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第8回「明日の京都」ビジョン懇話会の概要

平成21年9月18日に開催した第8回「明日の京都」ビジョン懇話会の結果について、下記のとおり概要を報告します。

日時

平成21年9月18日(金曜)午後3時から5時

場所

平安会館 2階  白河の間

出席者

「明日の京都」ビジョン懇話会

浅岡美恵委員、池坊美佳委員、今井一雄委員、新宮七郎委員、高木光委員、竹葉剛委員(座長)、西岡正子委員、畑正高委員、藤本明美委員、丸毛静雄委員、村井杏侑美委員、山岸久一委員
(※ 欠席 安藤昌弘委員、植田和弘委員、隂山英男委員、崔善今委員、ジェフ・バーグランド委員、千宗室委員、中村京古委員、福井正興委員、堀場厚委員) 
 

京都府

井上政策企画部企画監、山田政策企画部副部長、内藤政策企画部理事、畑村計画課長、吉岡調査統計課長、事務局ほか

議事概要

1 事務局から、専門部会の開催経過等について概要を説明した後、各専門部会の部会長等から、資料3に基づき、それぞれの部会提案の内容について報告いただいた。
各部会提案についての部会長等からの報告概要と、それに対する委員からの主な意見は以下のとおり

(資料3)表紙+検討事項一覧(PDF:250KB)

 

 (1)「文化・環境部会提案」報告(畑部会長)

 (資料3)文化・環境部会提案(PDF:630KB)
※第2回~第4回の会議概要については、添付を省略しています(以下、各部会同様)。

 

  •  「文化」「環境」いずれのテーマも細かく議論するときりがない中で、木の枝葉や根っこではなく、どのような幹を皆で共有しようとしているかを議論しなければいけないと認識
  •  「明日の京都」というテーマを考える上で大事なのは、5~10年という視野で語るのではなく、特に環境の問題など、50年先から逆算する中の最初の10年がどうあるべきかという考え方。
     また、「どこと比べてこの程度」というのではなく、「京都モデル」として説得力のあるものを組み立てるべき。
  •  モデルフォレスト運動といった活動は、一部の関心ある人だけが取り組んでいる運動としてしまうのではなく、「学生の街・京都」にあって、若い人がそのような活動に実際に汗を流すシステム(カリキュラムの組み立て)などを考えていくことが必要
  •  文化活動については、「文化活動に参加する」という言葉自体が第三者的な発想(行政が設定したところに府民が参加するという発想)であり、このような目標設定に対する言葉遣いにも気を配るべき、という議論も。

 

(2)「産業・労働部会提案」報告(丸毛委員)

(資料3)産業・労働部会提案( PDFファイル ,2MB)(PDF:2,121KB)

  •  「はじめに」というところで、「持続可能性のある社会の実現」、「京都経済の持続的な発展」といった部会提案のスタンスを提示
  •  提案は、「持続的な成長を可能とする産業づくり」、「京都の自然や歴史、文化等知的資源を活かした産業づくり」、「地域発の新しい産業づくり」、「イキイキとしたワーク・ライフの実現」という4つの視点から作成。4つの視点のもと、「サスティナビリティ社会に向けた新産業の創出」、「成長するアジアとの経済交流のあり方」、「ライフスタイル等の変化に対応したビジネス機会の創出」、「地域資源等を活用した地域経済の活性化」、「ワーク・ライフ・バランスの実現」という5つのテーマを設け、それぞれにミッションを記載。ミッションの下には、具体的な事業イメージをミシン囲みで記載
  •  4回にわたる部会の中で、例えば、地球環境保全であれば文化・環境部会と、道路網や鉄道網の整備であれば安全・基盤部会と深く関連し、産業・労働部会だけで完結しないとの委員からの意見を受け、他の分野にまたがる事項についても提言。このビジョン懇話会での議論・全体調整の中で総合的な提言としていただけたらどうかということを「『明日の京都』ビジョン懇話会における今後の提言」として付記

 

(3)「福祉・医療部会提案」報告(山岸部会長)

(資料3)福祉・医療部会提案(PDF:312KB)

  •  中心テーマにある「誰もが」という言葉は、元気な人、高齢者、障害者、子育て家庭、すべての子どもを包含。そのすべてが安心して暮らせる福祉・医療社会をつくっていきたいというテーマのもと、大きくは以下の3つのミッション
  •  1つ目は、「誰もが」生きがいを持って暮らすことができる福祉・医療社会をつくるべく、行政や企業、地域、NPO等によるセーフティネットを強化できる環境の整備
  •  2つ目は、府民の健康寿命を延ばすこと
  •  3つ目は、今、最も中期的目標として取り組まなければならない病気であるがんに対する医療や、リハビリといった介護について、必要な人たちが十分なサービスを受けられるようにすること。
     がんについては、がんの診断を受けたときからの心のケアといった緩和医療について、施設の均てん化や、在宅緩和推進のための人材育成が必要。
     リハビリについては、急性期、回復期、在宅というそれぞれの形態のリハビリが十分に受けられるような施設の均てん化と、介護職にある人々の社会的地位の向上、人材育成が急務

