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茶業研究所の活動報告(月報)

3月

令和4年度茶業技術研修生修了式

当所では、茶業の担い手確保と技術や知識に加え経営力を持った人材を育成するため、大正14年から本研修制度を実施しています。
令和4年度は、それぞれ京都市、宇治市、宇治田原町から入所した3名が1年間の研修期間を終え、令和5年3月22日に修了しました。
修了式では、研修生が就農後に直面する課題の解決方法を習得するために1年間取り組んできた「プロジェクト研究」の成果を報告し、当所から修了証書を授与しました。
今年度の修了生を含め、これまでに本研修制度で201名の研修生が巣立っており、宇治茶を支える茶業後継者として活躍しています。

プロジェクト研究の成果を報告する研修生

プロジェクト研究の成果を報告する研修生

修了証書を受け取る研修生

修了証書を受け取る研修生

令和5年一番茶新芽の生育状況

当所では、所内の定点茶園において、一番茶新芽の萌芽※・生育状況について調査を行い、府内生産者や茶業団体等に情報提供を行っています。
令和5年は3月の平均気温が平年より2.1度高く推移し、芽の生育が早いことから一番茶萌芽宣言は、平年より7日早い3月28日、昭和48年以降、最も早い宣言となりました。
今後は宇治茶生産者に霜害への必要な対策を促すとともに萌芽後5日毎に、新芽の生育状況を調査し、一番茶生産に役立つ情報としてホームページ等で発表します。
※萌芽:新芽の長さが包葉(芽を包んでいた葉)の約2倍になった状態のこと

 

報道機関に対して生育状況を説明する研究員

報道機関に対して生育状況を説明する研究員

萌芽した茶の芽

萌芽した茶の芽

2月

宇治茶の価値向上へ スマート農業などの研究成果を報告

当所は、京都府茶生産協議会、京都てん茶省力生産体系実証コンソーシアムと共催で2月10日に宇治茶会館(宇治市)にて研究報告会を開催しました。本会は、研究成果を速やかに生産者・茶商工業者に普及することで、宇治茶の価値・魅力を向上することを目的として開催し、オンライン参加者を含め約200名の茶関係者が出席しました。
当日は、研究成果として、2名の研究員から「茶業におけるスマート技術導入による省力化の実証結果」「簡易な保管容器で開封後も茶葉の品質を保つ保管方法の提案」について報告しました。また、同会場で「京都スマート茶業展示会in山城」が開催され、乗用型スマート防除機などの機械、資材の展示がありました。
会場では、実証実験に参加した生産者から新技術に取り組んだ体験談が紹介され、多くの出席者から、「理解しやすい報告で研究成果がよく分かった」との評価をいただくなど有意義な研究報告会となりました。

研究報告する研究員

研究報告する研究員

京都スマート茶業展示会の様子

京都スマート茶業展示会の様子

1月

小学生を対象とした抹茶飲み比べ体験

子供の抹茶に対する嗜好とその成分の特徴を調査するため、1月16日と20日に、宇治市立南部小学校小学5年生79名、6年生66名を対象に、新型コロナウイルス感染防止対策を講じながら抹茶飲み比べ体験を行いました。
体験では、うま味成分であるアミノ酸や渋味成分であるカテキンの含有量が異なる3種類の宇治抹茶を飲み比べ、苦味を感じる順番、好きな順番などをアンケートに回答いただきました。また最後にはそれぞれの抹茶について説明を行いました。
参加者からは「初めて抹茶を飲んだが、抹茶にはまりそう」「全部苦かった」などと、率直な感想が聞かれました。今後は、子供にも好まれる抹茶の特徴を明らかにすることで、飲みやすさを改善し新たな需要を創出するための方法を検討します。

抹茶を飲み比べる小学生

抹茶を飲み比べる小学生

抹茶を点てる研究員

抹茶を点てる研究員

12月

宇治茶の価値、魅力を発信 ~茶ムリエマスター講座~

当所は、山城広域振興局主催で開催された「茶ムリエマスター講座」に協力し、12月9日に宇治茶ムリエの認定者14名の見学を受入れ、新型コロナウイルス感染防止対策を講じながら当所の研究紹介、茶審査体験、茶園・工場案内を行いました。
今回の見学者は、宇治茶ムリエ認定者であったため、ある程度の知識をお持ちの方々でしたが、研究所ならではのより専門的な体験、見学により、「宇治茶にさらに興味が沸き、とても奥深いお茶がますます好きになった」「初めて茶の樹を見て、栽培から加工の流れ、茶の評価方法を知って貴重な体験となった」などの感想がありました。

