コーディネーターからのメッセージ

京都府犯罪被害者支援コーディネーターから伝えたいこと

京都府犯罪被害者支援コーディネーター
犯罪被害者遺族 社会福祉士 岩城順子

 犯罪被害者は法律や被害者支援のマニュアルさえあれば救われるでしょうか。決してそうではありません。家族を喪った者にとって、元通りの生活が戻ることはありえないのです。
 元の生活を取り戻すために少しずつ進むことが被害からの回復につながるのだと私は考えています。
 被害者が望むのは、具体的な問題の解決です。けれども、例え最終的に望む制度がないという答えであっても、話を聴いてもらえる、どんなことに困り、何を求めているのか一緒に考えてくれる人がいる、そのことがありがたいのではないかと思います。
 一つの機関で被害者の抱える様々な課題を解決するのは難しいことです。課題に対応するには、庁内の他課、関係機関との連携がとても大切だと考えています。顔の見える関係をつくり、全体の理解を深めていただきたいと思います。

京都府犯罪被害者支援コーディネーター
臨床心理士 内藤みちよ

 被害にあうということは、ある日突然の体験であり、その前後で被害者の方たちの日常・人生が全く別物になってしまうということです。何が起こったのか、何故起こってしまったのか?という答えの分からない状況に突然放り出され、それまでの生活や人々との関係性の世界から隔絶されてしまうような体験なのです。
 窓口に来られる方が、テキストの概要にまとめられているように内容を整理して伝えられない事や、ましてご自身が何に困っているのか分からない状態のこともめずらしくありません。だから、支援者に最も大切なことは、まず相手の話をじっくり聞くことで、そこから想像力を働かせてその方の「困り」を一緒に言葉に繋げていくことです。
 そして、被害者一人一人の「困り」は、困った「事柄」と困っている「気持ち」の二面があります。事柄には制度や施設などの支援をピッタリなものばかりでなく、流用も考えて提供する事ができるよう、日頃から制度メニューは見えるところに一覧にしたり、「つむぎ」を活用されることが望まれます。活用できる制度などがその時には見当たらなくても、「そんな状態では困りますよね」「一緒に手立てを考えていきましょう」などと、困り感やつらさという当事者の気持ちに寄り添う姿勢が重要です。
 また初期・中長期のライフスパンの支援という視点が大事なのは、当事者にとって被害体験は一生続くからです。
 何よりも当事者を孤独にしない、聴く・見る・繋ぐを大切に!

京都府犯罪被害者支援コーディネーター
公益社団法人京都犯罪被害者支援センター事務局長 冨名腰由美子

 被害直後から、被害者やご遺族の方が住んでおられる市町村の利用できる制度について必要な情報が届いていれば助かることがたくさんあると思われます。
 まず、市町村のどこの窓口に被害者やご遺族が行かれても、お電話がかかってきても、しっかりお話を聞いてください。動揺が大きくて、話もまとまらないかもしれない、でもお話を聞いてください。
 そこを起点として、被害者支援担当部署に繋いでいただき支援担当の方は、その方の必要な情報に繋がれるように他の部署と連携を取りながら、使えそうな制度、手続きなどを駆使してください。既存の制度や手続きで利用できることはないかと一緒に考えてください。
 被害に遭ったら、どんなことに困るのだろうか、我がこととして想像してみてください。
 かつて被害を受けた人は今お困りのことはないかもしれない。だから話を聞かないと言わないで、はじめはともかく話を聞いてください。
 被害を受けたことそのものとは言えないまでも、その被害の影響でお困りかもしれない、話を聞いてほしいかもしれない、まずはお話を聞いてあげてほしいと思います。そのあとで、然るべき機関に繋いでいただけると安心されると思います。
 市町村の支援担当部署の方が、もしお困りになったら、京都府犯罪被害者サポートチームまたは京都犯罪被害者支援センターにお電話ください。
 犯罪に起因するお困りごとには、一緒に考える人が必要です。それを支援する人にも、ともに悩む人が必要です。