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宇治茶の無機元素分析による産地判別技術の確立

 茶は一般に、全国各地で生産された荒茶がブレンドされ、その結果、市場では様々な茶が流通しています。このような現況から、原産地を確認したいという消費者ニーズが一段と高まりつつあります。そこで、正しい表示に基づいた茶の流通を促すため、宇治茶の主要産地の煎茶およびてん茶の無機元素分析を行い、産地判別技術確立の基礎資料を得ました。
 無機元素分析は、誘導結合型プラズマ発光分析装置(ICPS-7000:島津製作所製)を使用した。測定元素は、茶に含まれると考えられるAl、B、Ba、Cu、Fe、Li、Mg、Mn、Ni、Sr、およびZnの11元素を対象としました。
 試料茶について、煎茶は京都府内の主要茶産地から生葉19点、荒茶30点及び栽培土壌19点を採取し(2002年から2004年産)、近隣県の三重県、滋賀県および奈良県(以下「関係三県」とします)については、荒茶49点を採取しました(2003年から2004年産)。てん茶については、京都府北部の中丹地域と南部の山城地域の生葉29点、荒茶28点及び栽培土壌29点を採取しました(2003年から2004年産)。

1 生葉と土壌の関係について

 茶葉に含まれる無機元素は、主にその栽培土壌に由来すると考えられます。茶生葉と栽培土壌との無機元素含有率の関連性について検討したところ、煎茶では、Al(r=0.533 5パーセントで有意)、Mn(r=0.472 5パーセントで有意)、Fe(r=0.481 5パーセントで有意)およびZn(r=0.470 5パーセントで有意)に有意な正の相関関係が認められました(一番茶)。てん茶では、Al(r=0.445 5パーセントで有意)、Mn(r=0.734 1パーセントで有意)、Fe(r=0.382 5パーセントで有意)およびCu(r=0.463 5パーセントで有意)に有意な正の相関関係が認められました(一番茶)。以上の事から、茶葉と栽培土壌の間には、無機元素含有率において一定の関連性があることを確認しました。

2 煎茶の原産地判別

 煎茶について、宇治茶産地である京都府と関係三県間の判別の可能性について検討を行いました。
 全試料で検出された11元素(Al、B、Ba、Cu、Fe、Li、Mg、Mn、Ni、SrおよびZn)の含有率を変数として、線形判別分析(変数増減法)を適用したところ、京都府と関係三県の判別にはAl、Ba、Cu、Ni、SrおよびZnの6元素が有効であることが明らかとなりました。その判別的中率は京都府内産82パーセント(30点中25点判別)、関係三県産94パーセント(49点中46点判別)でありました。Cu(一番茶生葉 5パーセントで有意、荒茶 1パーセントで有意)およびZn(生葉、荒茶ともに 1パーセントで有意)の含有率については京都府と関係三県の一番茶生葉および荒茶で有意差(Cu(一番茶生葉 5パーセントで有意、荒茶 1パーセントで有意、Zn(生葉、荒茶ともに 1パーセントで有意))が認められ、これらの元素が判別に寄与したものと考えられます。

3 てん茶の原産地判別

 てん茶については、京都府内における原産地判別の可能性について検討を行いました。
 煎茶の場合と同様に、11元素の含有率を変数として線形判別分析(変数増減法)を適用したところ、中丹地域と山城地域の判別にはB、Ba、CuおよびNiの4元素が有効であることがわかりました。

 

煎茶の判別分析結果

てん茶の判別分析結果

 

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