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第9回教員の評価に関する調査研究会議の議事要旨

1 開催日時

平成16年12月27日(月曜日)  午後2時から4時まで

2 場所

京都市上京区東堀川下長者町 ルビノ京都堀川 2階 加茂

3 出席者

【委員】
調査研究会議:山口座長、塩見副座長、大嶋委員、置田委員、笹井委員、島津委員、谷口委員、中桐委員、前川委員、宮崎委員、八尾坂委員(0名欠席)

試行状況報告者:
長岡京市立長岡第七小学校 村上校長
城陽市立西城陽中学校 西山校長
府立亀岡高等学校 山内校長

学校評価と教職員評価制度に関する研究発表者:
総合教育センター 松元研究主事兼指導主事

【事務局】京都府教育委員会池田管理部長、田代総合教育センター所長、中島教職員課長、吉田教職員課参事ほか

【傍聴者】5名

4 議題

(1)教員の評価に関する調査研究について

5 審議内容(結果及び主な意見)

(1)管理部長あいさつ

今年度は府内35校の協力を得て第1次調査研究報告に基づき教職員評価のシステムを実践的に検討願っている。35校で約1,000名の教職員が研究に参加している。2学期が終了したばかりで、教職員評価システムの1年間全体の試行は終了していないが、本日の3校からの試行状況の発表を参考に、試行状況を検証願いたい。検証の結果を反映したシステムにより来年度は試行を府内全校に広めたいと考えている。

(2)座長、副座長の再任

座長に山口満委員(筑波大学名誉教授)を、副座長に塩見均委員(府立桃山高等学校長)を再任した。

(3)協議

本年度の会議スケジュールについて以下のとおり協議が整った。

  • 今回と次回の会議で試行状況を検証し、制度の修正すべき部分や修正内容について審議する。
  • 本年度の審議のまとめとしての調査研究報告は、第1次調査研究報告の修正版とし、来年度の全校試行に活用願う。
  • 第2次調査研究報告は、本年度の試行の1年間のサイクルが終わる頃、平成17年4月以降に再度検証し、協議する。

(4)試行状況報告<要旨>

ア 長岡京市立長岡第七小学校

  • 教職員評価制度を教職員を評価するためだけではなく、学校の教育目標の具現化を図るための取組と考えた。教職員が目標の達成に向け、評価、点検、改善を行うという作業に慣れるよう、校務分掌、学級経営案を作成し、検討会を行うとともに作成した経営案を学期ごとに全教職員で総括した。それらの作業を通して、教職員の資質能力の向上、教育活動の充実、学校組織の活性化を一体的に図るための具体的方策を示す力を培った。
  • 教職員は学校経営方針を踏まえて自己の役割と達成目標を明らかにした自己申告書を提示しており、校長は学校経営方針を明確にし、教職員一人一人に学校経営方針を具体化するような自己目標であるかをチェックし、本人納得の上で修正を図った。
  • 20代の経験年数の短い教職員が多い学校であるため、日々の教職員に対する指導に多くの時間を充て、当初面談は1学期の最初と最後に10分程度の短時間で済ませた。併せて、教職員が自己の力量を知り、自己判断ができるように教職員間で学級経営案を検討する取組を実施した。
  • 教職員の職務遂行状況の把握については、毎週火曜日の管理職による授業参観と事後指導、毎学期の個々の教職員が作成した児童の学習評価基準、毎学期の学級経営案における長期、短期目標の進み具合、学校評価の保護者や学校評議員、児童からのアンケートによる学校経営課題の分析結果、夏休みに行う個別指導計画の発表会を通して行っている。
  • 中間面談としては年末のヒアリングと併せて教職員から職務遂行状況やその状況に対する自己評価の報告を受けた。
  • 子どもの学習評価のような評価の指標を「計画立案」「実践具体化」「総括改善案」「実践具体化」の4段階に分け作成した。評価の視点として「学習生活指導」「学級、学校経営」「共通」を策定するとともに、評価に参考とする資料の一覧も作成し、今後教職員に提示する予定である。指標や視点を作成し、被評価者と評価者間のズレを縮めたい。

 

