丹後広域振興局
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65歳未満で発症した認知症のことを「若年性認知症」といいます。
丹後地域では、若年性認知症の方に接する機会がほとんどなく、どう接したらよいか不安だという声がある。
また、当事者の方の想いや希望を直接聞きたいという声もある。
そこで、医師等の専門家や支援経験者等から、適切な支援のポイントを学び、さらに、当事者の想いや希望を聞くことにより、地域で伴に生活していく上で必要なことは何かを一緒に考えていくことを目的とした。
令和7年10月9日(木曜日)15時30分~17時30分
アグリセンター大宮多目的ホール(京丹後市大宮町口大野228-1)
97名
【対象者】
若年性認知症当事者支援に関わる(または関わる可能性のある)職員等
高齢者施設職員、障害者関係施設職員、社会福祉協議会職員、訪問看護師、病院職員、行政職員、丹後圏域地域リハビリテーション支援センター職員等
対談者:
京都府認知症応援大使(若年性認知症当事者)…下坂厚氏
京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学教授…成本迅氏
京都府こころのケアセンター若年性認知症支援コーディネーター…木村葉子氏
参加者からの事前質問に答えつつ、フリートークで対談を勧めた。
引き続き、3者と会場との交流を実施した。
なお、会場への問いかけ「今日の対談を聞いて、自分は何ができると思いましたか?」については、二次元コードを活用してその場で回答してもらった。
当事者の生の声を聞きたいという要望が今回実現できたことで、大変満足度が高くなった。
また、若年性認知症特有の症状に対する対応や家族への気配りなども重要なポイントであることや、支援ではなく、伴走が大切であることを意識された意見が多かった。
⇒認知症があっても無くても誰でも一緒だと思いますが、前向きになっていても悲しくない訳ではないし、苦しくない訳でもない。認知症が治ることはないので、そればかりを考えていてもしょうがない。人生は続いていくのだから、楽しい事やチャレンジしたい事を思い描いていく方が良いと思っている。気持ちと心のバランスがとれていると思う。
⇒認知症でない方から見るとそういう風に見えるのかもしれないし、特別なものがあるように思われるのかもしれない。脳の機能の変性が進行して、感じているものが違ってきたり、理解できないことが増えてくるかもしれないが、物理的には同じ空間にいるので、その辺を理解してもらえると共生していけると思う。
「認知症世界の歩き方」という書籍は視覚的に分かりやすく説明されているが、認知症の世界とそうでない世界に境界線があるわけでもなく、あいまいで重なっている部分(あわい)もあり、自分はそこに居るような気がする。
症状が重度、かみ合わなくなるとそっちの世界というのがあって、そっちに居るのかもしれないイメージもある。
⇒自分もそうだったが、認知症ついてのマイナスなイメージばかりで、認知症になってみて、そうではないと言うことを伝えなければいけないと思った。認知症のことをもっと知って欲しいと思ったのが一番の原動力。
実際に行動してみて、進行が遅くなるなど、自分にも良い効果があったと思う。薬よりも、色んな人と関わっていく事の方が良いように思うので、他の人にも勧めたい。講演だけでなく、地域のサロンなどに積極的に参加されたりするのも良いと思う。
そもそも、自分が認知症であることをなぜ人前で話さなくちゃいけないのかという思いだったが、他の認知症の人と関わる中で、自分も活動してみようと思えるようになり、自分にとってプラスになることだと思えた。
⇒今はデイサービスで働いてはいないが、初期集中支援チームに関わり始めた際に、たまたま紹介されたデイサービスの理念に共感したから。そこのデイサービスは特別な取り組みをしており、「利用者さんが働く」ということに一緒に携わりたいと思った。最初はボランティアだったが、当時の施設長が「色んなことができそう」ということで、アルバイトで介護の仕事をしないかと言われて始めた。
⇒比率なんて分からない。そういうものではないと思う。強いて言えば、朝より夕方や夜の方が疲れていて症状が出やすいと思う。脳が疲労しやすい。
⇒個人差があると思う。言う人、我慢する人それぞれだと思う。自分は、家族に対しては負担を掛けている負い目があるので、自分の意見を押し通すより、周りの意見を聞いておいた方が良いように思うこともある。家族だからこそ、本音が言いにくい事もある。だからこそ、家族や周りの人が配慮してくれると良いと思う。
⇒怒りっぽくなったのはある。特に診断初期の頃。店員の対応に過敏に反応したりして、なんでこんなに怒っているんだろうと冷静な自分も居て思うことがある。医師に相談したら薬で調整してもらえた。家族には話せなかった。
他に、魚屋でバリバリ働いていた頃は職人気質で無口だったが、認知症になり、介護現場で働くようになり、高齢者や色んな人と関わっていく中で価値観が変わってきた。元気に暮らせるだけでありがたいと思えるようになってきた。
