣に対し、「国民的理解のための原発政策への提言」(以下「7提言」という)を提出しました。7提言については、政府から一定の説明をいただいたところであり、また、関西広域連合においても細野大臣から見解をいただいたところであります。

 特に5月30日の関西広域連合の会合で、細野大臣が、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準は、原子力規制庁等の規制機関が発足していない中での暫定的な判断基準であり、政府の安全判断についても暫定的なものである」と明言されたことは、大変重要な発言と受け止めています。
この発言を受け、関西広域連合は、改めて福井県がこの間電力の安定供給に対し大変なご尽力をいただいてきたことに対し、心から敬意と感謝を表明するとともに、この夏の電力需給が「計画停電」をも必要とする危機的なものであり、雇用・経済等に与える影響が大きいことを踏まえ、大飯原発の再稼動については、あくまでも暫定的・限定的なものとして判断するよう国に求めたところであります。
 私どもはこの見解を踏まえ、「被害地元」としての立場から再度7提言に基づき国に対し提言を行うものであります。 

 

1 中立性の確立について


  政府は、東京電力福島第一原子力発電所事故に対する知見を踏まえた新しい安全基準については、原子力安全委員会に対する信頼が落ちているとして、原子力規制庁の発足を待つとしています。
 そのため、4月6日に示された「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」については、すでに原子力安全委員会に報告した事項ばかりであるとして、同委員会の意見を求めず、専門家による中立的な見解は示されていません。
 原子力規制庁については、5月29日に国会での法案審議が開始されましたが、中立性を確保するためには、今国会での速やかな成立と原子力規制庁の早期発足が今何よりも求められているところであります。
 他方、電力需給状況の検証については、第三者委員会を速やかに設置され、今夏の見通しについて検証されたところであり、このことを評価するとともに、一過性に終わることなく今後とも検証を続けることを期待します。
 なお、安全体制づくりに向けた、地元自治体と地元住民参加の仕組みについては、現在審議されている原子力規制組織や今後の防災計画の中で、UPZ30km圏内に含まれる自治体の法的な位置付けが必要であり、検討を求めたいと思います。 

2 透明性の確保について 

 
  東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会及び今夏の電力需給見通しを検証する需給検証委員会については、議事録、検討資料が公開されるなど一定の対応が見られますが、判断基準などを議論された「原子力発電所に係る四大臣会合」については非公開で開催され、また、大飯原発についてのSPEEDI資料は再三の求めにもかかわらず、未だ提供されていないのは大変遺憾であります。大飯原発SPEEDIデータの速やかな提供を強く求めるものであります。

3   福島原発事故を踏まえた安全性の実現について

 
  「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」の基準1・基準2については、応急対策と机上のストレステスト(一次評価)で構成されたものであり、恒久措置による安全性は担保されていません。加えて、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の最終報告が未だ示されていない中、地震の影響など事故の知見を踏まえた新たな規制基準は作成されていない状況であります。
 福島第一原発事故の知見を踏まえた安全基準が策定されていない中では、専門的な蓄積がある福井県の原子力安全専門委員会の判断を尊重するとともに、あくまでも、現在の大飯3・4号機の再稼働についての政府の判断基準や安全基準は暫定的であることを踏まえ、再稼働の時限は電力逼迫期に限定するのが筋であります。

4    緊急性の証明について


  需給検証委員会において、今夏の電力需給について、需要のピークカット対策や電力確保対策の積み上げも含めて検証された結果、関西電力管内では14.9%の電力不足となることが示されたところであり、客観的データ等による検証がなされたものと考えます。
 しかし、大飯3・4号機の再稼動後においても、需給構造の不安定さは免れないと言われており、節電に向けての需要のピークカット対策の強化や電力確保対策の積み上げを徹底して行うこととともに、ここ数年の緊急事態に対応するため既存施設の活用など、電力確保対策を早急に行うべきであります。

