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特集 京都府の水害対策最前線


地域を浸水から守るいろは呑龍トンネル

近年、記録的な大雨により全国各地で甚大な被害が発生しています。
京都府ではこうした大雨による浸水被害を軽減するため、総合的な治水対策を進めています。
その一つとして、乙訓地域を浸水被害から守るため整備を進めてきた「いろは呑龍トンネル」の北・南幹線がつながり、いよいよ全線の供用を開始。
呑龍ポンプ場も完成し、地域の安心・安全が大きく前進します。

京都府知事 西脇 隆俊


京都市、向日市、長岡京市にまたがる地域を対象

今年3月に完成した南幹線の管きょ(トンネル)の直径は3.5メートル。北幹線には直径8.5メートルの管きょもあり、大雨の時に雨水を取り込み、呑龍ポンプ場から排水することで浸水被害を防ぎます。
いろは呑龍トンネル各流入口やポンプ場の状況をWebで確認できます

「いろは呑龍トンネル」とはどんな仕組み?

 大雨で増水した河川や排水路から雨水を地下トンネル内に取り込んで貯めるとともに、呑龍ポンプ場から桂川へ排水します。
 北幹線から南幹線までの全長約9キロメートルにわたる地下トンネルには約17万立方メートルの雨水を貯めることができます。今後、貯水能力を高めるための調整池を整備することで、浸水被害軽減効果をさらに高めます。


洛西浄化センター内の吞龍ポンプ場と調整池(施工中)

いろは呑龍トンネル流域MAP

いろは呑龍トンネル 基本DATA

排水面積 約1,421ヘクタール 全体延長 約9.0キロメートル
貯留できる雨水の最大量(完成時):全体で189,750立方メートル(25メートルプール約630杯分)

北幹線第1号管きょ

最大54,000立方メートル 25メートルプール約180杯分

北幹線第2・3号管きょ

最大53,000立方メートル 25メートルプール約170杯分

南幹線管きょ

最大63,250立方メートル 25メートルプール約210杯分

調整池(洛西浄化センター内)

最大19,500立方メートル 25メートルプール約60杯分
令和5年度末頃完成予定

呑龍ポンプ場(洛西浄化センター内)

毎秒10立方メートルの雨水を桂川に流せる25メートルプールを30秒で空にする勢い

呑龍ポンプ場断面図


呑龍ポンプ場の心臓部である原動機室


毎秒10立方メートルの雨水を排水するためのポンプ


桂川への放流ゲート

水害に苦しめられてきた乙訓地域を守るために

 乙訓地域は、一級河川の桂川と小畑川に挟まれたすり鉢状の地形で水はけが悪く、度重なる水害に苦しめられてきた地域です。784年に造営された長岡京がわずか10年で平安京に遷都されたのも、この浸水被害が一因であるといわれています。さらに、高度経済成長期以降、急激に都市化が進行し、多くの雨水が河川や排水路に流れ込むようになったため、大雨のたびに浸水被害に見舞われてきました。
 その対策として平成7年度に開始したのが「いろは呑龍トンネル」整備事業です。平成23年度までに乙訓ポンプ場(向日市)以北の北幹線を供用していますが、今年3月、南幹線が完成し、全線の供用を開始するとともに、最下流にあたる洛西浄化センター(長岡京市)に呑龍ポンプ場も完成しました。

整備前
過去の浸水事例


向日市寺戸町の浸水(平成11年6月)


府道伏見向日線 JRアンダーパスでの幼稚園バスの浸水(平成20年7月、向日市)

浸水被害軽減の実績と今後期待される効果は?

 全国で初めて大雨特別警報が発令された平成25年台風第18号では、北幹線のトンネルを最大限活用し、推計で約800戸が浸水被害を免れました。北幹線供用後は令和4年4月までに合計160万立方メートル、延べ319回の貯留実績があり、浸水被害軽減効果は約3,000戸と推計しています。今年、南幹線を供用したことで、新たに長岡京市内の雨水もトンネル内に取り込めるようになりました。また、北幹線と南幹線を一体的に活用し、呑龍ポンプ場から貯めた雨水を桂川に排水することにより長時間の大雨に対する安全性が大幅に向上します。平成25年台風18号の1・5倍に相当する大雨にも浸水被害を生じさせないことを最終目標として今後も整備を進め、これからの乙訓地域の成長と発展を支えていきます。

