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京都府住宅審議会基本政策部会(第5回)開催結果

1 日時

令和3年2月1日(月曜日)午後3時から5時まで

2 場所

ZoomによるWeb会議

3 出席者

委員 : 9名 うち代理出席1名(欠席者なし)

傍聴者 : なし

報道関係者 : 1名

その他 : 事務局

4 議事概要

(1) [報告事項] ア 新たな住生活基本計画(全国計画)案の概要について

事務局から、資料1により説明

(2) [報告事項] イ 前回の部会における委員御意見等について

事務局から、資料2、3により説明

(3) [審議事項] ア これまでの御意見を踏まえた施策の方向性について

事務局から、資料4により説明 

(4) [審議事項] イ 住宅政策のあり方について(「地球環境・エネルギー問題」及び「WITHコロナ・POSTコロナ社会への対応」の視点から)

 事務局から、資料5~資料7により説明

 

<議事について> 

  • 資料2及び資料3についての主な質問・意見

・ 資料2の「災害対策等の推進」(p.5)のNo.16について、宅建取引業者に義務付けている特定災害危険情報の把握の対象には、大規模盛土造成地は含まれていないとの説明であったが、現在のハザードマップでは、相当に大規模な盛土でない限り地図には表現されず、地震の震度にも影響のない形で計算されるが、実際には、京都府各地で、特に強度の高い降雨の際、盛土の上や直下に立地している建物に被害が出ている。すぐに制度化することは難しいと思うが、少なくとも何らかの方法で情報として把握するような取組が不可欠ではないか。

・ 資料3の「1 高齢者世帯の住宅・居住環境に関する不満(京都府)」(p.7)に示された「延焼のしにくさ」に対する不満率について、木造住宅密集地の次にニュータウンで2番目に高くなっている。イメージとしては戸建住宅が整然と並んでいる地域であり、それにも関わらず「その他の市街地」よりも「延焼のしにくさ」に対する不満率が高いのは何か理由があるのか、ニュータウンの定義を含めて補足いただきたい。
→ ニュータウンの定義は特にされていない。なお、サンプル数が11戸と非常に少ないことから、不満率が極端に高く表れてしまっていることが考えられる。

・ 資料3の「3 最近の災害による住家被害状況」中、「平成30年大阪北部地震による被害」(p.10)について、表中に床上浸水・床下浸水の被害が各3棟とある。これは地震に伴ってどのような事象が生じたものか。
→ データ自体は、2019年8月20日現在における消防庁の報道資料を引用しており、詳細までは不明な部分があるが、大東市及び高槻市において水道管破裂による浸水が生じており、これがカウントされているものと推測される。

・ 統計調査のサンプル数の不足の問題は以前から非常に気になっている。国の調査が抽出調査であるため、特に細分化してクロス分析した場合、統計的に意味を成さないものがここでも表れている。悉皆調査や、各府県においてサンプル数を増加する追加調査の予算を確保していただけるとよい。統計結果が役に立たない状況が続いており、上記のことも含めて、今後検討いただきたい。
 

  • 資料4についての主な質問・意見

・ 災害対策(p.15)の「災害発生時における被災者の住まいに対する取組」について、応急的な住まいの提供に際しても、できるだけ既存ストックを活用して無駄を減らす考え方や、特に被災直後は感染症対策も非常に重要な視点となる。キーワードとして、既存ストックの活用や、感染症対策も考慮しながら、応急的な住まいを提供していくというニュアンスが出せるとよい。

・ 住情報・住教育(p.16)の「住教育に関しては、年齢や学年に応じ、住宅を『自らの身近な問題』として考える機会の提供という観点を重視」について、住宅は自らの問題であると同時に、地域の問題でもあることも教育の中で伝えられるとよい。自分だけの問題ではなく、自分が適切に対応しなければ地域に迷惑が掛かるという側面も大きいと思うので、「自らの身近な問題であり、かつ地域の問題でもある」というニュアンスが入れられるとよい。
 

