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芦別市では、新エネルギーの具体的な導入の可能性を模索するため、平成21年度に「芦別市地域新エネルギービジョン」を策定されました。このビジョンでは、7つの重点プロジェクトが掲げられていましたが、同市の面積の約88%が山林という地域特性から、豊富な資源として存在する林地残材等を活用することが産業の活性化や雇用の創出を図る上でも有望なプロジェクトと判断し、「緑の分権改革」推進事業(当時の総務省事業)に提案、採択され、木質バイオマスの有効利用に係る実証調査に着手されました。
実証調査の結果、チップ原料となる林地残材の使用可能量が年間推計3,293トンであり、原材料が十分確保できることがわかりました。また、木質チップボイラーの導入先としては、年間を通じて重油ボイラーを稼働している市内公共施設芦別温泉スターライトホテルが最適とされ、市では事業化に向けて、先進地での導入事例を参考に導入ボイラーを選定されました。
ボイラーは、林野庁の森林整備加速化林業再生事業を活用し、森林資源の有効活用事業として導入され、平成26年3月から稼働しています。整備に要した経費約3億円は、林野庁の林業再生事業補助金のほか、林業再生交付金(地域の元気臨時交付金)、過疎対策事業債を活用されたとのことでした。
また、実証調査に参加されていた地元の民間事業者は、チップボイラーが導入されれば何十年もチップの製造ができるというしっかりとした出口があることから興味を持って進められ、平成24年に「芦別木質バイオマス開発協同組合」を設立し、原料となる林地残材の収集・運搬やチップの製造・販売までを行っておられ、新たに3名の雇用が生まれたとのことでした。
この取組では、これまで山中に捨てられていた林地残材を活用してチップ燃料を製造することにより、地域課題であった森林の保全・整備、雇用の創出、二酸化炭素排出量の削減などが図られるとともに、重油を購入することで地域外に流れていた多大な金額を地域内で循環させることができるようになったとのことでした。
なお、木質バイオマスを使用することでのコストの削減にも期待を持たれていますが、重油価格の変動に大きく左右されるとのことで、市では、政策としてチップボイラーを導入しており、毎年度効果を測定しながら、マイナスになった場合には、補填をしながら事業を展開されていくとのことでした。
概要説明を聴取した後、芦別温泉スターライトホテルを視察
東川町の人口推移は、昭和25年の人口10,754人をピークにその後減少傾向が続き、平成5年度に7,000人を切りましたが、平成6年度以降人口が増えており、平成28年7月末現在8,117人となっています。
同町は、昭和60年に世界初の写真の町を宣言され写真文化を中心としたまちづくりを積極的に展開されています。また、7年前からは短期の日本語研修生受け入れ事業を開始し、昨年10月には日本初の公立の日本語学校を開設されました。
さらに、職員のアイデアによって生まれた新婚姻届・出生届、君の椅子事業、平成15年からの幼稚園と保育所の一元化、ふるさと納税制度を活用した「ひがしかわ株主制度」の導入などさまざまな取組を行っておられ、これらの取組の相乗効果により、国内外の多様な人とのつながりで町の知名度、イメージアップが図られ、その結果、同町に住んでみたいという人が少しずつ増えてきたとのことでした。
町では、移住者が増え、住居が不足する状態であったことから、平成15年から3年間、民間賃貸住宅建設への補助や、平成25,26年の単身者向けを含めた民間賃貸住宅建築支援などをされていますが、現在320戸ある民間賃貸住宅は、7月末現在空きがなく、住むところを探すのが難しい状況とのことです。
また、平成16年度からは宅地造成も行われていますが、売れ行きがよく、今年度新たに22区画を造成し、10月には分譲を開始される予定です。同町の宅地造成は、交付金事業等の組み入れにより道路や公園等の整備を行うことで低価格で提供できるよう工夫し、緑地率の高いゆとりある空間を形成しており、とても好評であるとのことでした。さらに子育て世代に入居してもらえるよう、学校や地域のコミュニティの存続も考慮して、小規模小学校の周囲に計画的に宅地造成を進めているとのことでした。
