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第1回遺伝子組換え作物交雑防止検討会の議事概要

開催月日:平成18年3月15日(水曜日)
開催時間:午前10時~12時
会場:京都府公館 第5会議室

1 協議事項

遺伝子組換え作物交雑混入防止措置に関するガイドラインについての意見交換

2 出席者

【委員】

佐藤 文彦委員(京都大学大学院生命科学研究科教授)
椎名 隆委員(京都府立大学人間環境学部教授)
高原 光委員(京都府立大学大学院農学研究科教授)
谷坂 隆俊委員(京都大学大学院農学研究科教授)
並木 隆和座長(京都府農業資源研究センター所長)
山口 裕文委員(大阪府立大学生命環境科学研究科教授)

(敬称略、五十音順)

【事務局】

太田農林水産部理事、山下農産流通課参事
食の安心・安全プロジェクト・農林水産部農産流通課 各担当者

3 概要

以下の議事録要旨のとおり

議事録要旨

座長選任

 全委員に諮り、座長に並木委員を選任。

検討事項

(座長)

 事務局に説明を求める。

(事務局)

 資料1に基づき「京都府食の安心・安全推進条例の概要」を説明。
 資料2に基づき「農林水産省実験指針と北海道、新潟県条例の交雑防止措置の比較」を「参考資料1及び2」を参照して説明。

 検討事項として、(1)検討対象作物、(2)交雑防止措置、(3)モニタリング措置の3点を依頼。
 現時点では府内で遺伝子組換え作物を栽培する動きはないが、将来的な対応が可能となるようガイドラインを作る旨説明。

基本的な事項の検討

(座長)

 各委員に質問・意見を求める。

(委員)

 一般ほ場と違い研究ほ場は厳密に管理されていることから、研究ほ場については「指針」は不要ではないか。
 また、交雑に関する知見にはどこかのデータを採用する必要があるが、隔離距離の安全率はいくらを見込むのか。北海道などでは農林水産省の隔離距離を2倍しているが、これは安心率というべきであり、私は安全率は1倍でよいと考える。

(事務局)

 新潟県や北海道での地元との問題は研究分野で起こっていることから、「指針」には野外栽培される研究ほ場も含めることを考えている。

(委員)

 転移因子などの作用により植物自身の遺伝子が変異して新しい遺伝子が作られる確率に比べ、組換え作物が非組換え作物と交雑する確率は低い。研究者としてはどうして遺伝子組換えを制限するのかという考えはあるが、指針が策定されれば、その枠組みの中で研究できるようになるので、むしろありがたい。

(委員)

 基準を検討する場合に、交雑率はどの程度を目標にするのか。例えば0.01パーセントか、もっと低い数字か、あるいは高い数字か。また、その交雑率は栽培植物だけの数字か、近縁植物まで含めた数字か。遺伝子組換え作物が食品に混入した場合に「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」いわゆるJAS法で表示義務が生じる5パーセントを目標にするというのは極端だが、この点も決めておかないと議論を進めにくい。

(事務局)

 北海道の規則制定時にも同様の議論があったが、JAS法等に基づく食品における原材料の表示基準と今回検討いただく遺伝子組換え作物の栽培における交雑防止は違う議論である。
 100パーセントの交雑防止は無理だとしても、消費者の不安を取り除くためにも、可能な限り交雑を防止するような枠組みが必要。

(委員)

 種苗法に基づく農林水産省の基準では種子に5パーセントまで他品種の混入が許されるが、実際には1パーセントでも混入するとその種子は売れないだろう。
 特に京都府には自家採種している葉菜類が多く、遺伝子組換え作物がこれらと交雑すれば問題。

基準対象作物の検討

(座長)

 資料2に記載してある作物の中から、交雑可能性のあるものを絞りたい。「指針」の対象作物はイネ、ダイズ、トウモロコシ、西洋ナタネでよいか

(委員)

 イネ、ダイズ、トウモロコシ、ナタネは当然検討することとして、雑草トマトとの関わりでトマト、他にアルファルファ、テンサイも検討対象となる。
 アルファルファは雑草化したものが水田周辺や果樹園の下にある。他には、例えばインド原産の雑穀が実際に栽培されている事例があり、どのような作物でも農家が試行的に栽培することがあり得る。このため、フダンソウと交雑する可能性があるテンサイも検討対象としてはどうか。
 トマトでは雑草トマトが瀬戸内海沿岸に多く見られ、京都府では丹後半島の海岸沿いに自生している可能性がある。京都府では草丈が低く果実が小さい園芸用トマトが栽培されてないか。

