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近年、京都府水産事務所及び海洋センターに「正月飾りとして使用していたホンダワラが入手できなくなったので、京都府で入手できないか」という相談が来るようになりました。地球温暖化に伴う磯焼けや、漁業者の高齢化等によりこの海藻の入手が困難になったそうです。京都府ではホンダワラの食習慣があり、京都府のホームページに掲載された記事を頼りに相談されてきたとのことです。本ページでは、ホンダワラ類などを活用した正月飾りについて紹介します。


(左:海中のホンダワラ、右:ホンダワラ干しの様子)
海藻の担当者も知らなかったのですが、調べてみると、ホンダワラの仲間(ホンダワラ類)を使った正月飾りを作る習慣が全国各地にあることが判明しました。ホンダワラ類が持つ気胞(空気の入った袋)が、穂俵(ほだわら)に似ることから、五穀豊穣の祈願をこめて飾るとのことです。
京都府には十数種類のホンダワラ類が生育していますが、正月飾り用として販売することができれば、漁業者の重要な副収入になる可能性が考えられたため、相談があった業者が使用している海藻を調べることとしました。
海洋センターによる調査の結果、正月飾りには、ヤツマタモク、マメタワラ、ヨレモク、ジョロモク、アカモクといったホンダワラ類が使用されていることが分かりました。ただし、ジョロモクとアカモクは乾燥すると黄色や赤茶けた色になるため、できれば黒々とした他の海藻が望ましいとのことです。
その後、京都府水視漁業組合連合会と連携して、正月飾りの試作品づくりを進めた結果、敬遠されていたジョロモクを使って黒々しい色合いの製品を開発することができました。ジョロモクは京丹後市のある海域に大量に生育しているもののほとんど利用価値がないこと、茎を残して刈り取りやすく、翌年にまた同じ茎から枝が生えてくることなどから環境への影響も少ないということで、海洋センターが活用を提案した種類です。
これらの取組の結果、令和7年度に数トンクラスのジョロモクが正月飾り用として販売され、これまで未利用だった海藻を使って漁業者の新たな副収入を生むことができました。今回、海藻の担当者でも知らないような需要があることが判明したことからも、様々な方面にアンテナを張ることで、まだまだ浜の活力を高める取り組みを進められると考えています。

漁業者が収穫したジョロモクを干している様子
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