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京都府いじめ調査委員会調査報告書の概要等について

京都府いじめ調査委員会調査報告書の概要等について

令和2年度「京都府いじめ調査委員会」(以下「調査委員会」という)において「再調査」を実施した調査結果報告書(令和2年3月8日付け)の概要です。

本件に関しましては、いじめを受けていた生徒本人は、既に学校を卒業され新たな環境で生活を送られており、公表による心理的負担を軽減するため、学校種を含め個人情報等の公表は差し控えさせていただきます。

 

1.事案の経緯及び概要

平成29年10月に公立学校に通っていた女子生徒が、教室内に突然入ってきた別の女子生徒に腕を捕まれ、連れ出したこと(以下、本件行為という。)により、怪我を負ったとして、保護者等が学校及び府教育委員会にいじめを訴えていた。令和元年度から第三者による学校調査(以下、学校調査という。)が行われたが、生徒本人への聞き取りが行われなかった上、いじめが認められなかったこと等から、本件生徒側が当該調査結果を不服として、府に再調査を求め、調査委員会で再調査を決定した。

 

京都府いじめ委員会委員名簿(再調査分)

氏名 所属等 備考
片山紀子 京都教育大学大学院教授 令和2年9月29日付け新任
小松琢 弁護士(弁護士法人こまつ総合法律事務所)  
菅佐和子 臨床心理士(京都大学名誉教授)  
内藤みちよ 臨床心理士・精神保健福祉士・公認心理師 令和2年9月29日付け新任
原清治 佛教大学教授 委員長
野澤健 弁護士(洛新法律事務所) 臨時委員
宮光宗司 弁護士(洛友法律事務所) 臨時委員

五十音順。現職欄の記載は、本報告書提出時点のものである。

伊藤悦子委員(京都教育大学教授)及び友久久雄委員(精神科医〔龍谷大学・京都教育大学名誉教授〕)は、任期満了により令和2年9月28日付けで当委員会委員を退任した。

 

2.調査委員会(再調査)での調査結果概要

(1)令和2年7月~令和3年3月まで計7回の調査委員会を開催し、関係者等のヒアリング、資料調査等を行い、いじめ行為の認定・学校対応等について協議し、学校及び教育委員会に対する提言をまとめた。

ア.本件行為のいじめの該当性

被害生徒への聞き取りにより、本件行為により、心身に苦痛を感じていたことから、法第2条第1項に定める「いじめ」に該当すると言える。

イ.重大事態への該当性

本件行為により被害生徒の「生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある」と認めることはできないし、また、「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある」と認めることもできないことから、本件行為は法第28条第1項第1号及び同項第2号に定める「重大事態」に該当するとまではいうことはできない。

もっとも、本件行為が直接的に「重大事態」とまではいえないとしても、被害生徒から警察へ被害届が出されたことから、「いじめ」の判断を警察に期待するなど当時の学校のいじめへの理解の不足や教育委員会の学校対応状況の把握遅れ等により、本件行為から学校調査委員会の開始に約1年9か月もの期間が経過しており、漫然と事態を放置することは、ケアを必要とする被害生徒を放置し、二次的被害を生じさせる危険性がある。かかる対応は、事態をさらに深刻化させ、重大事態の発生にも繋がりかねない上、当事者の学校や行政に対する不信感を増幅させ、事態の解決を一層困難にするものであり、不適切であったといわざるを得ない。

 

(2)調査委員会から学校への提言

ア.学校内部における「いじめ」問題に対する取組みの整備

(ア)校長を含む管理職及び各教諭らの「いじめ」に対する認識を深める研修の強化

(イ)組織として各自の役割分担を定め、管理職が主導して詳細に対応方法を検討し、各教諭に共有すること

(ウ)学校内におけるいじめ対策委員会議論が充実による問題解決の促進

イ.外部専門家との連携

(ア)「いじめ」問題の対応にあたっては、組織内部の関係者のみで対応を検討するのではなく、スクールカウンセラーの活用し、外部専門家の助言を積極的に受けることが重要である

(イ)スクールロイヤー制度の周知を図り、その制度の導入と現場の教諭による積極的な活用を促したうえで、現場の学校及び教員としても、「いじめ」問題が生じた際には、ためらいなくスクールロイヤーに相談するという意識を持つことが必要

 

(3)調査委員会から京都府教育委員会への提言

ア.手順の明確化とルール化

学校を超えて教育委員会に「いじめ」問題が発生した旨を直接連絡された場合に、いかなる手順で調査が行われるのか、各関係機関はどのような役割を果たすのかを明確に定め、被害生徒とその保護者にその理解を求めることとし、本件を契機に、組織全体における情報共有、定期的なフィードバックの方法などについての具体的なルールを確認しておくことが望まれる。

イ.記録の作成と保存

対応状況を記録し、保管することは、事後的な検証に資することはもちろん、担当者自身が統一した方針を持って継続的に対応すること等につながり、組織全体における情報共有や定期的なフィードバックの前提として、どのような記録を作成して、保管するのかという点についても確認をしておくことが望まれる。

ウ.スクールカウンセラーとスクールロイヤーの整備及び周知

「いじめ」問題に適切に対応するためには、行政組織としても、スクールカウンセラーとスクールロイヤーの配置を促進し、その存在と活用の意義や方法を直接学校現場に伝えていくなど、今後の積用方策を工夫していくことが望まれる。

以上

(参考)

○京都府いじめ調査委員会調査報告書(令和3年3月9日付け

○上記報告書に対する所見(令和3年6月9日付け