平成15年度からは新規起業者への支援事業をされており、昨年度までで80件の実績があり、クオリティが高く、安定的な経営をされているところが多く、特に30、40代の起業家が多いとのことでした。
東川町役場では、「予算がない」「前例がない」「やったことがない」という3つの“ない”は言ってはいけない不文律になっているとのことで、「予算がないのならどこかから探そう」「前例がないのであればうちでつくろう」と、職員、町民が一丸となってまちづくりを進めておられるとのことでした。
概要説明を聴取した後、展示された君の椅子事業で贈られた椅子を見学
美瑛町は、北海道のほぼ中央にある町で、昭和62年に風景写真家の写真ギャラリーの開設をきっかけに、同町の基幹産業である農業の畑作地帯が織りなす農業景観が「丘のまちびえい」として全国的に有名になりました。
それまで40万人であった観光客が年々増加し、平成10年には100万人を超え、さらに平成24年には、白銀地区近くの砂防堰堤に美瑛川の水が流れ込みできた青い池がパソコンの壁紙に掲載されたことをきっかけに、現在では年間170~180万人が訪れる町になっています。
また、平成17年には、町長の呼びかけで、フランスの「最も美しい村運動」をモデルとして、失ったら二度と取り戻せない日本の農山漁村の景観や環境・文化を守り、地域資源を生かしながら美しい村としての自立を目指すことを目的に、7つの自治体が集まって「日本で最も美しい村」連合を設立され、NPO法人として活動を行われており、京都府からは伊根町と和束町が加盟しています。
同町では、「美瑛の美しい農村景観」は地域のかけがえのない財産であり、次世代へ伝える責任があることから、平成15年に「美瑛の美しい景観を守り育てる条例」を制定。その後、国の景観法が制定され、平成18年には景観行政団体の指定を受け、さらに平成24年度には、北海道大学観光学高等研究センターと地域の景観保全・地域資源の活用に関して連携協定を結び、景観計画の策定に向けて調査研究を進め、平成27年3月、町の景観特性に基づいた具体的な景観形成の方針や基準を示した「美瑛町景観計画」を策定し、景観法の委任条例となるよう「美瑛の美しい景観を守り育てる条例」を全部改正されました。
現代社会は、のどかで美しい農村景観や「いやし」を求める傾向があり、観光客が増加し、観光産業を中心に大きな経済効果をもたらしており、「丘のまち」としての知名度の向上や町のイメージアップにより農産物の地域ブランド化が進んでいるとのことでした。
しかしながら、観光客の大半が通過型であることから、町の資産である自然環境や景観、そして農林業の営みを通して都市との交流を進め、地域経済の振興を図ることが緊急の課題となっているとのことで、平成27年には、民間の商業施設跡地をリニューアルし、町民をはじめ観光客にも広く利用できる交流施設として整備されるなど滞在型観光に向けた取組を進められています。今後は、滞在型や交流型の観光を推進し、観光産業と農業が連携した地域づくりを進められているとのことでした。
概要説明を聴取した後、新栄の丘展望公園、四季彩の丘を視察
富良野市では、平成13年に旧法に基づく中心市街地活性化基本計画の大臣認定を受け、駅前開発事業により、駅前地区を拡張し、公共交通の交通結節点という機能と、中心街活性化センターと位置付けた複合型施設を導入されました。
その後、民間病院の老朽化に伴う改築問題により、商店街と国道に面している一等地2,000坪の大きな空き地の利活用という課題が生じ、平成18年の「まちづくり三法」の改正を機に設立された「富良野市中心街活性化協議会」が中心となり、新たな「富良野市中心市街地活性化基本計画」を策定され、平成20年に認定を受けられました。
策定にあたっては、地元商工会議所や商店街などが平成15年に設立した「ふらのまちづくり株式会社」が中心となり官民協働で議論を重ねられたとのことで、この基本計画実現のため、まちづくり会社は設立当初1,035万円であった資本金を、当時の商工会議所会頭が中心となって8,350万円まで増資され、ハード事業の実施主体、公益性を合わせ持ったディベロッパーとして「フラノマルシェ事業」に着手されました。
