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佐野元春さん (平成23年度修了生)

佐野元春さんの顔写真修了して10年の節目に想うこと

この原稿のお話を頂いて陶工専門校を修了して10年が経ったことを知った。

窯元で働いて7年、独立して3年が経ったことになる。成形科での1年を含め、陶芸の道に入って11年。11年前を思い返してみると、私は東京に住み建築設計事務所にいた。従業員3、4人の小さな事務所で、主に住宅や集合住宅の設計補助をしていた。毎日パソコンに向かい、図面とにらめっこし終電で帰宅する、家には寝に帰るだけだった。モノ作りがしたくてその世界に入ったはずだったが、モノを作っているという感覚が日増しに薄れているのをごまかしながら日々を過ごしていた。そんな時、久しぶりに取れた休暇で箱根に出かけた折、轆轤で水挽きをする機会を得た。その時の土が手にまとわりつく感覚が忘れられなかった。何より形の無いところから形が出来ていくことが面白かった。それを機に陶芸に目覚めこの道に入った…ということは無く、また日々の図面と向き合う生活に戻った。

月日は流れ、そうした生活が限界を迎え、事務所を辞める決意をした時に、たまたま手にした器の本で陶芸を学べる陶工専門校の存在を知った。

土の感覚が忘れられなかったのもあるかもしれないし、もしくはただ現実逃避したかっただけかもしれないが、気づけば入校願書を提出していた。

なぜ陶芸の道に入ったのか?と聞かれる機会があるが、いつも返答に迷う。その当時の流れとしか言いようがないのだ。ただ言えることはモノ作りをしているという感覚が今は確実にあるということだ。

陶工専門校での1年間、窯元で勤めた7年間は、体力的にはきついこともあった。独立した今も夜更けまで仕事をすることはあるが、焦燥感は無い。

窯を開ける瞬間の期待と不安が入り交じった、なんとも言えない感覚がある限りこの仕事を続けられそうだ。

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