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第8回教員の評価に関する調査研究会議の議事要旨

1 開催日時

平成16年2月17日(火曜日)  午前10時から12時まで

2 場所

京都市上京区東堀川下長者町 ルビノ京都堀川 3階 アムール

3 出席者

【委員】
山口座長、塩見副座長、大嶋委員、岡田委員、置田委員、島津委員、谷口委員、中桐委員、(0名欠席)

【事務局】京都府教育委員会池田管理部長、山口総合教育センター次長、中島教職員課長、高畑教職員課参事ほか

【傍聴者】5名

4 議題

(1)教員の評価に関する調査研究について

5 審議内容(結果及び主な意見)

1 第1次調査研究報告(中間まとめ)提出の報告

2 第1次調査研究報告(中間まとめ)に対する意見募集ついて

(山口総合教育センター次長)
主体:教員の評価に関する調査研究会議
期間:平成16年1月15日~29日
方法:ホームページに掲載し、メール・FAX・郵送で受付
結果:236件(延べ249人)

3 意見に対する座長整理

(山口座長)

(1)総論

意見の内訳は、一般の方から55、評価対象となる現職教職員から181、合わせて236である。7割程度の意見がこの教職員評価制度に賛成で、3割程度の意見が反対であった。反対意見のなかには第1次調査研究報告(中間まとめ)を撤回してもらいたいというものもあった。意見内容は、これまでこの研究会議で聴取した教育関係団体の意見とほぼ同じようなものである。教育関係団体の意見を受けとめながら、第1次調査研究報告(中間まとめ)を作成したのであり、今回の意見を踏まえて、その内容を書きかえる必要はないと考える。

(2) 主な批判的意見内容とそれに対する整理

  • 管理職の評価能力
    管理職の評価能力を疑問視する意見があったが、これは当然予想されたことであり、評価者に評価技術の向上を図ってもらうということに尽きる。もっとも管理職自身も被評価者の立場にあり、その評価能力も評価される構造になっている。いずれにしても、管理職に評価能力をつけるために研修を重ねていく必要がある。平成16年度、17年度の試行期間に評価者の評価能力を向上させるための研修や勉強をする機会を準備することが不可欠である。
  • 教職員の集団的な取組
    この評価制度が教職員間に格差を持ち込み、集団的な取り組みを困難にするという意見があったが、この教職員評価制度は、個々の教職員が自分の資質能力を最大限に発揮して、校長をリーダーとした組織的な教育活動をするためのものである。この評価制度の基本的な特色は、学校評価制度といわば車の両輪になっていることであり、学校の目標に向けて、一人一人の先生方がどういう役割を果たすべきかを自覚し、達成に向けてどう努力したか、それが自己の資質能力の向上にどうつながったかを評価する仕組みである。格差を持ち込むということではなく、教職員一人一人が学校の教育目標を自覚しながら、協力して学校全体の活性化を図っていく、学校教育目標の達成に向け、力を合わせて仕事をしていくという仕組みである。先生方の協力のあり方、つまり集団的な取り組みをどのように行えたかも評価の対象、評価の観点となっており、個々の先生方の力量形成と、協力体制による全体的な学校教育のレベルアップを一体的にとらえた制度である。
  • 教育活動と個人の評価
    教職員の教育活動は、集団として成り立っているものであって、集団としての評価はあっても個人の評価にはなじまないという意見があったが、組織としての教育活動のレベルアップを個々の教職員の資質能力の向上によって図ろうとするのが教職員評価制度であり、組織としての学校の一員としての役割を先生方に果たしていただくための制度である。
  • 人格を育てる
    教育の本質にかかわる意見であるが、人間の内面に影響を与える人格を育てる教育という仕事に対して、評価をつけることはなじまないということ、また、人格を育てるには、1年間で成果があらわれるものではないという意見があった。公教育としての府の教育方針が示され、それに沿って、それぞれの学校、それぞれの先生方がどう努力をしているかを評価するのがこの教職員評価制度である。子供が身につけるべきものを公教育として、きちんと身につけさせることができたかどうかは、当然、評価の対象にされるべきである。結果が満足のいくものでなかったとしても、それに対して努力した内容も評価するものであり、欠点をあばき立て、評価を落とそうとするものではない。先生方の前向きな努力を加点方式でプラス評価をするものであり、短期間であっても、1年間であっても、そういう努力や成果は評価可能と考える。
  • 勤務時間外の教育活動
    勤務時間内の教育活動のみを評価対象とし、例えば部活動のような勤務時間外の教育活動を評価の対象から外すべきであるという意見である。しかし、部活動やクラブ活動に対する児童生徒・府民のニーズもある。勤務時間外の学校管理下での教育活動については、実施しないからといってマイナス評価にするものではなく、むしろそういう分野で頑張っている先生方にプラス点を加算しようとするものである。
  • 教育条件の相違
    学校の困難さ、困難な学級では評価が低くなることを危惧するという意見があった。学校や学級による教育条件の相違をどう考えるかであるが、この教職員評価制度は、教職員の特性を見つける手段ともなるものであり、困難な学校や学級であることを踏まえ、どのように努力したか、困難な状況をどれだけ克服する能力を持てたかを評価するものである。困難な条件でもできること、やらなければならないことは何なのか、それに対してどう努力がなされたかが評価の中身となるのである。

