トップページ > 子育て・健康・福祉 > 子育て・青少年 > 青年海外緑と文化の大使レポート(ガーナ)

ここから本文です。

青年海外緑と文化の大使レポート(ガーナ)

坂本大祐(出身:京都市) 平成19年度4次隊(職種:水資源開発)

 ガーナでの活動期間の2年が間もなく終わろうとしています。振り返ればあっという間の2年。そして、京都府ホームページへの私の青年海外協力隊としての活動報告もついに最終号となりました。最終号は、私のガーナでの「安全な水供給」に関する活動を中心に報告します。


写真-左 溜め池の水を汲む女性
写真-右 いつでも大歓迎!村の元気な子ども達

 私はギニア・ワーム撲滅を上位目標とした「安全な水供給」に関する活動をガーナ国北部州の村落地域を中心に行いました(ギニア・ワームについては第1号を参照して下さい)。そして、私の青年海外協力隊としての職種は「水資源開発」でしたが、実際の活動を振り返ると「村落給水」がしっくりくると思います。ハンドポンプ付井戸修理、簡易水供給施設の計画及び設計補助、既存給水施設のモニタリング及び運営維持管理の再構築、溜め池の水を水源とする水供給システムの考察など多岐に渡りました。2年目は、特に1年目に活動を通して痛感させられた給水施設の持続性の欠如に対する取り組みを中心に行いました。
アフリカの安全な水供給率は約60%、特に村落地域は約50%と非常に低い値。アフリカでは、この安全な水供給率を高めていくことが最優先事項です。しかし、整備された給水施設が長期に渡ってその機能を発揮して利用されなければ、住民は安全な水を享受できているとは言えません。日本では、蛇口を捻れば安全な水がいつでも得られますが、それは整備された水道施設が正しく運営維持されているから。しかし、ハンドポンプが故障した時に修理する術が分らない、給水施設の経営面での問題等から、アフリカでは正しく運営維持されない給水施設(持続性の欠如)が多く存在します。日本人的感覚からすれば、整備された給水施設は維持されて当然といった感じもあります。しかし、開発途上国では、施設を維持するための運営維持管理体制が脆弱であるがため、給水施設の故障や経営難によりその機能を発揮できないまま給水施設が放置されている状況が存在します。以下、少し専門的になりますが、私が2年目に簡易水供給施設に対して持続性構築を試みた事例を紹介します。

 D村はガーナ北部州に位置する人口約13千人の村で、安全な水の入手手段として、簡易水供給施設と5つのハンドポンプ付深井戸を有します。簡易水供給施設の水源は深井戸で、井戸内に水中モーターポンプを配置し、ポンプ動力により高架水槽に送水、高架水槽から村内に存在する17箇所の公共水栓に給水しています。本村の住民の大多数が、この簡易水供給施設からの給水に依存しています。

写真-左 簡易水供給施設の高架水槽
写真-右 簡易水供給施設の公共水栓と筆者

簡易水供給施設の運営維持管理は、本村の住民で主に構成された水管理委員会により実施されており、公共水栓での水の販売から現金収入を得て、その収入を基に、モーターポンプの動力源である商用電力、施設運営維持管理を実施する水管理委員会への給料、施設修繕費等の支出に当てています。また、将来的に必要になる新規送水ポンプ購入などの多額の資金を貯蓄する必要もあります。しかし、私が現場調査をした際には、毎月の支出が収入を上回る経営赤字が続いており、この状態が放置されると簡易水供給施設の運転が停止し、結果、多くの住民が安全でない溜め池の水を飲用しなければならない事態が想定されました。また、水道管から多くの漏水が発生しており、正確に施設をメンテナンスされていない状況も伺えました。よって、地元のガーナ人村落給水専門家と共に、現況の課題を整理し、改善策を策定。具体的改善策は、水道料金値上げと共に水管理委員会への施設経営への助言と改善、漏水箇所の発見と修繕など多岐に渡り、約半年かけて実施しました。この間、村人や役所の水衛生課、配属先、その他援助機関へ改善策進捗状況の報告や打ち合わせが何度もあり、また、村人との信頼関係を築くため、毎日のように村へ足を運んだりしました。


写真 水管理委員会のミーティング

改善策実施と多くの方の協力により、先月1月には収入が支出を大きく上回り、新規ポンプ購入や施設拡張までも視野に入れた財政計画が立てられ、また、漏水箇所修繕等により、給水量が前年度と比較して大幅に増加することに成功しました。まだまだ、運営維持管理に対して、様々な改善の余地はあるものの、持続性を維持するにあたって、必要なことは何かを私自身深く考えさせられましたし、村人にも、何をすれば施設が健全に保てるかを示すことと、それを理解して頂くことが出来たと思います。私自身、日本に帰国するため、この簡易水供給施設への運営サポートから手を引きましたが、村人自身並びにガーナの人々が持続性の重要性を理解し、今後も健全な給水施設運営維持管理に努力して頂けたらと思います。

 近年、ガーナでのギニア・ワーム件数は大きく減少し、撲滅に向けて前進しています。ギニア・ワーム撲滅への私自身の貢献は非常にわずかではありますが、村落給水への安全な水の安定した供給といった観点から、撲滅に向けて少しでも貢献できたことを誇りに思っています。
そして、2年を振り返り、ボランティアとして、現場で地についた活動ができたこと、日本人社会とまったく異なる環境下で活動したこと、その過程で、ガーナで活躍する日本人を含め多くの人と知り合えたこと等、お金を出しても買えない経験が出来ました。これら経験が、私の今後の人生において、大きな影響を及ぼすと思います。今後も、ガーナでの経験を基に、水の時代と言われる21世紀に少しでも貢献していけたらと思います。
最後になりましたが、国籍を問わず様々な方から活動面や生活面へのサポートがあり、そのおかげで有意義な2年を過ごすことが出来ました。お世話になった方々に心から深く感謝しています。


写真 配属先スタッフと事務所前にて

お問い合わせ

健康福祉部こども・青少年総合対策室(青少年係)

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4792

kodomo@pref.kyoto.lg.jp