ここから本文です。

米谷なつ子さん (令和4年度訓練生)

 米谷なつ子 

私の選んだ道

 私は今年の3月まで、言語聴覚士として十数年、病気や怪我のために言葉によるコミュニケーションが取りにくくなったり、嚥下(飲み込み)機能が低下したりした方へのリハビリを行ってきました。

 窯元に生まれ育った私は、土や窯が身近にありすぎて、これまでさほど興味を持たず過ごしてしまいました。そんな私が陶芸の道に進もうと思ったのは、年齢を重ねるにつれ、伝統工芸に関わる父や兄を尊敬し、憧れを抱くような羨ましい気持ちになったこと、また各地に旅行した際に様々な産地の陶器に触れ、自身でも作陶に関わりたいと考えるようになったからです。

 土に触れ、ロクロに向かい陶工としての訓練を積む専門校での毎日は、私にとって大変新鮮なものであり、学ぶことの楽しみを日々感じています。先生方は厳しくも丁寧に教えてくださり、自分でも気付かなかった性格や癖をすぐに見抜き、指摘してくださいます。一緒に学ぶ訓練生は年齢も様々で、皆で汗をかき切磋琢磨しています。

 器作りは私にはまだまだ簡単なものではありません。見た目の美しさは勿論、薄すぎても厚すぎても、重すぎても軽すぎても使いにくいことから、慎重になりすぎないよう時には大胆さも求められます。自分本位にならず、土に、ロクロに委せて器を挽くよう意識することでスッと上手にいくこともあります。

 言語聴覚士としての仕事と現在私の目指す陶工という仕事は、分野は全く違うようですが、患者さまの困っていることに耳を傾け、満足いただけるアプローチをすることと、品物を購入して使ってくださる方に気に入っていただける器を作ることは似ているようにも感じます。目の前の土、またこのあと器を手に取ってくださるであろう方に、手を抜かず真摯に向き合い、より便利に、より美しく使いやすいものを届けたい。今はまだ上手くいかないことも多く反省、勉強の毎日ですが、この気持ちを忘れずに日々の訓練に取り組んでいきます。

 

お問い合わせ

商工労働観光部陶工高等技術専門校

京都市東山区今熊野阿弥陀ヶ峰町17-2

ファックス:075-561-3429

tokgs-k@pref.kyoto.lg.jp