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令和4年度「一人称工芸」

「一人称工芸」とは何か?

伝統工芸がまさにリアルタイムで起ころうとしていた頃、工芸従事者自身が世の中を眺め、身の回りの人々の生活をつぶさに観察する中で「こんなモノが世の中にあったら!」という衝動に駆られたモノづくりや商いで賑わっていたと予想される。​

言い換えると、伝統化した今日の工芸は、原点から遠ざかってしまった側面がある。​

本企画「一人称工芸」ではまず初めに各工芸従事者が、自身が受け継ぐ伝統や専門的技術から敢えて離れ、むしろ超個人的で自由な視点から身の回りや社会が抱える課題やニーズを発見する。​

その上で、その課題やニーズに対する解決策として各自の伝統的技術に帰着させたプロダクトやサービスを構想し、提案する、といった一連の試行を行う。​

これは、昨今注目を浴びる「両利きの経営」における「知の深化」と「知の探索」になぞらえると、冒頭の「工芸の深化(伝統や技術的強みの抽出・整理を通してのブラッシュアップ)」に対する「工芸の探索」とも言え、その結果「両利きの工芸」としての優位性の獲得に繋がり得ると考えらえる。​

伝統や技術起点の工芸は、同業者であれば似たような深化を辿ってしまうというリスクがあるのに対し、個人起点による「工芸の探索」は従事者自身の個性が反映されるはずであることから、一定のオリジナリティを獲得しやすいという大きなメリットもある。​

さらに、本企画ではアウトプットとして東京での展示商談を行う。参加者自身が、市場・マーケットのフィードバックを生の声として聞くことで各自のプロダクト・サービスと社会との繋がりの可能性を再認識し、かつプロダクト・サービスのブラッシュアップに向けたヒントを得ることを計画している。​

「一人称工芸」と名付けられた本企画への参加を通じて、特に工芸従事者にとっては「商いにおける発想の制限」となってしまいがちな伝統や技術に新たなマインドセットを吹き込み、今後各自にとって最適な「両利きの工芸」のバランスを模索して頂くきっかけとなることを目指す。​

ー古いものの中に新しい価値ー

工業化へのカウンターカルチャーとして生産アプローチの変化、サプライチェーンの変革が求められる現代において、世界では工芸的・伝統的な技術や技がクローズアップされている。
私たちはこうしたニーズに伝統工芸の価値を提案する。

「誰に向けて」「何を伝えるか」「どう伝えるか」を徹底的に考え、メンターと対話し、試行錯誤を繰り返しながら、必要とされる工芸を追求する。

趣旨

伝統産業をはじめとする地域産業の担い手が、自社の目指すべき方向性の検証や課題整理を行いながら、伝統工芸の歴史、自社の強み、ストーリーなどを再定義し、「現代の生活や消費者に必要とされる」プロダクトやサービスとは何か?を追求することで「ものづくり」や製品コンセプトの創出・デザイン等を目指します。

アウトプットとして、東京での展示商談を行います。

(令和4年度)
日本経済新聞社主催の JAPAN SHOP/建築・建材展 特別展示「NIPPONプレミアムデザイン」

「一人称工芸」 R4年度参加事業者紹介

齋田石材店(外部リンク)

京石工芸品 京石工芸品の製造販売、卸
有限会社洸春陶苑(外部リンク) 京焼・清水焼 京焼・清水焼の製造販売
株式会社竹定商店(外部リンク) 京銘竹 竹製品の製造販売
浅山織物株式会社(外部リンク) 西陣織 西陣織帯地製造販売
田中金彩工芸(外部リンク) 京友禅(金彩) 着物・絹製品の製造販売

 

【全体総括・運営】 o-lab inc.|オーラボ株式会社(外部リンク)

 

 

 

 

 

 

 

【ゼミ・メンタリング開催実績 2022年度】
#1 09.21 #2 10.07 #3 11.02 #4 11.24 #5 12.06 #6 12.26 #7 R5.1.11 #8 1.25

#9 1.31

 

JAPAN SHOP2023 展示

各メンバーの展示発表プロダクトをご紹介します。

出展エリア:JAPAN SHOP2023 NIPPONプレミアムデザイン

一人称工芸リーフレット(PDF:2,214KB)

<JAPAN SHOP速報レポート>

https://messe.nikkei.co.jp/js/2023/quickreport_js2023_01_j.pdf

 

 

齋田石材店

「奏でる石の息吹」

裏山で遊んだ子供の頃を思い出す時がある。それは昨今の情報量の多さに疲れた時。静かな空間で聞こえてくる鳥の鳴き声や木の揺れる音、苔ののった石やいつも見える岩肌。石は昔からその地域や子供達を見守ってきたと教えられてきました。日本の原風景には欠かせないそんな石には、屋外の、重たい、冷たいというイメージが付きものですが、実は石は意外な表情を見せることがあります。石と向き合う私が気づいたのは、石からは何か聞こえてくるということ。さあ、この「奏でる石の息吹」から聞こえる優しい声で、五感と心を優しく、落ち着かせてみませんか?