5    中長期的な見通しの提示について


  中長期的なエネルギー政策については、今夏を目処に新しい戦略と計画を取りまとめるとされており、未だ提示されていません。
 私どもは、旧型の原子力発電所や老朽化した原子力発電所、地震・津波による危険性が高い地域に立地する原子力発電所の安全性について大きな不安を抱いておりますが、現時点での国の回答では、「すべての原子炉について適法に安全が確認されており、(廃炉計画は)提示できない」との回答に止まっています。
 「原子炉等規制法」では原発の寿命は規定されていませんが、脱原発依存に向けて「40年廃炉方針」が例外なく実行され、政府の方針とされる「脱原発依存」社会へ向けて、廃炉計画が速やかに示されることを希望します。
 また、使用済み核燃料については、大飯原発でも、あと6~7年で使用済み核燃料プールが満杯となります。最終処理体制が確立していない中において、国として責任を持って、その工程を示すべきであり、それまでは原発の稼働は暫定的なものになることを指摘しておきます。
 さらに、エネルギー供給体制の透明化、自由化、民主化については、家庭用電力の自由化や発送電分離計画が提示されつつあり、今後の速やかな法制化を求めるものであります。

6    事故の場合の対応の確立


  万一の事故時に備えたSPEEDIの端末機の設置については、原子力発電所から30km圏内にある都道府県にも整備(拡充)するとの説明がありましたが、未だ対応されていません。
 なお、オフサイトセンターについては、事故時に機能を失わないよう放射線対策を充実するとともに、代替オフサイトセンターを確保すること、SPEEDIについてはシステムの高度化を図ること、環境モニタリングの司令機能は新しい規制組織に一元化することなど前向きな姿勢が示されましたが、実行はこれからであります。
 また、4月23日の牧野経済産業副大臣の説明では、UPZ30km圏内にオフサイトセンターを整備するとされましたが、その後の事務レベルの説明では、京都府及び滋賀県に現地対策本部・府県・関係市町村を結ぶテレビ会議システムの整備や衛星回線の拡充などオフサイトセンターの機能を整備するという表現に後退しており、適切な安全対策を講じるべきであります。
 さらに、大飯原発の特別な監視体制の整備に当たっては、「被害地元」である京都府と滋賀県も加えていただくよう強く要請するものであります。

7    原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮について


 福島原子力発電所事故の被害者の損害賠償については、原子力損害賠償法や原子力損害賠償支援機構法により、被害者の救済に5兆円が措置されました。しかし、住民の帰還や除染計画など、未来への希望を取り戻すためのきめ細やかな対応をさらに進めるべきであります。
 なお、関西に安定的な電力を供給し、経済発展等を支えてきた福井県に対する国の具体的な支援方策は示されていません。



 以上、7提言の各項目について再度提言を行うものでありますが、野田内閣総理大臣は近く最終決定の判断を行う旨を表明されています。再稼働については原子力規制庁や安全調査委員会の設置を待ち、法的な規制基準(安全基準)を作成して行うのが本筋であり、こうした環境が整っていない現況においては、本来慎重な判断が求められると考えます。
 福島の原子力発電所の事故を目の当たりにし、安全神話が崩壊した今、多くの国民は津波や地震などの自然災害、テロ、偶発的な事故などに対する大きな不安を抱きながら、電力という生活の源の確保の必要性に向かい合っています。 関西広域連合としては、政府の暫定的な安全判断に基づいて、「大飯原発の再稼働」について暫定的かつ限定的な判断を求めましたが、このような「明日なき判断」を求めること自体、関西としての苦渋の選択であります。

 今、政府に求められるのは、国民の不安を解消するための「脱原発依存」の実現に向けた長期的エネルギー対策の基本的な方針を示し、増え続ける使用済み核燃料の処理についての明確な道筋を明らかにしながら、国民的な理解を得るための法的なプロセスの確立と福島第一原発事故の知見を踏まえた、専門家の中立的な意見による新しい規制基準(安全基準)の作成とそれに基づく対策を早期に実施するという「明日への判断」であることを改めて強く求めるものであります。

国民的理解のための原発政策への再提言(PDF:136KB)

 

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