イ 城陽市立西城陽中学校

  • 平成15年度は9月以降の毎月の職員会議で教職員評価制度により教職員の力が0.1ずつでも向上すれば学校全体として大きな力となり、それが子どもたちのためになるといったことなどを常に話しながら制度理解に努めた。また、教職員による校長評価も行った。
  • 平成16年度には4月に学校経営の方針等を説明し、5月に教職員評価制度の実施要綱等を配布するとともに試行実施に係る説明を行った。
  • 教育活動に関わる教育計画については、前年度の3月に方向性を出し、新年度に各校務分掌が立案するというシステムができている。しかし、異動により文書として残されたものについては引き継がれるが、アイデアや企画として教職員が温めているものや校長が提示する経営方針については前任者とのズレが生じることもあると思われる。
  • 自己目標についてはスローガン的表現が多い傾向にあったが教職員の意欲を損なわないように提出時の修正は行わず、当初面談時に実際に行っている教育実践を記入するよう指導した。
  • 教職員の職務遂行状況の把握については、従来からの取組を活用して行っている。教職員の状況把握に努めることは校長として不可欠なことでもあり、また、試行1年目でもあるので評価補助者を活用した職務遂行状況の把握は行っていない。
  • 中間面談は実施していないが、コミュニケーションや指導助言は日常的に行っている。
  • 教職員評価制度の成果としては、校長と教職員が話す機会が増えたこと、学校経営に関わっているという認識が教職員にできたことである。
  • 今後の課題としては、教職員評価制度を通して人材育成や能力開発等をどこまで、どのようにするかを検証することと考える。

 

ウ 府立亀岡高等学校

  • 4月当初に学校経営方針を提示すとともに教職員評価制度の試行を実施することを説明したが、試行実施に対する教職員からの異議は特段なかった。
  • 5月上旬に自己申告書を配布し教職員評価制度試行のスケジュールについて説明し、6月中旬から7月中旬までで当初面談を実施した。
  • 教員については授業観察を9月中旬から11月上旬にかけて実施し、必要な教職員については、中間面談を行った。
  • 12月の人事ヒアリング後に分掌の部長のみ自己評価を記入した自己申告書を提出させ最終面談を実施した。他の教職員については1月中旬から約1ヶ月をかけて最終面談を実施する予定である。
  • 学校目標(学校経営計画)については、学校評価の中間総括を12月に行い3学期に具体的に検討し、3月中には来年度の方針を固めるので校長の異動に関わらず4月早々に提示可能である。
  • 教職員評価制度を実効あるものとするには、教職員の資質能力の向上を制度の根幹として捉えつつ、面談や授業観察等を通して評価者と教職員との十分な意思疎通と信頼関係を構築することが重要である。
  • 教職員の自己目標については5項目程度の箇条書きで記入するように指示した。また記入例としても良いと名乗り出た3名の自己申告書(自己目標)を提示した。自己申告書(自己目標)は全員から提出され、点検も行ったが、修正すべき目標はなかった。
  • 評価補助者の活用については、評価補助者が被評価者と同僚の立場であることや自己目標を開示していないので自己目標の達成状況まで把握しきれないため難しいものがある。
  • 評価表(付表)についてはメモ程度の記入はできたが、職務遂行状況の詳細まで記入するところまではできていない。
  • 生徒による授業評価は全ての教員に昨年度から実施しているが、評価者評価ではなく自己評価に活用するようにしている。

 

エ 試行状況の整理(事務局)

  • 6月の試行校の校長対象の研修を皮切りに、9月から12月まで、のべ23日間、一人につき一日の評価者研修を学校現場で教職員に評価制度を説明していただく校長も含めた全評価者を対象に実施し、その中で教職員評価制度の説明も行い、制度の理解を図った。
  • 10月に小学校、中学校、府立学校別に試行校連絡会議を開催したが、その会議で出された主な意見についての改善方法や対処方法については、座長、副座長と相談の上、次回の会議で提案したい。

 

(5)学校評価と教職員評価制度に関する研究発表(総合教育センター)