4 協議

<委員の意見要旨>

  • 教職員評価制度が、集団を壊すとか、集団的な取り組みを困難にするといった意見があるが、確かにそういう面もあるのかもしれないが、これまではどうだったのかという、謙虚な反省も必要である。また、長期的視点で人格を育てるのが教育であり、1年間で結果を出せないという反対意見には、長い目で見ることも必要だが、それを現状に対する言い逃れに使うのはいかがなものかと考える。
    集団的な取組についても、学校の困難さとか困難な学級についても、この評価制度の中では、その加点主義のいい点を最大限生かせる点である。教育者集団として良い成果を上げる、周囲から高い評価を受けるということは、その集団の構成メンバーとしての評価を引き上げる要素にも当然なる。加点主義を実効性のあるものに使い、納得のいく評価をすれば良いと考える。
    意見のひとつに、学校評価の取組を通して、教訓を得たという意見があった。これまで教員が自分の感覚でこれが一番効果的であると考えていた指導が、保護者や児童の目から見ると決してそうではなかったり、これまでなら当然と考えていたことが、児童や保護者、地域の方々にとって必ずしもそうでなかったりした。その反対に悪い結果が出るであろうと予想していたことが良い結果としてあらわれたこともある。この意見は、1つの小学校に限ったことであるかもしれないが、外からの評価や意見の重要性のポイントをついている。この評価制度の中にも組み込まれているが、とりわけ両輪である学校評価の中に地域の声、保護者の声というものが強く反映するようなシステムを取り入れ、多くの意見を聞きくことが、この教職員評価に対する不信感を取り除く道になると考える。
  • 親の目から見て非常に頑張っている先生をきちんと評価する仕組みとしてほしいという意見があった。頑張っている先生方にはきちんと評価をし、本人も、周りの先生方にもそれが認知され、その先生の自信につながる仕組をつくることが非常に大事である。学校評価ともかかわるが、先生方の教育活動が外から評価されることによって教師としての仕事の新しい気づきがある。外から見れば違うこともあるということに先生が気づくことが非常に大事な意味を持つ。これがこの評価の大事なところだと思う。
  • 管理職の評価能力が疑問であるという意見が幾つかあったが、この点は、民間でもどこでも評価には必ずついてまわるものであり、評価制度そのものを否定することにはならない。評価する管理職も被評価者であり、評価能力をアップするための研修もするのであるから、この評価制度を何年か行った後に、このような指摘が依然として出てこないように、運用すべきと考える。
    職場に格差を持ち込み、集団的な取組を困難にするという意見もあった。教育関係団体から意見を聞いたときにも、先生同士の協力とか情報の共有化、相互理解に教職員評価制度が障害になるというような意見もあったが、教職員間での相互理解、情報収集、共有化について学校運営に生かせたかも評価の対象となるので、必ずしも格差を持ち込み、集団的な取組を困難にし、個々の教職員同士で情報を隠し合ったり反目し合うことには決してならない。情報収集、共有化を図る相互協力、理解が評価の項目になることを十分に理解せずに出された意見と考える。
    学校の困難さ、困難な学級で評価が低くなることを危惧するという意見については、その状況に応じた評価の観点により、必ずしも、そのような状況にいる教職員の評価が低くなるということにはならない。この教職員評価制度でこの危惧や懸念は特に考えられない。
  • 評価は、評価するものとされるものとの信頼関係がないところで行われると、格差を持ち込むことになり、かえって集団としての取組を難しくすることにもなる。評価制度の導入に当たっては、評価者と被評価者の信頼関係をどうつくるか、人間関係のあり方が非常に大事なポイントになる。いくら客観的に公平で妥当性のある評価の例を開発しても、人間関係における不信感があれば、それが生きてこないことになる。信頼関係のある中で、より客観性、公平性、妥当性のある仕組みを開発するスタートと考えるべきである。完全な評価というのは、難しいものであり、信頼関係のある人間関係の中で、より良い評価の仕方を目指して、お互いが努力することが大事である。
  • 管理職の評価能力に関して教職員評価制度に反対する意見が多く見受けられる。これは、管理職と一般教員との日ごろの意思疎通を図ることが非常に大事であるということに他ならない。
    学校の困難さ、困難な学級で評価が低くなることを危惧するという意見があったが、授業がなかなか成立し得ないような学校の困難さの中で、一人一人の教師が必死の思いで頑張っているケースと、周辺部のこれこそ教育を行う環境だなといえるような小規模の学校で一人一人の子供が生きるような授業をつくり出せる場合との評価の違いを危惧するのは、一般教員というより、管理職そのものが感じる思いである。それを克服するためには、管理職の研修の中身をどれだけ具体的につくるかが大事であり、管理職の不安や、管理職と一般教職員との関係もそのことにより解消できると考える。自己目標を設定し、その目標について真摯な話し合いを管理職と一般教職員がする中で、従来にはなかった深い信頼関係を構築できたという自己評価の先行的な取組をしている学校の教員の意見があった。今後試行等を行う中で、研修制度の充実や教職員評価制度の評価にかかわる手立ての検討をさらに行うことが非常に重要である。