現場の声

 今年3月に全線がつながりましたが、今後も洛西浄化センター内の調整池やポンプの増設などの工事が続きます。乙訓地域の浸水被害がさらに軽減されることを願い、一日も早い全体完成を目指して取り組んでいます。

京都府流域下水道事務所 施設整備課 吉本 慶太

京都府各所で進む安心・安全のための河川砂防事業

 京都府では、大雨による浸水や土砂災害の防止・被害軽減を図るため、堤防整備や河川断面の拡幅などの河川事業および砂防えん堤整備などの砂防事業といったハード対策、土砂災害警戒区域等の指定などのソフト対策を進めています。

宮津市 桃ヶ谷川 砂防事業

土砂災害警戒区域内の人家、公民館、市道および鉄道を保全対象として、令和2年度から砂防えん堤を整備しています。土石流による被害を防止し、地域の安心・安全を確保します。

福知山市 谷河川 砂防事業

平成30年7月豪雨で大規模な地すべりが発生し、河川がせき止められました。土砂災害から人家や国道を守るための砂防えん堤の整備が令和2年度に完了し、現在は崩壊した斜面の対策工事を行っています。

舞鶴市 高野川 河川改修事業

平成16年台風第23号をはじめ、平成25、29、30年にも浸水被害が発生しました。河川断面の拡幅や護岸のかさ上げなどの河川改修とともに、市による排水ポンプ整備など府・市連携の総合的な治水対策を行っています。

亀岡市 桂川 河川改修事業

平成25年台風第18号の豪雨により、桂川が氾濫し、JR亀岡駅が浸水するなど、甚大な浸水被害が発生しました。河川断面の拡幅や堤防のかさ上げなどを進め、国による下流の整備と一体で流域全体の治水安全度を向上させています。

京都市 鴨川 河川改修事業

平成25年台風第18号の豪雨では、京川橋より下流の堤防から越水し甚大な浸水被害が発生しました。美しい景観や自然環境の保全にも配慮しながら、河川断面の拡幅工事などを行っています。

笠置町 切山 地すべり対策事業

切山地区は地すべりが発生すると木津川や国道が土砂により遮られ、広範囲に影響を及ぼす恐れがあります。地下水を排除し地すべりを抑制する、排水ボーリングなどの対策工事が令和2年度に完成しました。

城陽市 古川 河川改修事業

平成24年8月の府南部豪雨では、市街地で甚大な浸水被害が発生しました。同規模の大雨に対して床上浸水の発生を防ぐことを目指して進めてきた河川整備がおおむね完成し、地域の治水安全度を高めています。

河川監視カメラを確認しましょう(外部リンク)

府内を流れる377河川のうち131カ所にカメラを設置し、川の流れる様子をリアルタイムで配信しています。

[お問い合わせ]
砂防課
TEL:075-414-5315 FAX:075-432-6312

[お問い合わせ]
河川課
TEL:075-414-5285 FAX:075-432-6312

「水害等避難行動タイムライン」を作ろう!

 水害などの際に「いつ」「どこへ」「どのように」避難するかを事前に決めておく計画のことを「水害等避難行動タイムライン(以下タイムライン)」といいます。自分たちの住む地域の洪水・土砂災害リスクについて、自主防災組織や自治会などで検討しながら作成し、住民一人ひとりの「タイムライン」を作ることで、災害発生時に確実な「命を守る行動」を取ることができます。


タイムライン作成を支援するため、防災士による出張ワークショップを府内各地で開催(随時受付中)


ワークショップの際には、地域の危険場所や避難経路を確認するため、まち歩きも実施

タイムライン(災害・避難カード)

避難の合図(スイッチ)

水害

記入例:○○川の洪水警報の危険度分布が紫色になったとき

土砂災害

記入例:自分の住んでいる地域で、土砂災害警戒情報が発表されたとき。

避難先

水害

指定緊急避難場所 記入例:○○小学校、△△中学校
次善の避難場所  記入例:○○公民館

土砂災害

指定緊急避難場所 記入例:○○小学校、△△中学校
次善の避難場所  記入例:○○さんの家

メモ欄

  • 避難する際は、防災グッズを持ち出すこと。
  • ○○さんへの避難の声掛けを行うこと。
  • 災害用伝言ダイヤル(171)
    (災害などで電話がつながりにくくなった場合に提供が開始される声の伝言板)

○市町村から避難情報が出された際は、避難行動をとって下さい。

高齢者等避難
避難に時間を要する人(ご高齢の方、障がいのある方、乳幼児等)とその支援者は避難しましょう。
その他の人は、避難の準備を整えましょう。

避難指示
速やかに危険な場所から全員避難しましょう。

いつ避難?

