人権口コミ講座 175
人権の推進主体としての企業を考える
世界人権問題研究センター嘱託研究員(ビジネスと人権)
井上 良子
企業の不祥事と人権問題
テレビ局や芸能事務所などエンターテインメント業界での問題が取り沙汰されています。ニュースでの採り上げ方や周囲の反応を見ていると、この問題はショービジネスやアイドル業界での悪しき慣行であって、「人権の問題」とは捉えられていなかった節もあるように見受けられます。かねてより企業は、偽装表示や情報漏えい、職場でのハラスメント、過労死といった問題を起こし、そのたびに“不祥事”に対する謝罪を繰り返してきました。被害者の人権は一度損なわれると回復が難しく、国際的には、人権侵害の問題を“企業の不祥事”と片付けるべきではない時代になっています。
人権の推進主体としての企業
どのような業種であっても、企業が製品などを世の中に提供するまでの過程では、あらゆる人が関わっています。従業員、取引先やサプライチェーン上の労働者、地域社会など誰かの犠牲の上に企業の成長が成り立っていないか。その観点から2011年に国連で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業活動による人や社会への負の影響を予防・軽減することを企業に求めています。
同時に意識を向けていただきたいのは、人権の推進主体としての企業の存在意義です。単に雇用を創出し、納税の義務を果たすだけが企業の役割ではありません。特に地域に根差して発展してきた中小企業の中には、事業を通じた地域社会への貢献を重視しているところが多くあります。そのことが、人や社会に対してプラスの影響を与え得る人権の推進主体としての、もう一つの積極的な役割だということを再度認識いただくことも重要なのです。
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