  • 資料5から資料7についての主な質問・意見 
・ 資料6の「2 新型コロナ拡大による住宅に求める条件の変化(三大都市圏)」(p.20)について、「通風に優れた住宅」がコロナ禍の中で求められており、6番目には「省エネ性(冷暖房効率に優れた)住宅」が挙がっている。後者は、高断熱・高気密という、制度化され、一定の支援策がある項目である。通風と高断熱・高気密とは、性能としては相矛盾する側面もあるが、ニーズとして通風は今後重要になってくると思っており、何らかの形で通風性能に関してインセンティブを付与することや、公営住宅等においても通風性能のあるものを提供することへのニーズが高まっていると思う。さらに、換気性能については建築基準法に規定があるが、通風についてはあまり定められていない部分があると思うので、そのあたりも検討項目に入れて、方針が出していけるとよい。
・ 現状、通風に関しての基準がないことについては、例えば、窓の位置関係や通風経路の確保、更に上下階の風の流れやすさ等をもう少し具体的に書けば解決できると考えるが、アンケートの結果として通風に関心が移ったことは非常に重要である。窓を開けて風が流れることと、断熱が図られていることとは異なる話であり、そのことが最近段々と理解されてきたのではないか。計画しない隙間風は望ましくないという話が理解されてきたのではないかと期待している。
・ 通風・換気には様々な関心が高まっているが、コロナとの関係で言えば複雑な問題がある。飲食店等における換気と住宅における換気とは異なる議論であり、住宅の場合には、そもそもウイルスを持ち込まない対策がまずは重要となる。その上で、通風・換気は、他の事項も含めて、本来、住宅にとって重要な事柄である。建築基準法ではシックハウス対策として24時間換気が規定され、ビル管理法ではCO2濃度が規定されている。シックハウス対策は家の中で発生する有害物質を排出することが目的であるのに対し、ウイルスの場合は外から持ち込まないことをまずは徹底する必要がある。部屋の空気をかき混ぜることでCO2濃度は薄くなるが、ウイルスの場合はかえって好ましくない。それぞれ対策が異なり、また、換気の意味合いも異なり、これらが混同して議論されないようにする必要がある。専門家の意見を踏まえるとともに、混乱が生じないような表現方法を考えつつ、何らかの記述をすることが重要である。

・ 資料6-2の「京都府WITHコロナ・POSTコロナ戦略(仮称) 中間とりまとめ」中、「◆安心・安全分野」(p.30)について、「施策展開の方向性」に記載のあるデジタル技術の進歩を取り入れていくことは重要である。同時に、新型コロナの影響により、集まって訓練することや、これまで当たり前にできていた地域と繋がってお互いに支え合うようなことが、なかなか難しくなっていることに苦慮している。そのようなこともあって、今防災訓練のオンライン化に取り組んでおり、何より、コロナで最も恐れているのはコミュニティを維持できなくなることである。現状の記載は、「先行的な新しいレベルの安心・安全」となっているが、できれば、デジタル技術を通して、コミュニティを維持したり、オンラインで訓練を行ったりというキーワードも入れていただけるとよい。

・ 資料6の「7 長期優良住宅建築等計画の認定戸数(京都府)」(p.23)について、国においても住生活基本計画の中で長期優良住宅を重要な指標として位置付けていると思うが、京都府において2016年以降、新築住宅着工戸数に占める認定住宅の割合が全国平均を上回っている要因が分かれば教えていただきたい。
 また、「8 新築住宅(300㎡以上)における省エネルギー基準適合率の推移(京都府)」(p.24)について、京都府の状況は全国平均と比較してよいのか、それとも悪いのかを教えていただきたい。
→ 府民環境部では、「エコマイスター」や「再エネコンシェルジュ」のように、売り手側に知識を持っていただき、府が認証することで、環境対策を進めるという考え方で取り組んでいる。分析した訳ではないが、遠因としてその成果が挙げられるのではないかと考えている。
 また、省エネルギー基準適合率については、全国状況について調査の上、次回お答えしたい。

・ 資料6-2の「京都府WITHコロナ・POSTコロナ戦略(仮称) 中間とりまとめ」中、「◆子育て分野」(p.33)について、テレワークだけでなく、時短勤務等も重要であり、企業側に意識の改革をしていただきたいと考えている。二地域居住、広い家への居住、テレワーク用の部屋の確保等の意向があり、前回、郊外の土地が売れ出しているという話をした。広い住宅は、都心では価格・家賃が高くなるので、郊外に求めることになるが、現実問題として、18時までに保育園への迎えが必要となれば、郊外に居住することは不可能になる。企業が時短勤務制度を設けること、あるいは、保育園の時間延長が必要であり、そうでなければ郊外に住むことが現実的に難しくなる。この考え方は「働く場が郊外にあれば、郊外居住が成立する。」との議論とも関連してくる。
・ 住生活を独立したものではなく、仕事・保育・住まいをセットとして捉えるとともに、より積極的には、住宅政策の方がイニシアティブをとって福祉・労働部局と調整するような仕組みをつくることが必要である。連携という言葉だけでは実効性を帯びないため、連携に向けた仕組みを提案できれば、より具体的に進んでいくと考えられる。