 

(4)「教育・学習部会提案」報告(西岡部会長)

(資料3)教育・学習部会提案(PDF:257KB)

  •  教育・学習部会提案について、6つの特色。
     1つ目は、教育・学習については、京都独自の目標設定が難しいが、目標に向けた方法論の中で、京都の文化等をいかした京都独自の実践が出てくるのではないかということ(京都に多い留学生の活用、本物の文化に触れさせることなど)。
     2つ目は、基礎学力の向上には、教員の指導力だけでなく、教員が子どもと向き合う時間を確保するための環境づくりも重要であるという視点。
     3つ目は、成果目標の数値化が難しいこと。
     4つ目は、教育が社会や文化との関わりが深いため、社会のあり方を含めた議論が必要であること(夜型社会から朝型社会への変革、家庭教育の支援など)。
     5つ目は、子どもの教育と同時に、大人の成長も含めた生涯学習が必要であること。
     最後に、「日本の中の京都」という狭い見方ではなく、「世界の中の京都」としてどのようにあるべきかという視点が必要であること。
  •  最終的には、ミッションにも書いているが、基礎学力や生きる力を通じて、「社会的に自立できる態度や能力を身に付けさせる」ことが必要。そのためにも、大学、企業、NPOなど様々な地域の人材が教育に参画できるようになることが重要
  •  人権については、NPO等との連携に加え、参加型、参画型の啓発を重視

 

(5)「安全・基盤部会提案」報告(高木部会長)

(資料3)安全・基盤部会提案(PDF:348KB)

  •  中心テーマは、「地域において必要な定住条件を整備し、自由で安心な新時代のコミュニティを構築すること」。
     行政の基本はまず安全の確保と基盤整備、その上で府民が自由な文化活動、経済活動を行うというモデルになっており、他の部会で取り上げられないインフラ整備や治安、防災、男女共同参画といったいろいろなテーマがこの部会の検討事項として上がってきている状況
  •  部会自体で検討できたのはそのうちのごく一部のテーマ(道路、橋などのアセットマネジメント、食の安心・安全、コミュニティ再生)ではあったが、ゲストスピーカーから新しい視点をいただいたところ
  •  その他、「定住条件を整備する」というテーマから、社会的弱者に優しい移動基盤の構築(南北軸の問題を含む。)、骨格的な高速道路網の整備といったインフラについての課題や、男女共同参画、防災と治安の維持等の課題についても、議論の中では扱っていないものの、項目として掲載

 

(6)意見交換

  •  まとめ方が難しい。それぞれの部会からの報告が相互に絡み合っている中で、どのようにうまくまとめ、表現していくのかということが今後の課題。
     今、世界中が、経済の仕組みも産業の形も低炭素型に変えていかなければいけないという大きな変革期にある中で、活力を保ちながらも先進的な変革にチャレンジするということを京都が大きな枠組みとして位置付ける一方、毎日の暮らしとそれをどう接合していくかが問題。
     接合に当たっては、まずワーク・ライフ・バランスがあり、さらに安全・基盤というファンダメンタルズがあり、医療や教育などを進めていけるソフト基盤があり、それらを支えるコミュニティがあり、さらに都市部、中山間地域それぞれの問題を理解し合う相互のコミュニケーションがある、という風に、3次元の関係図をうまく作っていけると良い。
     政権交代で日本中の雰囲気が変わったという実感があるが、そういった「変化に追いついていく」のではなく、「言われなくても京都はやっていますよ」というくらいの計画を立てるべき。
  •  環境問題や教育問題はすべてのテーマに横断的に関連してくる中で、各部会提案をどのように体系的にまとめ上げていくのかが一番大事。
     特に、環境について、京都はこれまで先進的にやってきているが、それをどこまで大胆に出していけるか。今の京都の風土をうまくいかせば、京都ならではの部分をうまく出していけると思うが、京都らしさを相当大胆に出して行けなければならないという印象。
     また、すべての問題は教育にかかってくるので、子どもの教育、家庭教育をどのように向上させていくかも重要な課題。
     加えて、身近な経営者の方々に聞くと、面接に来る人の5分の1も就職について真剣味がないという話。教育についても、働く意欲だとか、家庭を築き上げていく意欲、地域を盛り上げていく意欲というような元来の京都らしさの部分を出すことが大事。それが企業を育て、産業を育てることにもなる。
  •  労働意欲がどこで培われるかと考えるとき、それは子ども時代ではないか。子ども時代に遊び込んで生きる力を身につけ、そして幼稚園児、保育園児でも、他者のために汗を流すことに喜びを感じるまでに成長する。その遊び込む環境、遊び込むことのできる人間関係が、将来の京都府を支える上で不可欠
  •  「日本の中の京都」ではなく「世界の中の京都」という視点は大事。ここであげられているような成果目標やミッションは、他の地域で議論した時にも出てくるとは思うが、それを京都で実行していく中でどうやって京都らしさを出していけるかというときには、「世界の中の京都」という視点によれば、10年後、20年後に「京都モデル」として他の国、県、地域が見習うようなものが出てくるのではないか。
     また、他の部会の議論とも相互にリンクしている中で、この膨大なまとめをどのように府民に見せるか、すぐ理解していただけるような形にまとめていけるかが今後の課題
  •  これだけ多くの伝統文化、伝統産業が京都にありながら、京都に生まれ育ち、京都に住む人間に、それらを残そうという気持ちが薄れているのではないかという危惧。
     また、このまとめを、10月の府民交流会だけでなく、どのような形で府民一人ひとりに伝え、それを実践し、10年後、20年後に反映していくのかということが今後の本当の課題
  •  各部会が分かれて議論しても相互に絡み合っているというのがよく分かったが、これをどのように全体としてうまく組み合わせていけるかが最後の詰めの段階に必要。
     また、知事によれば「京都ならではのビジョン」ということであるので、どの地域、どの都道府県でも必要な施策があって、その上に「京都ならこれをする」というものを強く打ち出していく必要がある。今までにも委員の皆さんから意見が出ているので、それをうまく表現できれば良い。