フラノマルシェは、富良野は地元資源として豊富な食材があることから食を発信することを基本コンセプトに、町の玄関口、にぎわい滞留拠点として平成22年に誕生しました。初年度は55万人の入場者があり、昨年度は、フラノマルシェ2が完成したこともあり、あわせて118万人と年々右肩上がりに増えており、フラノマルシェによる波及効果は1.94倍とのことです。
まちづくり会社は、自分の利益だけを追求していくのではなく、波及させていくことがまちづくりの目的であるとのことで、順調に経営されており、3年連続で配当を出されています。市としても配当をあげているまちづくり会社があるということで、行政とまちづくり会社の両輪でまちの経営を考えていけるところが特徴であるとのことでした。
市では、再開発を使って面を埋めるというコンセプトで引き続き再開発事業に取り組み、商店街をはさんで、商業ゾーン、保育所、サービス付き高齢者向け住宅、病院があり、まちの中に都市機能の集積した新たな生活街を誕生させておられます。
有効求人倍率1.33倍と働き手が不足している、市街地の空き店舗がほとんどない、路線価も3年連続で上昇しているといった相乗効果も表れているとのことで、引き続き平成31年度まで中心市街地活性化基本計画に基づいた事業展開をして行かれるとのことでした。
概要説明を聴取した後、フラノマルシェを視察
十勝には、全国の5%強の耕地面積(約26万ヘクタール)があり、食料自給率は1,250%弱、馬鈴しょ、小麦、豆類、トウモロコシなどの生産量が全国トップクラスであり、HACCP対応の施設を備え、十勝型GAPを導入するなど安全安心の対応も取られています。さらに、大学、国の農業研究センターなど産業を支える試験研究機関があるという多くの強みがあるにもかかわらず、農業の産出額に比べて製造品の出荷額が他の地域と比較してかなり低く、原料供給地となっているのが現状でした。
このため、帯広市長が、農業の強みを国をあげて成長させるオランダのすばらしいフードバレーという取組を、同様のポテンシャルがある十勝でも、地域にあるものを有効活用して地域振興を進めるための旗印として「フードバレーとかち」を6年前にスタートされました。
フードバレーとかちは、農林漁業を成長産業として基本価値を高める、それを元に付加価値をつける、そして十勝の魅力を売り込むという3つを回転させ、さらにバイオマスと融合させながら十勝型フードシステムを構築していこうという考え方で取組を進められています。
「フードバレーとかち推進協議会」の設立をはじめ定住自立圏の推進などオール十勝の仕組みをつくられ、平成23年には国際戦略総合特区の申請をし、輸出の促進により産業振興を図り、日本全体としても先進地となれるようほぼ毎年一つずつオールとかちで進める仕組みをステップアップされているとのことです。
輸出についても、長イモは平成11年から取り組まれ、順調に伸びており、現在は、特区の制度を活用し施設整備を進め、台湾や北米に向けて10億円を超える輸出額へと成長しているとのことでした。また、今年4月には北米仕様のと畜場を新たに整備され、さらに輸出が加速し、食肉の流通が大きく変わるのではと期待されていました。
さらにICTを活用した無人トラクタの実証実験や、GPS技術により農地を観測し、収穫時期や肥料のタイミングを見計らうといった実証実験も進められています。
様々な取組を展開するためには、人づくりが大切であり、100万円を上限とし、20~40代の方が課題をもって武者修行に取り組み、持ち帰ったものをビジネス化することを推進する「十勝人チャレンジ支援事業」に、3年間で29人が取り組まれ、これまで、国産のポップコーンの商品化など成果が見られるとのことです。
フードバレーとかちが地方創生戦略と合致していることから、さらに磨きをかけて事業を推進していかれるとのことでした。
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