・ 京都府内の公営住宅や民間集合住宅を調査した際に感じた点として、子育て支援のための空間として共用スペースを活用できるように配慮していても、コロナの問題により、その空間を上手く使えていないという課題がある。空間が整備されていたとしても、居住者が上手く活用することは、必ずしも簡単ではない。サポートしていくような仕組み、例えば、集会所の使い方を巡って子供たちの活動を支える取組を、保護者以外の地域の方々も巻き込みながら構築していかなければ難しいと感じている。一方でコロナが懸念される今、感染症対策についても十分に理解していなければ難しい。先ほどの意見と同じく、住宅部局だけで支援の仕組みを構築することは難しく、児童問題を扱っている部局、具体的には各自治体における保育所関係者のマンパワーも活用することになるのかもしれない。そのような仕組みがつくっていけるようなサポートを検討していただけるとよいのではないか。

・ 資料4の子育て支援(p.13)に「親世帯との同居、近居の推進」との記載があり、これは、資料6-2の「京都府WITHコロナ・POSTコロナ戦略(仮称) 中間とりまとめ」中、「◆子育て分野」(p.33)に記載のとおり、コロナ禍において親同士の交流機会等が減少し、孤立感を感じている状況に鑑み、必要な施策として記載されたと思われるが、現在の方向性としては、地域の中の関係性を築くことや、夫の育児休業取得・テレワーク進展により、夫婦間で助け合う環境をつくることが重要である。親との同居・近居が実際にどれほどの効果があるのか、特に近居に係るデータは少ないと考えられ、施策としての効果検証が不十分なものになるのではないかと感じている。近居であればまだ可能性はあるが、同居は減少してきており、将来的な案として記載することにやや疑問を感じる。働き方の改革や、血の繋がっていない地域の者同士の交流を含めた孤立感の軽減が、今後考えていく方向になるのではないかと思う。
→ 府営住宅管理部会でコミュニティミックスについて議論をする中で、例えば、子育て世帯のために、高齢者世帯が同じ団地に居住することや、反対に、高齢者世帯の介護のために、子育て世帯が同じ団地に居住すること等ができないかを検討してきた。本年2月の募集から、府営住宅の一部の団地で優先入居に「近居」の募集枠を設ける予定であり、団地内に様々な年齢層の入居を促す上で有効な手段になるのではないかと考えている。御意見のとおり社会全体で子育て・介護を進めていくという中で、家族に頼りすぎるのは時流に合わない部分もあり、様々な方のニーズにマッチした形で考える必要がある。様々な取組をしながら有効な策を考えていくのが基本であると考えている。
・ 京都ソリデール事業のように、高齢者と学生の同居など、新たな時代を先取りしたものが案として出てくるのであればよいが、親との同居のように、旧来の内容を記載することには違和感を覚える。血の繋がりのない世代間の交流やコミュニティ形成であれば、新しさを感じる。
・ 以前の答申の際にも同様の議論があり、特に同居政策を子育て支援・高齢者支援の手段として考えることに対しては、慎重な姿勢をとるべきとの意見が多数を占めていた。本審議会では、委員御指摘のような観点でこれまでも議論されてきたと理解しており、現状の記述では、当該議論に合致していないように見えるという御指摘であると思うので、修正について事務局で議論をしていただければと思う。

・ コロナに関して、ウイルスを持ち込まないような玄関周りの性能の議論については、建築計画そのものの変化ではなく、新たに、多様な働き方ができるようなスペースを自宅内に如何につくっていくかが、今後の課題になる。ただし、数年後、また働き方の変化は、元に戻らない部分と戻ってしまう部分と両方があるので、継続的課題として施策をどこまで残していくかは、精査しなければならない。
・ 一方、省エネ・脱炭素化の問題は、継続する大きな問題として存在している。2050年までのカーボンニュートラルの実現が日本政府や国際世論によって掲げられており、その実現方策を論じなければならない段階になっている。例えば、東京都庁では庁舎自体がカーボンニュートラルになっているが京都府としてはどう捉えていくか、府営住宅でどこまでの範囲であれば対応できるのか等、そのターゲットをどう満たしていくかという議論はあってもよいと思っている。世の中がドラスティックに変わっていく中、これまでの施策で通用する部分と新たに施策を展開しなければならない部分の両面で攻めていかなければ、乗り遅れてしまうのではないかと考えている。ちなみに、2030年代半ばまでにすべての新車を電気自動車にするとの政府発表があった。戸建住宅であれば電気自動車の設置は可能だが、集合住宅のほとんどは電気を繋げることができず、最近は補助金もないため、世の中の変化に対して遅れがちなところも見受けられる。