 

 

2 府内5カ所で開催された府民交流会について、資料4に基づき、事務局から説明を行った後、各府民交流会に出席した委員から、感想等を報告いただいた。
報告及びそれに対する委員等からの主な意見等は以下のとおり

(資料4)府民交流会報告(PDF:868KB)

 

  •  丹後での府民交流会に出席。
     ともに出席された市長さん、町長さんはもちろんのこと、一般の方からの御意見にも、道路、鉄道や広域下水道といったインフラ整備に対する要望、基盤整備の遅れていることに対する御意見が多かったことが印象的。また、地産地消の取組に対する意見もあった。
     また、環境問題について、100年後に海水面が1メートル上昇するという話について、天橋立にどのように手を打っていくかという質問があったが、「行政はどうするか、ではなく、みんなで考え、できることからCO2の削減などをやっていく、我々が行動を起こすべき」と回答したところ。
     加えて、話は違うが、教育に関連して、自分の地域のことを言えば、高学歴が問題ではなく、専門性のある人が地域に帰ってこないことが問題。進学に当たって、「どこでも良い」ということではなく、先生と生徒の間で、「地域に帰るならば、このような専門性のある大学に行くように」というやりとりが必要。このことが地域の弱体化にもつながっている印象
  •  中丹での府民交流会に出席。
     中丹は福知山市、舞鶴市、綾部市という3市からなり、工業団地、北の玄関口と言われる舞鶴港がある中で、知事からは「基盤が揃っている地域だ」という発言があったが、会場からは、高齢化が著しいという意見。
     また、京都府北部のポテンシャルが下がってきている中で、紫ずきんや万願寺唐辛子といったおいしい食材について、舞鶴港を利用しながら広く中丹ブランドとして打ち出せないかという意見もあった。
     また、一番困っていることとして、イノシシ、シカ、猿、熊といった有害鳥獣の問題。これらといかに共生していくかが課題
  •  丹後と南丹の府民交流会に出席。
     両地域の違いとして、丹後では地域のコミュニティがまだ生きているという印象
  •  南丹と山城の府民交流会に出席。
     最初は、「このような課題で人が集まるのか」と考えたが、会場は一杯になった上、時間が許す限り皆さん積極的に思いをぶつけられたという印象。それだけ皆さんの思いが強いことを実感
  •  各地域でたくさん府民にお集まりいただき、かつ積極的なお話があったということだが、どのように広報し、どのような方たちにお集まりいただいたのか。
     また、自然にそれだけの方がお集まりいただくとすれば、地域の方々にはそのような機会が乏しいという枯渇感のようなものがあるのか。
  •  広報については、新聞に掲載していただくとともに、月1回ポスティングしている広報誌「府民だより」にも掲載。それらを通じて、管内の市町村や各方面に広報。
     また、アンケートには、「このような機会をもっと持って欲しい」という回答が多く、このような機会が待ち望まれていることを実感。但し、お年寄りの方が中心であり、若い方が会場に来られるようにならないといろいろな意見がいただけないという反省点も。

