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特集1 京都のスマート農業、進化中!

スマート農業とは、これまで経験と勘に頼り、時間と労力をかけて行ってきた農作業を、先端技術(人工知能(AI)やロボット技術、さらには情報通信技術(ICT)など)により自動化・省力化し、高品質な生産を実現する新しい形の農業のことです。農業が直面する課題の解決策として、府内でも導入が始まっています。

京都府の農業を取り巻く状況

農業就業人口の年齢構成


70歳以上 54.2% ※全国平均 46.9%
50から69歳 36.2%
49歳以下 9.6%

農業就業人口の推移


2005年 67,065人
2010年 56,964人
2015年 42,397人

出典:農林水産省「農林業センサス」2015

 全国的に農業の担い手の高齢化が問題になっている昨今、京都府もまた例外ではありません。さらに府域の約65%が中山間地域で、集落あたりの農地面積が少なく、栽培技術が必要な京野菜など特徴ある作物を多品目・少量栽培している農家が多いため、大規模な稲作や畑作のように画一的な管理や技術継承が難しい ―― そうした京都ならではの事情も、農業が抱える課題となっています。
 そんな状況を打破する切り札となりうるのが、「スマート農業」の取り組みです。府では農地や作物の特徴に合わせた機器のカスタマイズや、これまで経験と勘に頼るしかなかった生産ノウハウのデータ化など、ソフト・ハードの両面で研究と実装化を進めてきました。
 経験豊富な熟練生産者が長く活躍でき、同時に若手にとっても将来に夢を描ける農業を実現するべく、府はさまざまな形でサポートを続けています。

府内導入中のスマート農業技術


GPS搭載の自動走行トラクター(作業時間約40%削減)
リモコンで遠隔操作が可能なトラクター。タブレット端末で速度・深さの調整などの操作ができ、1人で2台分を同時に耕せます。障害物を感知して自動停止する安全装置付き。


GPS搭載の直進キープ田植え機(作業時間約20%削減)
直進時に自動操舵を行う機能を搭載し、未熟練者でもまっすぐ均質に田植えをすることが可能。自動で高精度な施肥も行えるため生育の安定化にも寄与します。


遠隔操作が可能な水管理自動制御システム(作業時間約40%削減)
水田用給水栓の開閉を自動制御し、水管理作業の大幅な省力化を実現。適切な水管理や米の品質向上効果、収穫量の増加、掛け流し防止による節水効果も期待されます。


稲の生育診断アプリ(スマホ使用)(収量確保&品質向上)
スマホで撮影した画像から水稲の生育量を算出し、適切な追肥量を診断できるアプリを京都大学と共同開発しました。


農薬散布用ドローン(作業時間約70%削減)
時速15キロメートルで幅4メートルを散布できる農薬散布用ドローン。1,000平方メートルを約1分で散布でき、人力での散布と比べて5分の1の時間で作業を完了します。小回りが利くので、中山間などの小さいほ場でも使用可能です。


品質向上をサポートする食味・収量コンバイン(品質向上に寄与)
収穫しながら食味(タンパク量・水分量)と収量を計測、乾燥ムラをなくし、よりおいしく高品質な米づくりを支えます。


環境を自動制御するICT導入鉄骨ハウス(所得約1.8倍に増加)
ハウスの換気や遮光・遮熱カーテンの開閉、炭酸ガスの量などをICT技術で自動制御。トマトなどの品目で高品質化・増産を目指す若い生産者も現れています。

スマート農業の現場レポート

※新型コロナウイルス感染症対策を万全にした状態で取材・撮影を行いました。

約1.3平方キロメートルの農地面積の一部を地元生産者と共同利用し、水稲をはじめとする作物の生産・管理などの事業を展開する「農事組合法人ほづ」を訪問。同法人が取り組む※スマート農業実証プロジェクトの現場を見せていただきました。
※本実証課題は、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(事業主体/国立研究法人農業・食品産業技術総合研究機構)の支援により実施されています。

写真右
代表理事
酒井 省五さん

法人ほづで平成20年から代表理事を務める。農業歴60年のベテラン。

写真左
理事
伊津 哲さん

法人ほづ設立当初から理事を務める。保津町農業振興協議会会長も兼務。

写真中央
職員
井上 貴嗣さん

非農家出身。府立農業大学校を卒業後、法人ほづに就職して11年目。

レポート1
導入しようと思ったきっかけは?

 2005年の法人設立当初から農業の高齢化と担い手不足を課題としてきた「農事組合法人ほづ」では、その解決策の一つとして以前からスマート農業に強い興味を持っていたといいます。「若い人に興味を持ってもらい、労働生産性を上げるための方策としてスマート農業に可能性を感じていたので、府が募集した国の実証プロジェクトに手を挙げさせてもらい、スマート農機を導入しました。その後、府の『スマート農林水産業実装チャレンジ事業』『「京の米」生産イノベーション事業』による補助金も活用して徐々に農機の拡充を進め、スマート農業に取り組んできました」と代表の酒井さん。


手入れの行き届いた最新鋭のスマート農機の数々が並ぶ

レポート2
ICTを導入して何が変わったか

 スマート農業による作業負担の軽減と効率化を最も実感するのは、ドローンによる農薬散布なのだそうです。「それはもう圧倒的に楽になりました。従来、1日がかりだった作業が2時間で済んでしまう」という井上さんは、府立農業大学校を卒業後、同法人に就職した若手のエース。「例えば田植えの場合、慣れていても手動でまっすぐ植えるにはとても神経を使います。自分が植えた苗がもしゆがんでたら『うわぁ〜』となる。きれいに植わっていると、やっぱり気持ちいいんですよ」(井上さん)。まっすぐ植えることは、気持ちだけでなく、生育を安定させ、収量や品質も左右するといいます。それは収益にもプラスをもたらします。「スマート化のおかげで残業がほぼなくなったことも大きいですね。仕事が終わったらしっかり休むことで、事故の防止にもなる」と理事の伊津さんは語ります。