注:「茶ムリエマスター講座」
「お茶する生活」の普及・定着に向けて、宇治茶の歴史や生産について「宇治茶ムリエ」講座で学び、「宇治茶ムリエ」認定を受けられた方を対象に、さらに宇治茶について理解を深めていただく講座 

当所の施設、研究を紹介

当所の施設、研究を紹介

茶の審査方法を説明

茶の審査方法を説明

11月

宇治茶実践型学舎4期生入舎式

当所は、宇治茶生産の担い手を確保し、新規茶業経営者の育成を図るため、令和元年度に「宇治茶実践型学舎」を設立し、京都府内での就業・就農を推進しています。
このたび、令和4年11月10日に令和4年度宇治茶実践型学舎入舎式を執り行い、新たに4期生1名が入舎しました。入舎生は、非農家出身ですが、宇治茶の栽培や製造に強い関心を持ち、約1ヶ月間の就農インターンシップ研修を経て、茶業での就農を目指すことを決意しました。
これから当所では、茶業経営に必要な茶園管理、製茶加工に関する基礎的な知識や技術の研修と就農予定地における先進農家の元での現地実習などを組み合わせた2年間のカリキュラムを通じて、入舎生のスムーズな就農に向けた準備を支援します。

出席者に紹介される学舎生

出席者に紹介される入舎生

宣誓する入所生

茶業の発展に努めると宣誓する入舎生

10月

厳正な茶園品評会審査のために審査研修会を開催

秋には、茶栽培技術の改善により宇治茶の生産性と品質の向上を図ることを目的に、府内各地で茶園品評会が開催されます。良質な宇治茶が生産される茶園は、生産者が丹精込めて育て上げたものであり、品評会には厳正な審査が求められます。
府内各地の茶園品評会が開催されるのに先立って、当所では、京都府茶生産協議会と共催で、茶園品評会の審査員となるJA、市町村、普及センター等の職員を対象に、審査研修会を開催しました。研修会は、当所の研究員により、実際の品評会と同様の採点を行いながら進めました。研修会後には、品評会の審査の流れがよく分かったといった感想がありました。
当所は今後も、宇治茶ブランドを守り盛り立てる取組を支援します。

審査方法を説明する研究員

審査方法を説明する研究員

9月

茶業技術研修生のプロジェクト研究活動

当所は4月に入所した3名の茶業技術研修生に対して、年間を通じて1人1課題のプロジェクト研究に取り組むよう指導しています。うち1名は肥料費が高騰する中、適切な施肥設計の検討に役立てるため、自園の土壌調査を行う課題を設定しました。まず所内茶園で職員が土壌調査方法の研修を行い意義や手順を説明しました。さらに先日は秋肥前の土壌状態を把握するため初回の土壌試料採取に職員が同行しました。
今後は研修生自身で定期的に土壌採取を行います。また当所職員は採取した土壌のpH、EC、無機態窒素含有量の分析やプロジェクト研究のとりまとめを指導していきます。

自園で土壌試料を採取する研修

 

 

 

 


自園で土壌試料を採取する研修生

自園で土壌試料を採取する研修生

 

 

 

 


自園で土壌試料を採取する研修生

8月

赤色資材による夏季被覆効果の検証

茶芽の生育は35℃以上では生育が著しく低下するため、猛暑日には夏季被覆注1が行われていますが、被覆内温度注2が下がると害虫の被害が拡大することが知られています。また、最近の農薬の高騰を受け、農薬に頼らない害虫の防除方法が求められています。
そこで、赤色資材が特定の害虫(アザミウマ類)の侵入を抑制できることに着目し、被覆内温度の低下効果と害虫侵入抑制効果の両方の効果を持つ新たな夏季被覆方法を模索するため、赤色資材による夏季被覆試験を開始しました。
今後、従来の黒色資材による夏季被覆と比較しながら調査を進めていきます。