 


3 「行政運営の基本理念・原則となる条例(仮称)」の検討状況について、参考資料に基づき、高木委員(同条例検討委員会・座長)から報告いただいた。報告内容は以下のとおり

(参考資料)条例検討委員会 概要(PDF:144KB)

(参考資料)条例検討委員会 報告書( PDFファイル ,1MB)(PDF:1,099KB)

 

  •  ビジョン懇話会と条例検討委員会の関係について、基本条例と長期ビジョンと中期計画が「明日の京都」全体の3本柱。このうち、長期ビジョンと中期計画をこちらのビジョン懇話会で検討。そこでは10年後、20年後を見据えてどういう京都府社会があって欲しいか、また、中期的な4~5年間について検討。それと並行して知事から諮問を受けたのが基本条例であり、どのような考え方で何を大切にしながら府政を進めていくか、府政の運営の基本を条例という形にするというもの。府民の意思を条例の形にし、それによって知事や府庁の職員を統制することになる。
  •  他の都道府県でやっていることはモデルにならない。基本条例と言われるものは、最近10年程、市町村レベルでは比較的ポピュラーだが、都道府県レベルでは北海道と神奈川県の2つ。
     そのうち北海道は、不祥事を受け、行政の襟を正すという趣旨から制定。また、神奈川県は、いわゆる「参加民主主義」、市町村ができないことを都道府県が、都道府県がやれないことを国がやるという理論に基づいたラディカルな条例を制定
  •  検討委員会のスタートは昨年8月、このビジョン懇話会のスタートとほぼ同時期。ここから1年余りをかけて議論を積み上げてきたところ。メンバーは9名、首長、政治学者、NPOの方、社会福祉関係者など
  •  地方分権改革により、いわゆる地域主権型行政というものが要請されている中、条例制定を通じて、霞ヶ関を中心とした中央集権を否定するのか、あるいは国と連携し、有機的一体の行政としてやるべきことをやると謳うのか、この点について委員の意見は必ずしも同じではない。そこで、全体の流れとして、他にない京都の良さを生かせるよう、理念を中心に記述。神奈川県のように意思決定のプロセスに重点を置くのではなく、「何を目指すか」を大事にしようということから、3つの基本理念を掲げたところ
  •  3つの基本理念として、まず、「人を大切にし、人がつながり支え合う、心豊かな社会づくり」。これがさらに、「誰にも」優しい、「誰にも」分かりやすいという【ユニバーサルの視点】と、京都の特徴をいかす【京都の「和」、共生の視点】というもので2つに分けられる。
     2番目の理念として、「府民を支え、地域の活動を大切にする社会づくり」。これまでの地域力再生のプロジェクトとの関係を重視。
     3番目として、「多様な主体が共に役割を担う社会づくり」。いわゆる「上から目線」ではなく、社会の中で行政は1つのパートナーであるという新しい考え方。私的な個人やその集まりである団体の中には公共的な役割を果たすものもあり、公共的な仕事は、地方公共団体、国の独占ではないという考え方。これがいわゆる「新しい公共」の考え方
  •  3つの基本理念を実現するための手段として、行政運営のルールとしての5つの基本原則。
     「府民が起点となり、府民が生かされる府政」、「府民の安心と活力の向上を支える府政」、「府民によく見える、信頼される府政」、「府民の参画と協働を尊重し、支える府政」、「市町村等との連携・協力による府政」の5つにより3つの基本理念を実現、そしてこの基本原則を実現するための細かなルールは基本条例とは別の個別条例で具体的な制度を規定。このような形でうまく条文の形になれば、都道府県レベルでは神奈川県に次いで2番目の、本格的ないわゆる基本条例になり、しかも京都府の特徴が生かせるものとなる予定
  •  ただ、何故条例を作らなくてはいけないのかと、条例を作ればどう変わるのかが次の問題。ここについては必ずしもコンセンサスが得られているわけではないため、本当に条例が必要か否かを広く府民の皆さんに議論していただくことに意味があると検討委員会では認識を共有。
     そこで、[基本条例の意義・効果]ということについて、次の3つを提起。1つは、「行政運営の基本的な方向性が明確化される」という効果。2つ目は、「府の役割や責務、市町村や民間団体等との関係の基本が明確化される」という効果。3つ目は、「行政運営や地域づくりに対する意識が深まり、改革・改善等のプロセスが生まれる」という効果
  •  あとは、この報告書を受け、その後の議論がどうなされるか、ということだが、府民交流会では条例自体より、むしろ、どういう社会でありたいかという方にまず関心が沸いたところ。それを支えるものとして条例が必要であるということを、これから各方面に説明していきたい。

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