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茶葉エキス粉末の開発について

1 はじめに

緑茶には、人体の生理機能を調節する各種機能性成分(カテキン類、各種ビタミン類、カフェイン、各種ミネラル類等)が豊富に含まれており、近年の消費者の健康志向とも相まって、茶への期待は高まってきています。

このような背景の中、当茶業研究所においても、平成3年度から緑茶の消費需要活性化を目的として、茶葉に含まれる各種機能性成分の有効利用が図れ、しかも食品や非食品等に幅広く適用できる緑茶利用商品の素材開発に取り組んできました。

その結果、茶生葉を蒸した後、圧搾し、得られる搾汁液( エキス )を乾燥するといった、簡単な加工法によって、これまでにない茶生葉の素材化技術を開発することができました。

2 茶葉エキス粉末の製造法

今回開発した「茶葉エキス粉末」の製造法の概略は次のとおりです。

ア.摘採した茶生葉(図「茶葉エキス粉末の製造工程」のNO.1)を蒸熱処理します。
イ.これをフードカッターで5ミリ角程度に粉砕します(図「茶葉エキス粉末の製造工程」のNO.2)。
ウ.圧搾機を用いて170kgf/cm2(1平方センチ当たり170重量キロ)の圧力で30分間搾汁処理します(図「茶葉エキス粉末の製造工程」のNO.3)。
エ.得られた搾汁液( エキス )にデキストリンからなる粉末安定化剤を添加します。
オ.真空凍結乾燥後粉末化して出来上がりです((図「茶葉エキス粉末の製造工程」のNO.4、5)。

  


図 茶葉エキス粉末の製造工程

圧搾処理による搾汁率(搾汁に供した蒸し葉重量に対する搾汁液重量の比率)は、一番茶及び二番茶期試料ともに、約40パーセントです。また、搾汁液中の固形分量は7パーセント前後でした。デキストリンを搾汁液に添加するのは、乾燥して得られる粉末を安定化するためと搾汁液の固形分量を高めて乾燥効率を良くするためです。

3 茶葉エキス粉末の特徴点

これまでに、緑茶を原料とした乾燥粉末品(インスタントティー等)は市販もされており、その製造技術も一定確立されています。これら製品と茶葉エキス粉末の製法を比較しますと、以下のような特徴があります。

  • 従来の緑茶抽出物乾燥品(インスタントティー等)は、原料として、すでに製品となった緑茶を使用しているものが大半です。これを湯水で抽出し、濃縮して乾燥・粉末化します。茶葉エキス粉末では、従来の製茶製造工程を省略することができます。
  • 茶葉から直接搾汁処理によって得られる搾汁液中には、加熱・濃縮処理等で損失しやすい成分をも高含量で含んでいます。この液を粉末化するので、各種機能性成分に富んだ茶葉エキス粉末を得ることができます。(表参照)
  • 粉末状で取扱が簡便です。湯水にも容易に溶けるので、簡単で、しかも旨味成分のアミノ酸やビタミンC等、機能性成分を豊富に含んだインスタントティーとして、また、他の食品と複合的に使用することで、緑茶の機能性・風味を付与できる、新しい食品素材としての利用が期待できます。

表 茶葉エキス粉末等の化学成分 カテキン

  カテキン (%) ビタミンC (%) アミノ酸 (%) カフェイン (%)
茶葉エキス粉末 注1 17から22 1.8から3.7 3から18 3.3から5.3
市販インスタントティー 注2 11から12 0.6から1.3 注3 1.5から2.0 2.2から2.4
煎茶 注4 12.9から14.7 0.25 1.46から3.53 2.77から3.49

注1 含有量に幅があるのは、原料茶生葉の摘採時期(一番茶又は二番茶)及び栽培方法の違いによります。
また、この化学成分値は粉末安定化剤(デキストリン)を添加していない場合の分析値です。
粉末安定化剤を添加する場合、添加割合によっても異なりますが、各成分量は3分の1から2分の1になります。
注2 当茶業研究所調べ
注3 添加と表記
注4 「茶の化学」 (村松敬一郎 編、朝倉出版)より

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