  • 学校評価と教職員評価制度は制度上は2つの違ったものであるが、学校組織マネジメントにより両者を結びつけることが可能となる。学校組織マネジメントは、目標の重点化を図りながら組織が自ら変化し続けるためのものであり、P・D・C・Aのマネジメントサイクルの中で改善のための次なる一手であるA(ACTION)を重視するものである。課題解決のために学校が抱える阻害要因の解消ではなく、支援要因を活用することで学校組織を活性化させようとする点が従来の学校経営の考え方と異なるところである。
  • 教職員評価制度は教職員の資質能力の向上に、学校評価は学校組織の活性化のための協働性に光を当てている。この2つの制度をつなぐものが組織マネジメントのさまざまな手法である。例えばオフサイドミーティング(まじめな雑談)等の手法により、適度な緊張感の中でお互いに言い合える関係を構築するようにすることや組織として物事を考え、意見を述べるようにすることでこの2つの制度を結びつけることができるのである。資質能力を向上させる取組についても個人が学んだことを個人の中で完結してしまうのではなく、組織で考え、協働性を持たせることによりメンバーやリーダーが入れ替わっても組織の中でその成果が伝承されて行くこととなる。組織としての協働性に着目すれば、教職員評価は学校評価の一環として捉えることとなり、教職員の評価を個人の努力の結果として完結させるのではなく、学校組織の努力の結果として捉えていくこととなる。そのような捉え方により2つの制度を進めることが学校全体の組織力の活性化につながり、引いては個々の教職員の資質能力の向上につながるのである。
  • 学校評価において目標の重点化を図って行くと、重点化した組織目標に対する評価だけで十分なのかといった疑問が湧く。そのため重点化した評価とそれ以外の日常的な評価とに区別する必要がある。日常的な評価は分掌組織や、あるいは個人で担うこととなる。また、分掌組織等で担う評価については次年度への改善の方法までを含めて全体に返すことも必要である。学校評価における目標を作る際、重点化と同時にこれらを結びつけた評価の構造図が出来ていなければならない。この全体構造図の構築が非常に難しく、学校現場でも苦労している。目標の作成の際も例えば数値化だけにこだわっていると本質が見えなくなったりする。そうしたことからも適切な目標の設定は非常に難しく、目標を立てる研修も必要である。
  • 組織は「安定」や「秩序」を求めていく、評価は「変化」を指向していく。矛盾したものではあるが、当たり前を見つめ直す分析と、できるところから「ちょっとだけ軌道修正」を図るために次なる一手を試行錯誤していくことが重要なのである。評価としてのアンケートの平均を出すという作業一つをとってもアンケート結果を単純に平均するだけでなく、例えば5をつけた人と1をつけた人について、どうして評価が分かれたかを分析し、改善点として考えていくことが重要なのである。
  • 本年度、評価者研修を実施しているが、時間的なものもあり十分でないところもある。来年度の全校試行においては、研究協力校を指定するなどし、学校現場でのいろいろな意見を制度上の運用の部分と評価者の研修の部分の両面に組み入れるべきと考える。その中で総合教育センターとしては、将来的に学校評価と教職員評価制度を研修でつなぐような役割を担っていかなければならないと感じている。

(6)意見交換

  • 今年度試行のメリットとして、教職員評価制度の一部の側面であるが、面談を行い評価者と被評価者のコミュニケーションを図ることができて良かったとの試行校の発表であった。評価の前提となる面談を通して被評価者の思いも伝わり、評価者の立場も理解してもらえることもある。このような良かった点は今後も生かすよう評価制度の趣旨として出して行くべきである。教職員は評価されるというマイナスイメージでこの評価制度を捉えている場合もある。教職員評価制度は、面談を行い共通認識や相互信頼が深まり学校を活性化するという意図が大きいのである。学校評価の一部でもある授業アンケートや授業評価は今までやりにくかったが、やってみると良かったという場合が多い。外部からの意見を聞くことが個々の教職員にとって授業改善のプラス思考として働くという効果も生まれている。いくつかの課題もあるがこのような評価制度の良い面を前面に出すべきである。
  • 評価補助者に自己目標達成のプロセスの中で評価者は意見を求めることもあり、当然そのプロセスでは自己申告書を見てもらうこともあるはずである。自己申告書(自己目標)の評価補助者への開示は、状況に応じて行って当然のことである。
  • フィードバックとしての開示面談については、教職員評価制度の本来のねらいが人材育成、資質能力の向上であるので、そのやり方についての工夫が個々の学校で期待される。ただし、教職員に重圧感を与えないような開示面談とするべきである。
  • 教職員評価制度を有効に生かすために必要な施策や支援方法についてもこの会議で論議できればと思う。
  • 現場の教職員が積極的にかつ前向きに教職員評価制度に取り組めるような方法や危惧されるスケジューリングの問題の解決策についてもこの会議で検討できればと思う。
  • 目標管理を行いながらの教育実践は振り返りが何度かあり、出来ていないと気にかかり出来るように努力するという点で効果が見られる。
  • 試行校連絡会議では、この教職員評価制度による当初面談を行ってみて、今後の教員生活のことや今年1年の教科や分掌の目標について教職員とじっくりと話す機会を持つことができるようになり、大変有意義であったとの意見報告が多かった。
  • 学校現場では、校長が授業を見ることが当たり前のようでこれまでなかなかできていなかった。この教職員評価制度により、校長、教頭そろって授業を観察でき、生徒がその授業をどう受け止めているかや教職員がどのような工夫を行っているかを見ることができたことがこの制度の最大のメリットと考える。
  • 教職員評価制度は、学校という組織が学校教育目標を達成するための教育活動を行っていること、即ち学校教育目標に沿った学級経営案を実践することにより学校教育目標を具現化することにつながることを教職員が理解する良い機会となった。

(7)次回会議の予定

第10回研究会議は、第1次調査研究報告の修正について審議することとし、平成17年1月下旬に開催することが確認された。

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