  • 目標準拠評価に関わってのトラブルが学期に一、二ある。そのトラブルの根を探ると、まず教師がきちんとした評価計画を持っていたか、評価の材料をできるだけ客観性を増すために、多く持っていたか、そして、その評価の内容を子供たちに、保護者へも周知ができれは一層良いが、十分周知していたかという問題に突き当たることが多い。教職員評価に関してもこの評価計画や評価の材料、評価の内容が大切である。
    教職員は、評価されることに余り慣れていない。自分の分掌こそわかるが、その分掌を外れ、大局的な部分に立つとよくわからない先生も多い。実に評価というものに不慣れな者ばかりである。評価される先生方にすると、「僕の授業の何が先生(管理職)にわかるか」、「出張で留守ばかりじゃないか」、「いつ私の授業を見てくれたのか」と思う者もいるはずである。評価者としては、年間を通した評価計画を持ち、評価の協力者をつくる必要がある。協力者と連携し、先生の頑張りを見つけるために、どういう材料を持って先生方を評価するかということについても、周知をする必要があると考える。
    校長としては、教頭や教務主任と常によく話し合いながら、一人一人の先生方の良さを見つけ、評価にかえていくことも必要と考える。評価者の研修、評価者と被評価者の日頃の信頼関係がとても大事である。
  • この評価制度の一つの特色は、評価の協力者をきちんと位置づけたことである。それだけに協力者の役割については、校種や学校の大きさ、いろいろな事情により変化するが、今後、研究すべき部分と考える。
  • この評価制度は、最終的には教員の資質能力の向上、育成に主眼を置いている。育成の観点であるからこそ、学校の困難さ、困難な学級、条件の違いにより評価が低くなることもあり得る。しかし、単に評価するのではなく、評価者と被評価者の信頼関係の醸成から、育成する観点につなげるべきである。例えば、生徒指導が若干弱いなら、思い切って、ここで生徒指導を勉強しませんかと生徒指導の担当とする。最初の年は、評価は悪くなるというケースは十分考えられる。しかし、実情をつなげた上での育成への観点、研修への観点を持つことが必要なのである。学校評価と教職員の評価をリンクさせながら、若手を育成し、先生方を育てていくことが管理職の務めと考える。
  • この教職員の評価制度は、評価者と被評価者の関係によって、成立するか、しないかが大きく左右される。そのための評価者の研修も必要である。また、評価者と被評価者の間の人間関係については、評価者が丁寧に日頃の被評価者の状況を把握する必要があり、評価者としての責任が芽生えてくると考える。
    また、学校の困難さによって評価が異なるという問題については、それぞれの地域によって、学校の困難さというのは異なり、課題も違う。そういう地域、課題の中で、どう学校を維持していくのかということに関して、それぞれの学校の目標が立てられていくのであり、その目標に向かって全教職員が、どう力を合わせ、この課題解決に向けて努力するかが評価である。困難さのある学校ほど教職員の努力する姿が明らかに見えてくるのであり、評価しやすいのではないかと考える。
    平成17年度の試行を含め、回を重ね、産みの苦しさも若干あるが、この制度を成熟させるべきである。
  • この評価制度は、それぞれの学校がそれぞれの学校の課題を明確にしながら、そこでどういう目標を立て、一人一人がどういう役割を持ちながら、どう取り組んでいくのかをはっきりさせ、そのことを一人一人の先生方がきちんと意識し、自覚することが取組の基本である。新しい制度を持ち込むことが目的ではなく、これを契機に学校の教育活動全体を改善していくことが大事なのである。
  • 苦情処理の仕組みについての意見が余りなかったような印象を受けた。苦情処理は、ある意味ではセーフティーネットであり、評価する者、される者の問題を円滑にするための制度としてこの教職員評価制度に入れたが、この点については余り意識されていないようであり、ちょっとがっかりした面もある。
  • 苦情処理については、この制度を試行する中でも研究していくべき点である。
  • 教職員からの意見は、基本は共通に理解し、ともに取り組んでいこうというのがベースなっている。処遇という問題については、部分試行、全面的な試行、全面実施という経過の中で、この評価の実践をどれだけ現場的に検証していくかを問われるものであると考える。
  • 苦情処理機関については、できれば置かなくてすむようにしてもらいたいが、処遇等と結びつく可能性があると予想されれば、これからの課題である。

