ここから本文です。

入校して最初の授業で、ここにある机と脇机は何十年も前から使われているものだと聞きました。今、自分が座っているこの場所には何人の人が座り、どれだけ多くの人が同じ机で紙上訓練に励んでいたのだろう。私と同じように、筆の動かし方や傾きの習得に苦戦していたのだろうか、と感じながら二ヵ月が過ぎました。
下絵付に入ると、筆置きや角乳棒、ガラス板が配られましたが、これもずっと使われ続けていたもので、修了まで使う自分の道具に対して礼儀正しくありたいと思いました。
ロクロ据えとロクロ線の練習から始まり、初めて呉須を使って線を描いたのは、汲出しでした。手ロクロは、過去の修了生からの寄付で修理したものということでした。この手ロクロも、過去に多くの訓練生の課題や品物を支えてきたのだと感じ、私も過去に倣ってこの汲出しから、修了までにできるだけ多くの品物に取り組みたいと思いました。
祥瑞は、初めて自分でデザインしたものを形にできる課題です。デザインの参考にするため、図書室で本を読みました。図書室の本というのは、自分以外の誰かが一時的にでも自分と同じ思いや目的で手に取ったかもしれないと、想像の余地のある面白さがあると思います。昔の陶工たちが作った祥瑞を見ていくうちに、何かを学び、人の感性を動かすのに時間や距離は大した問題では無いように感じます。
絵付は、一人で品物と向き合う寡黙な作業ですが、一人ではないような気がしてきます。誰かが作って、今自分の手の中にある筆もそうですし、たくさんの品物を支えてきた脇机、多くの修了生が使ってきた道具。悩んだときにヒントを与えてくれる本たちに囲まれているからです。そんな多くの人の努力が染みついたこの場所で、自分も努めていきたいと思います。
お問い合わせ