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陶芸の道に進む、一年前の私が知ったら驚くだろう。陶芸に特段興味があったわけでもなく、自分が使うものは気に入ったものがいいと思いながら数年ごとに食器を買うくらい。
そんな私が人との縁で陶芸と出会い、様々なタイミングがぴったり合ったことによって七年働いていた会社を辞めて陶芸の世界に飛び込みました。
四月に入校し、初めに取り掛かったのは土もみ。初めて土に触った時の、あのひんやりと冷たくて初心者の私には優しくない固さ、そして目一杯押しても思うようには揉めない難しさをきっと私は一生忘れないでしょう。
先生の動きはとてもシンプルで、難しいことをしているようには見えないのに真似することが出来ません。私の土は先生と同じようには動いてくれず、手だけがどんどん痛くなっていくのでした。「お前が思うほど簡単じゃない。」まるでそう土に言われているようで悔しくて、もどかしい日々。それが私の陶芸の道の始まりです。
毎日毎日土を揉む。土と向き合う。あんなに気難しいように感じていた土が少しずつ私の力に応えてくれるようになると、手の痛みも気にならなくなってみるみるのめり込み毎日はあっという間に過ぎていきます。土を揉むことさえ出来なかった私が春から夏にかわる頃にはろくろに座り、湯呑を作ることができるようになりました。そしてここを修了後は弟子入りし、独立を目指しながら陶芸を生涯の仕事にしたいと考えています。
土はすごく素直で自分の働きかけに対して嘘のない動きをしてくれると、今の私は感じています。体調が悪かったり自分の気持ちが乗っていないと、ろくろもなんだかうまくいかない。ちょっとこれくらいでいいか、なんて妥協すると目の前にそのままの形となって現れてしまう。陶芸大学校で学んでいることは技術の鍛錬であると同時に、ものづくりに従事する者としての心の鍛錬でもあると日々痛感しています。
これから先の修了する頃、もしくは十年後、二十年後、私と土の関係はきっと色々に変化していくでしょう。まだまだ多くはないけれど、土と通じ合えるあの瞬間を少しずつ増やしていきたいです。
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