古来から残る石灯籠は、祈りを捧げる火を灯す「灯の籠」です。石工である私は、伝統的な道具であるノミや石頭(せっとう)などを使い、長年の経験で培った、力を抜いた独自のリズムでコンコンコンと音を立てながら硬い石を削っていきます。冷たく重いイメージの石を、時を経て風化した柔らかい石のように感じさせるエイジング加工は齋田石材店で代々引き継がれてきたものです。石灯籠作りという伝統工芸の技術によって生まれる石の優しい表情も「奏でる石の息吹」の見どころです。

有限会社洸春陶苑

「ふたりでひとつをつくる」

日々の暮らしにもものづくりはたくさんありますが、心から楽しむ機会が少なくなっていないでしょうか?本来ものづくりはとてもわくわくして楽しいものです。それが誰かとの共作となれば、お互いのアイデアも心地よく刺激し合う、素敵な時間と作品ができるのではないでしょうか?

このサービスは、通常の陶芸体験ではなくあなたと私、ふたりで一つのものを作り上げます。みなさんの自由な発想や表現にわたしたち職人のエッセンスや技術を取り入れて一つの作品に仕上げる、新しいコラボレーションのかたちです。

粘土をペースト状に水で溶いたものを袋から絞り出して描画する「いっちん」は京焼・清水焼の伝統技法の一つでありながら、手がける工房が少ない技術の一つです。通常の絵付けと異なり、筆を使わず粘土を使って描くことがその理由かもしれません。また、機械化することが難しい技法ですので大量生産には向かず、職人が一つずつ作ることに適したものです。洸春窯は開窯以来、三代にわたっていっちんの技法を受け継ぎ、独自に発展させてきました。触感にもこだわった、立体的な装飾が生み出す心地良さを多くの方に知っていただきたいと思います。

株式会社竹定商店

「黄金竹踏/漆黒竹踏」

かつての日本には、羽目を外すことを積極的に楽しんでいた時代がありました。一方、インターネットが普及した昨今においては、世間の声や常識に縛られ、自由さを感じられるモノゴトが少なくなってきたように感じます。そこで私達は、自由を謳歌したバブル時代をテーマに、ありえないほど贅を尽くした竹踏み「黄金竹踏」「漆黒竹踏」を開発しました。史上最高級の竹踏みで、足裏だけでなく五感全てであの頃の自由な空気を感じていただければ幸いです。

この竹踏には、竹の育成から加工まで一貫して行う竹定商店の熟練職人ならではの知恵と技が詰まっています。まず竹は最も丈夫とされる3〜4歳のものを使用します。竹の年齢を見分けるには熟練の「目」が必要になります。そして油抜きの工程においては、竹の含水率により仕上がりが大きく変わります。長年の感覚でベストなタイミングで油抜きを行うことで、綺麗な光沢のある白竹に生まれ変わります。さらに染色の工程においては、秘伝の比率で染料を調合すること、染色時の温度管理を徹底することで、綺麗な染竹が仕上がります。

浅山織物株式会社

「思出織(おもいでおり)」

子育てって、すごく大変ですよね。毎日とにかく必死で過ごすうちに、気づいたら子供はどんどん成長していますよね。お父さん、お母さんに親子の時間を大切にしてほしい。子育てを楽しんでほしい。お子様には愛されていることを実感してほしい。そんな思いからアイデアが生まれました。

お子様が小さな間はパネルとしてお部屋に飾り、みんなで和やかな気持ちになっていただければと思います。将来お子様が大きくなられた時にはパネルをアルバムとしてプレゼントできるように工夫いたしました。ぜひ、お子様に贈っていただき、お父様お母様の愛情をお子様に感じていただけることを願っております。

現代では多くのものがデジタル化されてきていますが、大切な思い出や家族との時間は、あえて生地に織り込んでみてはいかがでしょうか。目で見て、触っていただき、生地の風合いや美しさも相まった温もりを感じていただくことができます。浅山織物が研究を重ね、試行錯誤して生まれた製法「真珠箔」。その真珠箔を、西陣織帯地の特徴の一つであり、高度な技術を要する引箔織で織り成します。自然界が生み出した、真珠箔の光沢をぜひご堪能いただければ嬉しいです。世界にたった一つの宝物をお届けいたします。

田中金彩工芸

「Bridging the Gap with Gold」

「足りない…」と感じていても、自分なりの落とし所を見つけては心に積もる諦め…。シンプルで良いけど… 使いやすいのはこれだけど… 見慣れているものだけれど… 作ってはみたけれど…。

でも、何かが足りない…。

私は「金彩」でそれらの「足りない…」を埋めていきたい。シンプルに少しの個性を、製品に新たな表現を、製造したが倉庫に眠っている商品、傷が原因で販売できない商品のリメイクを。「金彩」とは加飾技術であり、すでに存在するものにさえ新たな表現を与える可能性の一つです。

田中金彩工芸は開業から100年近い歴史を持つ老舗の「京友禅 金彩工芸」を営む工房です。加飾技術として特化した金彩技法は常に着物に上品な華やかさを与えてきました。金彩加工は絹以外の布、和紙や木材への加工が可能です。特に今回は普段使用している定着剤ではなく、木材用に独自の定着剤を開発、それを使用して加工を施してあります。まるで木材に刺繍のような立体感を演出するこの技法は、新たな表現方法の一つだと考えています。

お問い合わせ

商工労働観光部染織・工芸課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4870

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