⇒先ほどの質問で答えたとおり、自分なりに認知症を受け入れて、前向きに変わってきたと思う。認知症になっても終わりではないし、なったからこそ見える景色や出来る事もあると思う。
⇒今まで通りの対応で良いと思う。腫れ物に触るような感じではなく普段通りで良い。その人その人が何を求めているかを知ることが支援の大原則になると思う。
⇒別に65歳になったら…という考えはない。必要になった時に必要なサービスを申請していくような感じで今は考えている。
⇒24時間、365日、認知症で困っている訳ではないので、これというものはないが、ある時は出来たり、ある時は出来なかったり、いろいろなのでその辺を理解してもらえると良い。自分は簡単な計算が苦手だったり、道に迷ったりすることもあるが、難しいことは工夫したり、時間をかけてやったり、色々である。
外見上は困っていないように見えるかもしれないが、実は困っていて苦労していることもある。(家族にさえ)敢えて見せないようにしているところもある。
今は、症状の軽いうちから診断される人も出てきて、まだまだ出来ることが沢山ある人もいる。認知症というイメージを変える必要・配慮がいる。
⇒もしこの先、丹後地域で研修等の機会を頂けるのであれば、参加者の方の手が挙がるような会が出来たらな(笑)。成本先生の言われるように、手が挙がらないから反応がないという事ではなく、こうやって質問がたくさん来るので、丹後の方の特性なのかなと思います。ただ、そういう事も尊重はしつつ、折角の貴重な機会を有意義に活用した方が良いとは思う。「質疑応答の場」ではなく、「共有の場」にしたらいい。かけ橋的な人が要るのかもしれないが。
⇒ある講演会で、一番なりたくない病気にダントツに認知症が挙がっていて、そこにメディアで新薬が紹介されると注目されることがあると思う。日本は保険制度があり、月2~3万円で済むと聞いたことがある。しかし、根本的に治す薬ではないし、薬の力は必要かもしれないが、それ以上に大切なのは本人の置かれている環境だと思う。本人が安心して居られる場所が新薬以上に大事。
今後、近い将来、根本的に治療する良い薬が作られていく期待感はもちろんある。
⇒精神症状が強くて家族の方が困っているのに、なかなかお薬が効かずに状態が改善しないことが一番多く経験する悩みです。
⇒現在の治療は万全ではないので、一時的な精神科への入院を使うことが必要な場合があります。家族の心理的ハードルを下げていく必要があると思います。これは私たち精神科診療に携わっているものの責任でもあります。
⇒高齢者の場合、加齢性の変化と認知症の区別が現実的につけづらいという問題があると思います。
また、ご本人もそのあたりの区別はなく、年を取って忘れっぽくなったという病感はお持ちの方も多いので、敢えて病名まではお伝えせずに、物忘れが増えるスピードが速くなっているようですから、薬や日常生活に気を付けてスピードを遅くして、今の生活を維持していきましょう、といった説明に落ち着くことが多いように思います。
⇒神経変性疾患については遺伝が関与している方が一定割合おられます。脳梗塞、脳出血で後遺症として認知症を生じる方については、糖尿病、高血圧など生活習慣病がコントロールされていない方が多いと思います。
⇒前頭側頭型認知症では、感情面の抑制をつかさどっている前頭葉が障害されるため、性格が変わったように見えることが多いと思います。アルツハイマー型認知症でも、若年性の場合は前頭葉が障害されることがあり、その場合は怒りっぽくなったり、攻撃的になったりといった変化がみられることがあります。アルツハイマー型認知症の場合、その割合は少ないです。
⇒生活習慣病の予防、コントロールにつきると思います。
⇒若年性アルツハイマー型認知症では、大脳皮質(頭頂葉、側頭葉)が中心に障害され、高齢者では海馬が中心に障害されるという脳障害のパターンの違いが原因です。
⇒家族がおられて抱え込んでしまい発見が遅れる傾向は京都市内と比べてあると思います。認知症になられた後も畑ができたり近所の人とのつながりがあったりして、認知症になってからの生活の質は京都市内よりも高いと感じています。
⇒必要な支援を伴走しながら提供しているだけなのに、本人・家族のみならず、勤務先関係者や主治医、支援を託した支援者の皆様から常に過分なお礼をいっていただくので恐縮しきりです。
具体的な場面としては、今年度の学習交流会では、ある当事者の希望もあり、ボードゲームカフェを借り切って交流を深めました。時期が夏休だったので、ご家族みなさんでどうぞとお声かけしたところ、多くのお子さんやお孫さんも参加いただき、家族同士だけでなく、お子さん同士の交流も持てました。これはコーディネーターの提供する「場」を「安心してこられる場」として信用していただけたからこそ、キーパーソン以外のご家族を同伴していただけたと振り返り、感慨無量です。
⇒若年性認知症支援コーディネーターの支援対象は65歳未満の方です。中には親御さんがキーパーソンの方もおられます。