どの時点で避難するかを決めておく
例:〇〇地区に避難情報「警戒レベル4」が発令されたとき…など

どこに避難?

ハザードマップで確認の上、最善(ベスト)と次善(セカンドベスト)を決めておく
例:〇〇小学校、〇〇公園、〇〇さんの家…など

どのように避難?(メモ欄)

  • 避難時の持ち物(持病の薬、ベビー用品、介護用品、衛生用品など)を記入
  • 地域での役割分担(誰と逃げるか、誰に声を掛けるか…など)
  • 非常時の連絡方法(災害用伝言ダイヤル171など)

なぜ「タイムライン」を作った方がいいの?

  • 水害は地震などと違って事前に発生を予測し備えることができる
  • 避難時の行動を「見える化」することで、災害が発生したときに焦らず行動することができる
  • 各家庭の「タイムライン」を集約すれば安否確認が取りやすい
  • タイムライン作成時の話し合いを通じて地域の防災意識が高まる

水害等避難行動タイムラインの作成についてはこちらから

現場の声

災害を「自分ごと」として「もしも」に備えよう

 水害はひとたび発生すれば、一瞬の判断が命を左右することもあります。大切なのは、災害を正しく恐れること。個人の力だけで太刀打ちできない状況も十分にあり得ます。まずは近隣の人と声を掛け合うことが、防災の第一歩。地域の皆さんの経験や知恵を集めて「タイムライン」を作成できれば、よりリスクを低くすることができます。「もしも」の時に自分と自分の大切な人の命を守るためにも、災害を「自分ごと」として捉え、日頃からの備えをしておきましょう。

日本防災士会京都府支部 事務局長 飯澤吉郎さん

確認しよう
警戒レベルと取るべき行動

※内閣府の資料を基に作成

避難情報等

警戒レベル1

早期注意情報(気象庁)

今後の気象情報を確認。安全な場所にある親戚・知人宅に移動しておくことも検討。

警戒レベル2

大雨・洪水・高潮注意報(気象庁)

避難の準備を始める。最新情報を確認
情報ツールの紹介はこちら

警戒レベル3

高齢者等避難

高齢者や障害のある人などは危険な所から逃げる。
危険を感じたら自主避難!

避難指示で必ず避難を!
警戒レベル4

避難指示

危険な所から全員が逃げる!最善(ベスト)の避難場所へ!
無理なら次善(セカンドベスト)

警戒レベル5

緊急安全確保

命の危険、直ちに安全確保!災害が発生し、身の安全を確保できない可能性あり!

市町村や気象庁から出される避難情報等と、その時に取るべき行動を確認しておきましょう。

[お問い合わせ]
災害対策課
TEL:075-414-4475 FAX:075-414-4477

防災ツールの最前線

 災害時は、身を守るために気象情報や災害の規模、避難指示の情報などを、正確に知る必要があります。このような情報は、府、市町村がいろいろなツールで発信しています。いざというときに備えてご利用ください。

日頃からの備えは…

地域の災害リスクを知る!

「京都府マルチハザード情報提供システム」(外部リンク)

 住所を入力すれば、その場所の洪水時の想定浸水深や土砂災害警戒区域などをピンポイントかつ複合的に知ることができます。家から避難所までの道順を事前に確認しておけば、災害時の迅速な行動にもつながります。

一人ひとりに危険情報が届く!

「京都府防災・防犯情報メール」

 事前に登録した地域の気象情報や防災情報などがリアルタイムに配信され、危険をいち早くキャッチすることができます。まずは登録してみましょう。


※画像はイメージです

anzen@mail.bousai.pref.kyoto.lg.jpに空メールを送ると登録できます

近くの避難所を調べる!