 

236件の意見は、教職員評価制度の試行、運用において十分生かすべきであるということ。これらの意見により基本的に中間まとめの文書を修正するというところまではいかないこと。中間まとめ18ページ以降に、教員の評価に関する調査研究会議協力者の検討した具体的な様式等を置き換えて、(17ページまでは、18ページ以降を置き換えたことによる微修正を行い)教員の評価に関する調査研究会議第1次調査研究報告とすることで協議が整った。

5 今後の日程についての説明

  • 平成16年度
    第1次調査研究報告を踏まえ、教員の評価に関する調査研究会議協力者の所属する学校から何校かを選定し、教職員評価制度を部分試行。
    その試行の状況について検証し、必要に応じて修正。
    教員の評価に関する調査研究会議開催の時期は、年度末、又は年末、2回程度。
    部分試行の結果を踏まえ、第2次の調査研究報告を作成。
  • 平成17年度
    第2次調査研究報告を踏まえ、教職員評価制度を府内全校で試行。
    その試行の状況について検証し、必要に応じて修正。
    教員の評価に関する調査研究会議開催の時期は、年度末、又は年末、2回程度。
    全校試行の結果を踏まえ、第3次の調査研究報告を作成。
  • 平成18年度
    第3次調査研究報告を踏まえ、教職員評価制度を本格実施

6 管理部長あいさつ

委員の皆様には、一年間、8回にわたり、御多忙中のところを熱心に御審議いただき、心より感謝を申し上げる。
教育委員会としては、来年度の一部の学校での試行、また研修等の実施に向け、万全の準備を整えてまいる所存である。
今後、試行、研修を行う中で浮かび上がった課題を十分に吟味、咀嚼をし、フィードバックもさせていただこうと考えている。
最終的には、教職員の資質向上を図り、各自の力量を最大限に発揮できるように、そして児童生徒、また保護者、府民の関心や期待にこたえられる学校教育を展開するための支えとなるような評価制度を目指してまいりたいと考える。
来年度も含め、今後ともお世話になるが、どうぞよろしくお願いを申し上げたい。

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