京都府住宅審議会基本政策部会(第11回)開催結果
1日時
令和7年10月24日(金曜日)午後3時から午後5まで
2場所
3出席者
委員:9名(欠席1名)
傍聴者:なし
報道関係者:なし
その他:事務局
4議事
(2)住宅政策のあり方について
【既存ストック・マンション・空き家】
(3)今後のスケジュール等について
- 次回開催の第12回基本政策部会のスケジュール等について事務局から説明。
<議事について>
資料1、2及び3に関する主な質問・意見
資料4及び5に関する主な質問・意見
【既存ストック】
- 特に北部地域においては、既存住宅が増えている中で、新築は減り、建売が増えている一方、空き家も増えているという状況で、既存ストックの空き家が中古住宅として活かされず、若い世代が中古住宅を取得していない可能性があると見受けられるが、その背景は何か。北部の若い世代にとっては、そもそも空き家や中古住宅を購入するニーズが低いのか、もしくは中古住宅の質が良くないので建売住宅のニーズが高いのか、その辺りの関係性が確認できると、空き家を中古住宅としてうまく利用するための仕組みがイメージでき、北部地域でのニーズに応えられる可能性もあるかと思う。
→空き家と中古住宅の流通の関係性は把握していないが、北部においては空き家やこれから空き家になりそうな住宅を既存ストックとして活用・流通させる仕組みが構築できていないと思われる。京都市では、中古住宅としての流通に向けて空き家になる前の段階からアプローチするような施策を打ち出している一方で、舞鶴市や宮津市における空き家の中にはリゾートマンションもあり、地域ごとに状況が異なると考える。
→空き家状態になっていることが把握されないまま長期間放置され、いざ中古住宅として活用しようとしても多くの初期コストがかかってしまう状態から活用に繋がらないといったケースもあるのではないかと拝察する。こういったいくつかの原因を整理すると施策の検討に役立つかと思う。
→宮津市、京丹後市、与謝野町などの北部地域の不動産事業者によると、旧市街地では、築数百年のも古く老朽化した住宅が圧倒的に多く、若者はこれらの住宅よりも造成地の新設住宅を好む傾向にあり、古い住宅に対してあまり魅力を感じていないように見受けられる。
→北部地域の伝統的建造物群保存地区では、若者が新規にお店を開いている例もある。若者が参入しやすい雰囲気づくりなどの工夫ができれば、既存ストックを活かすことができるのではないか。
- 補助制度を活用し耐震診断を受けた後に実際に改修につながった例はどの程度あるか。
→所管課に確認し、次回以降お示しできるものがあればお示しする。
- 高齢者向け住宅が増加している一方で、「将来的に足りなくなる」と説明されたのはどういうことか。
→住生活基本計画(全国計画)において、2030年時点でのサービス付き等の高齢者向け住宅の具体的な供給目標戸数が設定されている。高齢者数の推計と照らし合わせると、2022年時点での戸数から5万戸/年のペースで供給していく必要があり、現在の供給ペースを鑑みると供給目標戸数の整備は困難であると推測される。そのため、そのような表現で説明した次第である。
→高齢者向け住宅の供給状況という面では適正な分析かと思う。一方で、高齢者にとっては、住宅改修や福祉サービスの活用により現在居住している住宅に住み続けることが可能な場合もある。高齢者向け住宅を整備し供給しても、今後、人口が減少していく中で確実に高齢者も減少していくので、現在の住まいで対応可能な部分がないかも含め検討が必要ではないか。
- バリアフリーについては、全世代にとって意味があるもので福祉分野に任せきりにせず、住宅施策としても取組を推進することが重要ではないか。
- 高齢者は、少し手を加えれば住み続けられる可能性があっても、ある時点で自宅に住み続けることを諦めることが多く、高齢者施設等へ移り、すぐに自宅を処分できないからといった理由で、放置され続けた住宅が最終的に管理不全空き家になってしまうこともある。バリアフリー化を含め、定期的に住宅のメンテナンスを行う意識をもっていただけるような情報提供等を市町村と連携して行っていただくのが良いのではないか。
- 耐震化については、課題も多いと認識している。本格的に耐震化を実施しようとすると高額な費用がかかる一方、日常の利便性向上に直結しないため、取り組みが進みにくい。古い住宅に住む高齢者への対応が重要であり、命を守るための最低限の耐震化を位置づけ、その技術や選択肢があることを周知する必要があるのではないか。また、建替えでの耐震化率向上には限界があるので、今後は重要な箇所へピンポイントで補助を行う必要がある。特に人口減少や高齢化が進む地域では、住まい方全体を含めたトータルな相談体制を整備し、自宅で安全に住み続けられるようサポートすることが重要である。
- 耐震化については、どのようにピンポイントで支援していくか検討する必要があるのではないか。現状では相談体制があっても、高額な工事費用への懸念から実際の工事(補助金利用)に至らないケースが多いと見受けられる。そのため、少額でも少し暮らしやすくなるような小規模な改善に対する補助制度を検討するとよいのではないか。
- 耐震化を図らなくても、バリアフリー化を促進することで高齢者が暮らしやすい環境を整備できることを高経年住宅の整備とセットで高齢者に認知していただくことができればよいのではないか。
- 就寝中に災害が発生すると避難が非常に困難になることがあるため、少なくとも寝室やベッド周りだけでも、落下物などで潰されないようにする技術も出てきているので、そういった小規模な耐震化も補助金の対象メニューに加えるなどの工夫が必要ではないか。
【マンション】
- 資料5「13.【京都市】マンションの再生の円滑化の推進」の「おせっかい型支援」の実施実績や効果について教えてほしい。長く住んでいると、居住者だけでは課題が見えなくなっている可能性もあり、逆に外からおせっかいだが、相談支援を進めていくのはとても良い取組みだと思う。