現在関わっているケースですが、80歳代の親御さんが子どものためにと実家から京都市内へ出てきて頑張っておられました。お母さまのご体調が不調でいよいよ支えることが難しくなったため、これから本人の独居生活を支えるための障害福祉サービス(就労系・移動支援)と介護保険の両サービスと医療保険による訪問看護を導入するべく主治医とも連携をとっているところです。この場合お母さまご実家へ帰られる後を補うようにサービスを調整しています。公的サービスではおそらく支援の絶対量は足りないかと思いますが、今のところ本人は入所を拒否されているため、在宅サービスの組み合わせでスタートし、ケアマネジャーを中心にサービスの調整をしながら「どこで暮らすのか」を本人に決めていただけるよう支援することになろうかと思います。
また仮に同居親子の場合、若年性認知症支援コーディネーターではお母さまの支援も含めた支援までは対応できないため、初期集中支援チームや地域包括支援センターにご対応いただき(家計状況によって生活困窮者自立支援制度や生活保護の支援につなぎ)、その担当者の後方支援(お子さんの支援)として対応させていただくことになろうかと思われます。
⇒例えば、
1.就労中に発症され残念ながら通勤が難しくなったケースですと、休職中に障害福祉サービス(就労系)を利用される場合があります。その場合は、事業所または相談支援事業所が主たる支援者となり後方支援に回りますが、一方で勤務先に在籍した状態でもあるため、休職⇒退職となり、退職後の経済的支援制度の手続きが整うまでは並行して対応することがあります。
2.地域の支援者に支援の主体が移行しても、年に2回の学習交流会や個別ピアサポート(またはイドバタ)のお誘いをすることで、つかずはなれず関わらせていただいています。
⇒大まかなことは配布したリーフレット「若年性認知症支援コーディネーターへご相談ください」に掲載していますが、具体的に必要な情報があれば個別に電話でご連絡ください。
⇒行政の仕組みや制度を変えることはできませんが、本当にその制度しか使えないか?を客観的な視点をもって一緒に考えることはできるかもしれません。また、今ある制度やサービスで足らないコトは必要と思う方が声をあげ作れば良いと考えていますので、そのための助言やアイディア出しのお手伝いはできるかと思います。
⇒「自立支援の方」とは介護保険非該当ということでしょうか?自立支援医療の該当者であれば障害福祉サービス(就労系)も利用を推奨しているので後者を想定しますが、これまで馴染んできた居場所(就労場所)や支援者の環境から、制度が変わったからと担当者がガラッとかわると戸惑いも大きく、理由が良くわからないと拒否も出るかと思います。そのため、可能な限り障害福祉サービスと介護保険サービスの併用をするようにして、徐々に介護保険サービスへ移行するよう支援者へ声かけしています。また、介護保険サービスの利用を嫌がる方については、できれば利用者でありながらスタッフに近い過ごし方(スタッフの手伝いをする、他の利用者の話し相手をする等)を提案し、役割を持っていただくことで参加のモチベーションが上がることもあります。その都度細かな調整をして、長く楽しく通っていただけるよう心掛けています。
⇒高齢者分野では障害の特性をとらえて細かに支援をしていただけることが、当事者のみならず家族にとっても心強い「最後の砦」と感じています。
ただ、忙しい中では仕方ないかと思うのですが、どうしても定型のサービス提供となる場合が見受けられ、若年性認知症の当事者はそういう場合にとりわけ利用拒否が多くなるように見受けられます。気持ちがこじれる前に少し手と声をかけていただき、簡単なことでもよいので「役割」をもって利用できる環境づくりをしていただければと思います。
⇒「叶えられそうにない」というのは、法的にやってはいけないことでなければ、支援者の主観かと思われるので、まずは一度やってみてはどうでしょうか?
社会資源は福祉関連だけではなく、一般市民として生活されている中で使えるものは全て使ってみる。今、ある制度やサービス、実施主体で叶わなければ、いっそ作ってみることも考えてはどうでしょうか?
少人数で考えると堂々巡りになりがちなので、よかったら当方へ相談してみてください。そうして本人が通える場を作られたところも(数は少ないですが)あります。
若年性認知症支援コーディネーターがこれまで叶えられたことは、京都市京セラ美術館での啓発展で写真パネル展示、企業から仕事をもらって報酬を受け取って働ける「OTOKUNIシゴトバ」の立ち上げ等。一方で叶えられなかったことは、もう一度サッカーがしたいと話しておられた当事者をサンガスタジアムのピッチに立ってもらうこと(ピッチに入れる状況になった時点で病状が急激に進んだため間に合わなかった)等。
京都府立医科大学附属北部医療センター(認知症疾患医療センター)
京都府こころのケアセンター
京都府丹後保健所
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丹後広域振興局健康福祉部 丹後保健所
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