(座長)

 小さいトマトというのは、ミニトマトと種が異なりビタミンCが多いトマトのことか。

(委員)

 交雑する可能性は、分類学的な学名で示される種の範囲とは異なり、属程度まで広がると考えている。通常の交配育種に使っている母本や直接交配できない場合に中継として使っている種をとおした交雑も考慮する必要がある。

(委員)

 トマトでは訪花昆虫は問題とならないか。

(座長)

 最近ではマルハナバチはガラス温室から逃げ出さないよう管理するようになってきている。ところで、トマトには第1種使用規程が承認されたものはあるか。

(事務局)

 カルタヘナ法施行後に第1種使用規程が承認されたトマトはない。

(委員)

 それでは、トマトは京都府でも栽培が多いため検討してもよいが、今後の指針改定時の議論に回すことも可能ではないか。

(委員)

 京都府において重要なイネ、ダイズ、京野菜などに絞ってはどうか。

(委員)

 しばしば交雑が起こり観測データの捕捉率が高い場合には、基準を策定しやすいが、栽培面積が少なくいつ交雑が起きるか分からない場合には策定しにくい。
 したがって、行政としてチェックすべきものと、万一栽培される場合にはこうすべきというものに分け、府の指針は重要な作物に限定すればよい。

対象作物(イネ)

(委員)

 水稲では1950年代には雑草イネが多かったが、移植栽培と種子更新の普及で減少した。現状でも雑草イネと栽培イネは交雑しているはずで、雑草イネを媒介して遺伝子組換えイネからの遺伝子が栽培イネに移動する可能性もある。

(座長)

 雑草イネは直播栽培を行うと問題になるのか。

(委員)

 直播の場合、イネより先に雑草イネが発芽するため、遺伝子組換えイネが雑草イネと交雑すると遺伝子組換え体の遺伝子が増える可能性がある。雑草イネは低頻度で出現してから1~2代経過すると目立ってくるが、気がついた時には遅い。
 これまでも水稲は異品種同士で交雑が起こってきたはずだが問題視されていない。種子生産する場合に組換え品種が他の品種と交雑すれば問題である。食品では5パーセントまで遺伝子組換え品種が混入していても表示の義務はない。採種せずに食品利用する場合でも花粉がかかっただけで問題とされるのは合理的でないが、食の安心・安全を考えれば指針は策定しておいた方がよい。

対象作物(ダイズ)

(座長)

 イネ以外にダイズでも指針の検討が必要か。

(委員)

 ダイズは農林水産省が重点作物として推進しており、指針が必要。ダイズについては、京都府には丹波黒がある。黄大豆と黒大豆は種皮着色抑制遺伝子が違うだけで交雑可能である。
 黒大豆とツルマメが交雑する危険性は高いのか。

(委員)

 丹波黒は通常の白大豆より開花が遅く、日本在来のツルマメと交雑しやすい。京都にはツルマメが生育しているため、ツルマメやダイズでの交雑を起こしやすい昆虫相となっているため、白大豆と黒大豆は交雑する可能性がある。
 白大豆と黒大豆で指針を別々に作る必要はない。ただし、野生種のツルマメとの開花時期のズレによって対応の違いを考えてはどうか。

対象作物(トウモロコシ)

(座長)

 トウモロコシは花粉の飛散距離が大きい。店頭のトウモロコシに京都産はあまり見かけないが、トウモロコシでは指針の検討は不要か。

(委員)

 トウモロコシでは食品として非認可の遺伝子組換え品種「スターリンク」が輸入品に混入し問題となった。スイートコーンは日本では採種しておらず外国から種子を輸入している。種苗法の基準では他品種の混入は5パーセントまで許されることもあって、輸入時に組換え品種や組換え品種と交雑した種子が入っている可能性があり、トウモロコシでは管理が難しい。

(委員)

 府民にとっては家庭菜園で栽培しているスイートコーンへの影響が問題となるのではないか。

(委員)

 トウモロコシはほとんどが飼料用であり、F1なので花粉量が多い。将来的には中国の需要が増え、その影響を受けて輸入に依存することができなくなる可能性がある。日本でも自給のための栽培が必要となる可能性がある。検討しておいてはどうか。

対象作物(ナタネ)

(座長)

 西洋ナタネはどうか。ナタネは虫媒の問題があり、雑草化しやすく、近縁のアブラナ科野菜も多いため、交雑が懸念される。

(委員)