→(実績について口答説明)国土交通省からも一定の評価を得ている事業である。
→おせっかい型支援の取組による効果をどのように捉えているか、分かれば教えてほしい。各地域の実情を踏まえてアレンジした上でこういった行政からの支援を行うことによって管理不全なマンションの抑制には効果的であると考える。
- 京都市のマンション管理の支援のお手伝いをしていることもあり、補足する。京都市の取組みの素晴らしいポイントの一つは、管理不全の兆候が認められるマンションの中から、要支援等を判断して抽出し、支援すべきマンションを特定して支援するという仕組みを持っていること。もう一つのポイントは、マンションによって状況が異なるが、おせっかい型支援をする過程で各マンションに合った支援のあり方を見つけて、実績をあげていることだと考える。管理組合が発足できていない状態から管理計画の認定にまで至ったケースもある。
- マンションの適正な管理にあたり、各市においては現状把握とその後のサポートが重要であり、市がそれらを実施する際のサポートをするのが府の役割と考える。マンション管理適正化推進計画の作成にあたり、府内自治体のマンション調査の実施状況について分かる範囲で教えてほしい。
- 大阪府内の自治体では、マンション管理を支援するNPO団体と連携して情報共有等をしているところもある。そういった民間団体との連携についても検討できたら良いのではないか。
- 専門的な修繕については大規模修繕業者でもノウハウがなく対応できない場合がある。そのため、府としては具体的な修繕事例や工法を紹介したり、リノベーションや修繕・建替えの支援に関する専門的な相談窓口を設置したりする必要があるのではないか。マンションの修繕・建替えの支援については、東京都などの先進事例を参考に、マンションの住民等への情報発信を実施していくのが良いのではないか。
- 都市再生機構では、UR賃貸住宅の管理に日々取り組む中で、ホームページにおいてUR賃貸住宅の長寿命化計画の公表や改修技術の公開を実施している。府においても公営住宅の営繕部門が蓄積してきた修繕技術や工事受注業者の情報を公開できるようにする等の取組をされるのもよいのではないか。
- 八幡市では、築40年超のマンションが全体の半数近くを占めており、他市町村と比較して先行的に問題が発生している可能性があり、また、管理組合登録制度という他市町村では実施していない取組をしている。都市再生機構の賃貸住宅もあり、一般的な民間賃貸住宅と事情が異なる部分はあると思われるが、マンション管理における一つのヒントになるのではないか。
- マンションの管理適正化について、今後は行政による支援に加え、民間の力、特に不動産事業者を含めて連携を図り、さらに「流通促進」による市場の力で管理の適正化を促す仕組みづくりが重要と考える。重要な課題として、マンションの「管理情報」が消費者(購入者)に届いていない点が挙げられる。そういったところの情報開示もとても重要なテーマであると思う。府はマンション管理の関係団体だけでなく不動産事業者とも連携を強化し、情報開示を促進するなど、ストックが適正に評価され流通する環境づくりをサポートすることが重要ではないか。
【空き家】
- 北部地域や中山間地域において、若い人たちに空き家を活用してもらうという施策は、とても重要であると認識している。移住施策について移住促進特別区域への移住に関する補助制度等の支援実績と効果について教えてほしい。
→実績や効果については所管課に確認し、次回お示しできるものがあればお示しする。補足ではあるが、空き家の活用による移住促進について条例を定めて事業展開しているのは全国でも京都府のみであり、評価の声もいただいている事業となっている。
- 移住施策では空き家活用、就労支援、起業支援及び子育て支援等を連携させたトータルな支援が必要であると考えるが、そうした連携による支援により成果が出ている事例があれば教えてほしい。
→空き家の活用による移住促進にあたっては、子育て支援や就労支援との連携が重要であると認識している。こちらの事例等についても、次回お示しできるものがあればお示しする。
- 地域特性に応じた空き家対策が重要と考えている。同じ市内であっても空き家になっている理由は様々であり、サポートすべき部分とペナルティをかける部分を区別した対策が求められる。府は、府全体を見渡す立場から、各市町村に的確なアドバイスをしていただければありがたい。
【その他】
- 2020年から2023年にかけて、簡易改修の補助額が1/10に、耐震改修の補助額が1/3強にまで減少しているが、この減少についてどう分析しているか伺いたい。2022年、2023年に京都市が関連制度を停止していた影響ではないかと推測しているが、補足説明してほしい。
→2022年、2023年は京都市が財政難の時期にあり補助事業を停止していたため、補助件数が大幅に減少したと京都府担当部局より聞いている。令和6年には補助事業を再開しているが、実績については確認できていない状況である。
→京都府全体の補助件数に占める京都市の補助件数の割合が高い。耐震改修は厳しいが簡易改修でサポートする仕組みや空き家の状態や特殊性を考慮した耐震化の最低限のメニューを検討していく上で、京都市以外の市町村の状況を正確に把握するために、その他の統計情報も含め、京都市と京都市以外に分離したデータでの分析が必要ではないか。
- 今後の住生活について検討するにあたり、外国人居住者は重要な要素の一つとなると考える。労働者不足や空き家活用といった課題解決にも関連する可能性があるため、今後もデータ収集をしていただくとよいのではないか。
→外国人居住者に関しては大きなテーマになっていると認識している。第8回、第9回基本政策部会でお示しさせていただいているが、引き続きデータを収集していく所存である。
→前回部会で、国籍別の外国人居住者割合の推移や外国人労働者割合に関するスライドを提示させていただいた。今後も、外国人に関するデータを総合的にお示しできるようデータ収集および分析を進めていく所存である。
5配布資料