・ 住宅について、再生可能エネルギーの観点から具体的な提案はないか。
・ 住宅に関しては、太陽光発電しかないが、再生可能エネルギーの普及率が上がらず手詰まり感があり、国としては洋上風力発電等に大きく舵を取りつつある。本年7月頃にエネルギー基本計画の改定に係るとりまとめが予定されており、火力発電は調整用電力として残していくこととなり、今後も家庭にもガスは供給され、手詰まり感のある状態が続いていくと思われる。
・ 京都でできる何らかの具体的な提言があるとよいが、難しい課題である。
・ 国の施策としては、CO2を回収・貯留(CCS)する方策を実用化しようとしている。京都はバイオマスプラントの導入を以前から積極的に行ってきているので、そのような開発要因はあると思う。

・ 空き家問題等においては厳しい目で見られることの多い伝統的な町屋も、空間構造としては重力換気、狭い坪庭を活かした温度調節等、様々な学ぶべき知恵はしっかりと残しておく必要がある。伝統的な住環境の持つ環境面の特性は強調してもよいのではないか。

・ コロナ禍でのリモートワークについて、各家庭でもリビング・ダイニングで仕事をしているケースが多いことが統計に表れている。また将来的にも自宅で各自が仕事や勉強をするため、相当のスペースが必要になってくるのではないかと思う。しかし、簡単にスペースは増やせないので、共用空間や空き家を活用できないかと考えている。身近な近所の空き家を活用できる仕組みができれば、地域の方々にとっても喜ばしく、交流の空間にもなるのではないか。
・ 御指摘の内容は既に全国的にも起きていることなので、是非何らかの形で最終的な提言に加えられるように、事務局で更に検討いただきたい。集合住宅における共用施設の活用と、戸建住宅を含めた地域の空き家の活用という御提案であったが、要するに住宅の周りにある空間資源を上手く活用して、テレワーク等に対応できる空間をつくるということであると理解した。

・ テレワークにより、複数の人が住戸内で仕事をする際に、日本の住宅における遮音性のなさが問題になっている。ダイニングキッチンを仕事場にするという考え方もあるが、遮音性を確保するため、寝室、押入、物置等を改修して活用する方法もあり、建築士会で事例収集している。住戸内の遮音性能はこれまであまり問題視されてこなかったが、ここにきて急に問題視され始めている状況があると思う。
 また、賃貸住宅をテレワーク用に改修した場合、原状回復ができるように設計・施工の現場では実際に工夫されている。これらのことも含めて、テレワークへの対応は、もう少しクローズアップしてもよいのではないかと思っている。

・ 資料4のコロナ対策(p.16)に「在宅勤務のスペースは住戸内のみではなく、住棟単位で確保していく考え方も必要」との記載があったが、例えば、府営住宅のうち、エレベーターのない5階建てで空き室となっている住戸を、地域に開放するような考え方はできるか。それとも、他の施設としての活用は困難との認識か。
→ 公営住宅は補助を受けて建設したものであるため、住宅以外の利用には目的外使用許可が必要になる。これまで住居以外での活用事例はなく、他府県とも協議しながらどのような可能性があるかを追求していく必要がある。御指摘のように、エレベーターのない4,5階の古い住戸では空室が目立つという問題があり、これをいかに有効活用していくかは課題である。

・ 環境対策を進めていく上で、スペックの高い設備等を確保できるのは、どうしても高額所得者になってしまう。所得格差が拡大する中で、低額所得者も利用可能な仕組みを増やせないかと考えており、京都府が施策として直接展開できるのは公営住宅になると思うので、今後、府営住宅等長寿命化計画に基づき、ストックの更新や大規模改修が行われていく中で、できるだけ環境面に配慮したものにすることが重要である。かつては集会場をドーム型で建設する等、環境モデル住宅に係る事業が様々な公営住宅で実施されたが、そこで得られた成果の検証が必要であり、現時点でも有効なものがあれば積極的に活用していくことが重要である。
・ 公営住宅の省エネ改修に関しては、実施した住戸のみ入居者の光熱費が安くなるという問題が生じるためなかなか難しいという話が以前にあった。地球環境・エネルギー問題への対応という大きな視点から、省エネルギーの推進が社会的にも重要であるという観点に立てばもう一度検討してもよいと考える。

・ 住宅の省エネの基本は高気密・高断熱であり、未だに断熱性能が不十分な住宅が数多く残されている。そのような住宅では、ヒートショックの被害を受けやすく、心疾患で亡くなる方が未だに多い状況である。健康問題も省エネの大きな柱として捉え、高気密・高断熱の住宅をどの程度増やしていくかについて検討が必要である。また、既存住宅に対する支援も重要であり、その改善に注力いただくことも基本事項である。
・ 省エネルギーだけでなく、健康被害の防止という観点を強調する中で施策を講じられたい。

 

5 配付資料

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