ドローンによる農薬散布の様子。約2メートルの高さをキープしつつ、ほ場の上を飛行する


コントローラーにはドローンの軌跡が表示され、散布もれがないか確認できる


自動走行トラクターに運転席の端末でほ場の四隅をインプットすると、あとは無人で作業を進めてくれる

レポート3
京都の農業をもっと面白くするために

 これまで経験と勘、そして体力を必要とした農業は、スマート化によって大きく変わろうとしています。「キツイ作業が軽減される分、ぜひ担い手にもっと女性が増えてほしい」という酒井さん。「今はまだ農機のエンジン音や振動が大きいけれど、そのうちモーターで静かに動く機器が出て、若者にも高齢者にも扱いやすくなると思います」と、伊津さんも担い手の広がりに期待を寄せます。今後、多様な担い手がスマート農業に取り組むことで、京都の農業が大きく前進する可能性が開けてきます。

京都の農林水産業を前へ進める研究拠点
京都府農林水産技術センター

農林水産技術センターでは、農林水産業へのスマート技術の導入を支援する技術開発を進めています。特に農林センターでは、府の農業・林業分野の実用研究部門として、京野菜や宇治茶など高品質な農林産物生産のさまざまな課題解決に取り組んでいます。スマート農業の実装化に向けた研究や、その普及のための情報発信にも力を入れています。


降霜予測や、摘採・防除の適期予測をスマホで確認できる茶生産マッピングシステムは来年の本格運用を目指す


市販材料を用いて安価で導入できる万願寺とうがらしの土壌水分連動型自動灌水(かんすい)システムを開発(普及推進中)


府内20カ所の畑に設置した温度計のデータを解析し京夏ずきんの収穫適期を研究中


より高い品質を目指した賀茂なすの接ぎ木や剪定(せんてい)法など、伝統の農業を磨き上げる研究も行っている

スマート化で開く京都の農業の未来

スマート化

 高齢化や担い手の減少などの課題に直面するなか、京都の農業を守り、発展させていくために、府では「スマート農業」の推進を成長戦略の一つとして位置付けています。
 スマート農業が普及することにより、これまで重労働だった農作業を技術の進化で省力化できるだけでなく、技術の継承や、収益性の向上などの効果が期待できます。それは現在農業に従事しておられる人々の事業発展はもちろん、他業種の参入や協業を促すことによる農業分野でのイノベーションにもつながっていくものです。
 将来の農業が、若者たちが夢を持って取り組める職業分野となり、そのフィールドとなる地域に活気がみなぎるよう、これからもスマート農業の導入に向けた支援を行ってまいります。

京都府知事 西脇 隆俊

スマート農業を進めるための府の支援策

スマート技術の導入等を支援

スマート農林水産業実装チャレンジ事業

※「農事組合法人ほづ」が活用した事業

スマート技術(機械等)の導入に取り組む生産者に補助金を支給
補助率:2分の1(水稲・酒米など)、10分の4(茶・京野菜、畜産、水産など)、個人10分の3

『京の米』生産イノベーション事業

※「農事組合法人ほづ」が活用した事業

良食味1等米等、特別栽培米、酒米、売れる米づくりに取り組む農家組織に対し、機械購入費などを支援

ICT施設園芸モデル整備事業

低コスト耐候性ハウス等の整備を支援
補助率:10分の3

スマート農業加速化実証プロジェクト事業

モデル経営体においてスマート農業の技術を一貫体系で展示実証 (スマート農業技術の開発・実証プロジェクトを活用)

京都イノベーション創造事業

産官学連携によるコンソーシアムにより京都府の実情に合ったスマート技術のカスタマイズを農林水産技術センターで実施

次世代につなぐ営農体系確立支援事業

スマート技術の活用による生産性向上や作業の軽労化・効率化の実証を支援

スマート農林水産業情報センター事業

農林水産業へのAIやICTなど先端技術を活用したスマート技術の実装をワンストップで支援する相談窓口を設置

担い手の育成を支援

農林水産人材育成学舎などでの学び

府立農業大学校や林業大学校、海の民学舎などにおいて、AIやロボット技術などを活用した生産を学ぶ講座を開設。

ご相談ください

興味を持ったら、まず相談!
スマート農林水産業相談窓口

スマート農林水産業技術の導入に向けて生産者の相談にワンストップで対応します。
[相談内容の例]

  • スマート農林水産業の情報提供、技術相談
  • 技術導入に向けた経営相談
  • スマート技術に関する専門家派遣
  • 技術導入に活用できる補助事業の紹介

[お問い合わせ]
一般社団法人 京都府農業会議(上京区)
TEL:075-417-6888(平日9時から17時)

ご参加ください

最先端の農業がいっぱい!
スマート農業祭2020

直進アシスト機能付きトラクターやドローン、リモコン草刈機など、最新のスマート技術を駆使した機器やシステムの展示相談会を開催。府内外から約40企業・団体が出展し、機器・システムの実演や経営相談も実施するほか、事例紹介や研究報告、講演なども。

日時 11月13日(金曜日)13時から16時、14日(土曜日)10時30分から15時
場所 京都府農林水産技術センター 農林センター(亀岡市)

[お問い合わせ]
流通・ブランド戦略課
TEL:075-414-4968 FAX:075-414-4974

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知事直轄組織広報課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4075

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