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崔 龍熙さん (平成24年度修了生)

崔

10年が経って

 10年前、いつか作家として独立したい想いを胸に、京都府立陶工高等技術専門校に入校しました。

 大学を出てから入校するまでの何年間かは、釉薬を学ぶ学校へ通ったり、貸工房を借りたりしてそれなりに陶芸をしていましたが、当時の私には漠然とした作家像だけが先行していて、その実、花器を作ることや、同じサイズの器を複数個作ることもできませんでした。そのもどかしさが日々募ったあげく、入校願書を手に取ることになりました。

 訓練生になってからは課題をこなすことすら大変で、初めは土を揉むこともままならず、それなりにやっていた陶芸とはなんだったのかと、いつも課題ごとに項垂れる日々でした。

 初めての課題に戸惑いつつ、少しずつ成長していく充実した毎日ではありましたが、修了も迫った就職相談の日に、それでも独立するにはまだまだわからないことが多すぎると考え、京都で作家活動をされている先生を紹介していただき、6年間の修行生活に入りました。

 

 やがて弟子生活も明け、それから独立して3年が経ちます。

 今はひとりで制作をする時間がほとんどで、誰とも話さず1日が過ぎることも多々あります。そばに厳しい顔をして作品をチェックする師匠もいません。

 その場には気楽さはありますが、正解のないものと対峙する不安もかなりあります。作品の判断や責任はすべて作家ひとりにあるからです。

 そんなときはいつも、訓練生の頃や修行中に見聞きした数々の言葉や経験が糧となって、自分を支えていると感じます。

 厳しい世界かもしれませんが、これからも更に10年、20年と作品を作り続けていけるように精進していきたいです。

 

 

お問い合わせ

商工労働観光部陶工高等技術専門校

京都市東山区今熊野阿弥陀ヶ峰町17-2

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