 ナタネは農家ではなく研究者に栽培したい人が多いのではないか。ナタネは世界的にみてもメジャー企業で商品化が進んでおり、日本にも何らかの形で入ってくる可能性がある。アブラナ科は種間交雑する確率が高いこともあり、検討対象に入れてはどうか。

(座長)

 ナタネは交雑可能な作物が多いため、交雑防止のための距離を確保することになると、遺伝子組換えナタネは府内ではほとんど栽培不可能ではないか。

(委員)

 ナタネは輸送中のこぼれ落ち種子の問題があり、搾油工場の周辺では大抵雑草化している。豆腐工場、飼料工場の大豆でも同様の問題がある。他県では遺伝子組換えナタネがこぼれ落ちて雑草化し、価格低下を懸念してアブラナ科野菜の栽培を止めたという事例がある。京都府では自家採種して維持している葉菜類が多いことから指針の対象とすべき。

交雑防止措置について

(委員)

 花粉の飛散と交雑の可能性は必ずしも同一視できない。どこの基準に基づくかという議論よりも、各植物の花粉の飛散動態や寿命、開花時間、訪花昆虫など繁殖生態、植物生理的な性質を見極める必要がある。交雑データだけでは判断が難しい。

(委員)

 交雑に関する外国及び国内のデータは、農林水産省の独立行政法人農業環境技術研究所がまとめた資料にほぼ網羅されている。
 ただし、実験した交雑データについて、単純に距離だけではなく、どういう実験系で得られたものかという検討が必要。
 ボーダー効果により交雑は自身の花粉が少ないほ場周縁部で起こりやすく、交雑防止措置ではほ場の周囲に同種の非組換え作物を栽培して花粉の流出を遮閉することになっている。周縁個体を対象としないほ場の中心部での調査であれば、交雑率が低くなるため意味がない。また、交雑率の計算方法も1株ずつ調べたのかどうか。交雑率は個体単位で計算すると高くなるが、面積当たりで計算すると低くなる。

(委員)

 農林水産省のデータは私の感想では花粉飛散距離が非常に短いと感じている。イネと同様に樹木のモミの花粉も重いが、風が吹いて舞い上がると非常に遠くまで飛散する。
 花粉の重さ、量だけでなく、風の影響、花粉の寿命も関わるため、交雑距離を確認する実験だけでは確実なことは言えない。日本の昔の堆積物には中国から飛来したマオウという植物の花粉が検出されている。確率は低いが花粉が遠くへ飛散しても、それで構わないのか。
 農林水産省のデータは興味深いがこれだけで隔離距離が何メートルなら大丈夫とは言えないし、何メートルで交雑が認められたからこれまでの隔離距離をあと数メートル延ばせばよいとも言えない。絶対に交雑してはいけないのであれば、農林水産省指針の隔離距離では防止できない。

(委員)

 農林水産省のイネの交雑データでは、モチとウルチを使ってキセニアの発生を調査し、花粉がどの程度飛散して交雑にあずかるかが確認されている。しかし、キセニアによる調査は1個の遺伝子のみをマーカーにしていることが問題。通常は、他殖率や複数遺伝子を調べて検定する必要がある。すなわち、1個の遺伝子の調査では交雑率に差があるかどうか検定できず、仮に1つの事例で交雑が認められても、それが他の原因で起こったものなのか判断できない。

(委員)

 ダイズでは、ツルマメがあると訪花昆虫相が異なるため、ツルマメが存在しないアメリカやツルマメが閉花授粉する北海道の交雑データは使えない。京都府のような南方ではツルマメの訪花昆虫の種類が多いため、つくばでの交雑データも府内では使えない。
 以前、交雑に関する見解を求められた際に、研究されていないのでコメントできないと述べたことがある。交雑に関しては、可能であれば現実に栽培される場所でのデータが必要。

論点整理

(座長)

 議論を整理すると、1点目は指針の検討対象を京都府として重要なイネ、ダイズ、トウモロコシ、ナタネに絞ってはどうかという意見があった。2点目には花粉は風で飛散するため、距離による隔離だけでは交雑防止は困難であり、花粉の生態を考慮する必要があるという意見があった。3点目はこれまでの交雑に関するデータがどの程度使えるのかという議論があった。

(事務局)

 本日の議論を事務局で整理し、対象作物や隔離距離について、必要に応じて各委員から個別に意見を聴き、次回検討会の開催までに事務局案を作成したい。また、交雑混入防止措置は、栽培前だけでなく栽培後のほ場管理も重要であるとの思いを強くした。このことを含めて整理して事務局案を提示したい。

以上

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