更新日:2026年5月25日

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荒木奏穂さん (令和6年度訓練生)

 

私の選んだ道

 はじめて手仕事をする職人さんの姿に目を奪われたのは大学3年生の秋、福井県鯖江市のものづくりイベントで、漆椀の木地をシュルシュルと削っていくなめらかな手つきでした。その瞬間から、私の中で工芸の人の手で作られたものに感じるぬくもりを、大切にしたいと思うようになったのかもしれません。

 新卒で入社したのは、福井のものづくりイベントに関わっていた会社でした。日本全国の工芸にまつわる雑貨を、全国の工芸メーカーとともに企画・製造し、直営店で販売するという事業を主に行っている会社で、私は日々店頭でお客さまに届ける役割を担っていました。

 お店には毎日様々なお客さまがいらっしゃいます。たまたま前を通って初めて入ってみた人、お店や商品が好きな常連さん、贈りものを探しに来た人…産地やものづくりについて詳しい話までされるお客さまは稀でした。私が福井で手仕事の良さを知り心を動かされたように、目の前のお客さまに手仕事のあたたかみやつくり手さんの仕事について伝えたい!そんな思いで日々店頭に立っていました。

 様々な年齢や価値観のお客さまとの間で、「どんな器がお好きですか?」そんな質問から始まった会話を広げてくれるやきもののおおらかさ。同じ商品でも一つひとつに違いがあり、器の内側、外側、高台の中、色々な角度からじっくりと眺めながら、持ち心地を確かめながら、自分のとっておきを選ぶ楽しみ。私自身がとても楽しみながら、お客さまの器選びをお手伝いしていました。

 数年間、仕事を続ける中でお客さまからよくいただく言葉がありました。「あなた、やきものが好きなのねぇ。」そんな言葉の積み重ねに(自分はもしかして?)という思いが少しずつ確信に変わっていき、やきものをつくる仕事がしたいという気持ちを胸に、今、専門校に通っています。

 入校してからの日々は毎日が新鮮で、一日、一週間があっという間に過ぎていきます。土を揉むことから始まった実習は、湯呑みを作る課題まで進みましたが、思うようにいかないことは多々あり、手で器を作ること自体の難しさを実感しています。店頭に立っていた頃、器の僅かな釉薬の表情や大きさ、厚みの違いについて、お客さまから指摘があった時には分からなかった揃えることの大変さが、今では本当によくわかります。

 今はまだ、日々の出来不出来に一喜一憂、目の前の課題に必死に向き合う日々ですが、いつか、使い手となる人に手仕事のあたたかみを感じてもらえるような、使い手の暮らしを少しでも豊かにできるような、そんなやきものを作り、届けたいです。

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