「避難施設カルテ」を公開しています

 府内市町村の避難所に指定されている施設などについて、設備や対象となる災害などを示しています。

こんな情報が分かります

  • ペットの同行ができるか
  • 多機能トイレやWi-Fi環境があるか
  • 一時避難か、生活できる避難所か
  • 避難経路上の危険箇所など

こちらもチェック

市町村ごとのハザードマップ

災害危険箇所や避難所の場所など、地域の実情に即した防災情報を集約した「ハザードマップ」を、各市町村ごとに作成・配布。

長雨や台風の接近時は

地域の避難情報をチェック!

「きょうと危機管理WEB」(外部リンク)

 気象や河川、土砂災害警戒情報、避難情報、交通・ライフライン情報など、府の危機管理に関する情報をひとまとめにしています。


お住まいの地域の避難情報が表示されたら避難しましょう

最新の防災情報を入手

「京都府防災Twitter」(外部リンク)

 京都府の防災への取り組み、防災豆知識、災害発生前の注意喚起、災害時の対応状況などを発信しています。

@kyotokikikanri

府内地域ごとの雨量や河川水位をチェック!

「京都府河川防災情報」(外部リンク)

 観測地点ごとの雨量や河川水位などの情報をリアルタイムで提供し、避難行動につなげます。


雨量・水位など見たい情報を選びます
見たい地域を選びます


雨量グラフ


河川の様子


河川の水位グラフ

TOPICS

構築しています!
水位・氾濫予測システム

河川水位や氾濫時の浸水区域を予測するシステムを構築して、府・市町村で共有し、早期避難につなげます(令和5年度運用開始予定)。

[お問い合わせ]
砂防課
TEL:075-414-5315 FAX:075-432-6312

迫る災害を河川ごとに一目で確認!

「キキクル(危険度分布)(気象庁)」(外部リンク)

 河川ごとに予測される浸水害発生危険度を5段階に色分けして表示。避難すべきかどうかの判断材料として活用できます。

洪水害

他にも大雨時に役立つ情報がいろいろ

土砂災害

浸水害

洪水浸水想定区域

出典:気象庁ホームページ(外部リンク)
「キキクル(危険度分布)」を基に編集・加工

新型コロナウイルス感染症情報

WITHコロナ社会×災害避難

 避難所では「密閉」「密集」「密接」の状況になりやすく、感染症の拡大が懸念されます。府では市町村と連携しながら、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めています

府民の皆さんに協力いただきたいこと

  • マスク、消毒液、体温計などを携行
  • 避難所に入る前の体調チェック
  • こまめに手洗い・手指の消毒を
  • 他人と距離をとる
  • 密接した状態での会話は避ける

避難所で対策していること

  • 可能な限り多くの避難所を開設
  • 十分な換気とスペースを確保
  • 保健福祉部局などと連携した健康管理
  • 発熱などがある人の専用のスペースを準備


感染症対策を取り入れた避難所配備職員説明会の様子(京田辺市)

京都府新型コロナウイルス感染症対策本部Twitter公式アカウント(外部リンク)
京都府-新型コロナ対策パーソナルサポートLINE公式アカウント(外部リンク)
京都府の支援制度まとめ
京都府ホームページ

激甚化する災害から府民の皆さんを守る

 全国各地で自然災害が頻発化・激甚化するなか、京都府でも大きな被害が発生しています。過去の経験から得た教訓や課題に学びながら、府ではソフト・ハードの両面で防災・減災対策を進めてきました。
 ハード面では、今年ついに全線の供用を開始した「いろは呑龍トンネル」や、府内各地で進む河川改修などの防災基盤整備を進めています。ソフト面では、いざというときに早期の避難ができるよう、「タイムライン」づくりの推進など地域の自主防災組織の活動支援に力を入れ、コロナ禍においても躊躇(ちゅうちょ)なく避難できる環境整備にも市町村と連携して取り組んでいます。
 さらに、あらゆる自然災害に迅速かつ的確に対応する常設の危機管理センターを令和5年度の稼働に向け整備を進めています。これからも府民の皆さんの生命と財産を守るため、防災・減災の取り組みを着実に進めてまいります。


京都府知事 西脇 隆俊

[お問い合わせ]
災害対策課
TEL:075-414-4475 FAX:075-414-4477

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ファックス:075-414-4075

koho@pref.kyoto.lg.jp