注1 夏季被覆:茶園が高温になるのを防ぐために遮光率50%程度の黒色資材を棚掛け被覆すること
注2 被覆内温度:被覆をした茶園内の気温

赤色資材と黒色資材による夏季被覆の様子
赤色資材と黒色資材による夏季被覆の様子

調査機器設置の様子
調査機器設置の様子

7月

お茶をテーマに研究体験~夏休み自由研究プロジェクト~

宇治茶の情報発信拠点である当所は、府内小学生に宇治茶の魅力をより深く知ってもらおうと、本年度で4回目となる夏休み自由研究プロジェクトを7月27日に開催しました。
プロジェクトでは、自由研究テーマとして宇治茶を取り上げてもらために、2つの体験コース(1.茶園の虫を観察しよう、2.お茶を鑑定し成分を測ろう)を企画し、9家族26名(うち小学生16名)に参加いただきました。
参加者は、「オオシオカラトンボを捕まえられてうれしかった」「玉露のうまみがじゅわっとあふれてうれしかった」「機械でたくさんのお茶の成分が調べられてびっくりした」と大変喜ばれました。当所では、研究所の特徴を活かした宇治茶の情報発信を続け、宇治茶ファンの裾野を広げることで、茶業振興に貢献していきます。


研究内容をわかりやすく紹介


茶園にいる虫を観察


分析機でお茶の成分の測定


お茶の審査に挑戦

6月

宇治茶実践型学舎の二番茶期現地実習を実施

当所では、令和元度から宇治茶実践型学舎を開講し、新規に宇治茶生産農家を目指す担い手の育成を進めており、令和4年1月に3期生が1名入舎しました。
当所は、学舎3期生に対して一番茶製茶実習で基礎的な栽培管理方法、製茶方法の研修を実施したあと、3期生の就農予定地である南山城村で茶業後継者、新規就農者の確保、育成を目指す南やましろ村茶業塾(事務局:南山城村)の茶業指導員8経営体に協力いただき、6月~7月に二番茶の現地実習を行っています。
学舎生は、就農予定地で多くの先輩経営者と交流し、より実践的な実習を行うことで、現場の経営感覚に触れながら地元生産者との信頼関係を深め、スムーズな就農に向けた準備を進めています。


番茶の製造実習(株式会社K)


揉み茶の摘採、製造実習(共同製茶組合K)


茶園管理実習(共同製茶組合T)


てん茶の摘採、製造実習(個人経営体I)

 

5月

宇治茶実践型学舎の一番茶期実習を実施

当所では、令和元度から宇治茶実践型学舎を開講し、新規に宇治茶生産農家を目指す担い手の育成を進めており、令和4年1月に3期生が1名入舎しました。
5月2日~23日に当所の一番茶期の摘採・製造実習を実施しました。学舎生にとって、年に一度の貴重な一番茶期の作業経験であり、摘採機の取扱いや揉み茶・てん茶製造方法を研究員から学びました。また、5月27日には全農京都茶市場での流通状況を見学しました。
6月以降は、南山城村において複数の生産者の元で実地研修を行い、茶業技術の習得や農業者との信頼関係を深め、就農に向けた準備を進めます。

被覆茶の摘採実習てん茶の製造実習その1

てん茶の製造実習その2茶市場の見学

左上から右回りに:被覆茶の摘採実習(当所)、てん茶の製造実習(当所)、茶市場の見学(JA全農京都 茶市場)、てん茶の製造実習(当所)

4月

今年の茶の芽の生育状況は

桜の花の咲く頃、茶の芽は力強く芽吹きます。当所では、所内標準茶園のおよそ350芽の調査結果から、芽吹きの時期を萌芽宣言として発表しており、防霜等の作業を滞りなく進めるよう、茶関係者に呼びかけています。本年は4月6日に萌芽宣言をしました。また、萌芽後5日毎に、新芽の生育状況を調査し、発表しています。本年は、冬の寒さが厳しかったことから生育の始まりは遅かったものの、春は温暖に経過したことから、新芽の生育は順調です。今後も、綿密な調査を行い、宇治茶生産を支える情報として発信します。

茶の新芽長と新葉数を調査
茶の新芽長と新葉数を調査

令和4年度茶業技術研修生入所式

当所では、茶業の担い手確保と技術や知識に加え経営力を持った人材を育成するため、大正14年から本研修を実施しており、現在までに198名の研修生を宇治茶を支える現場に送り出しています。
令和4年度は、入所式が4月11日に開催され、京都市、宇治市、宇治田原町から各1名の計3名が入所しました。研修生は、当所職員の指導を受けながら、1年間のほ場実習、製茶実習、講義カリキュラムを通じて、茶業経営の技能の習得に努めるとともに、就農後に直面する課題を想定し、1人1課題のプロジェクト研究に取り組みます。

所長の式辞を聞く研修生入所にあたり宣誓する研修生
左:所長の式辞を聞く研修生
右:入所にあたり宣誓する研修生


 

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お問い合わせ

農林水産部京都府農林水産技術センター 茶業研究所

宇治市白川中ノ薗1

ファックス:0774-22-5877

ngc-chaken@pref.kyoto.lg.jp