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更新日:2017年8月2日

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子どもの健やかな育みに関する特別委員会管外調査(平成29年8月1日から2日)

国立教育政策研究所(東京都千代田区)

高校中退調査報告書の概要及び今後の課題について

国立教育政策研究所は、文部科学省所轄の教育に関する総合的な政策研究機関として、教育行政上の政策課題について、教育政策の企画・立案のための基礎的な調査研究や各種事業・協働研究を幅広く行っています。

国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターは、平成29年6月に「高校中退調査報告書」を発表されました。この調査は、平成23年度に、某県の公立高校に入学した全ての生徒(13,024人)が卒業するまでの3年間、毎年4月、7月、11月、2月(高校3年時の2月は除く)の計11回にわたり、高校生活に関する意識や行動を35項目の質問で尋ねる方法で行われました。回答は、「よく当てはまる」から「全く当てはまらない」までの4段階で求めて点数化し、中退者と非中退者に分けて集計されました。

この調査の大きな特徴は、35項目の質問を3年間継続して行うことにより、中退者の中退以前の状況をさかのぼって分析することが可能なところであり、この「追跡調査」により、どの時期のどのような原因で中退に至ったのか、また、中退の歯止めになっていることは何なのかが見えてきたとのことです。

高1中退者は、7月調査における「まじめに授業を受けている」「学校に行くのが楽しい」など7項目の平均値が大きく低下していることが明らかになりました。高1での中退を防ぐには、1学期における働きかけが重要になるとのことです。具体的には、基礎学力を定着させたり、学年(学校)行事の時期を再考したりすることは、結果的に高校中退防止に結びつくと考えられるとのことでした。

また、高1中退者、高2中退者、高3中退者で比較した場合、「授業がよくわかる」は、高1のみ大きく減少していることが明らかになりました。日々の授業において、生徒に「わかる喜び」を実感させるような工夫をすることは、中退防止に結びつくと考えられるとのことです。

更には、「まじめに授業を受けている」「学校行事に熱心に参加している」は、中退者と非中退者との間に常に統計的有意差があったとのことで、この2項目の改善は、いずれの学年、学期においても中退の歯止めになる可能性が高いとのことでした。

これらの中退防止に向けた働きかけは全て、子どもの健全育成に向けた働きかけでもあります。子どもの健全育成に向けた働きかけは、義務教育段階から求められているため、小・中学校の段階から取り組むことにより、結果的に高校中退防止に結びつくとも考えられるとのことでした。

主な質疑

  • 調査対象県の選定理由について
  • 調査結果の活用や周知について
  • 高校入試段階での対策について
  • 中学校・高校の連携について など

概要説明を聴取

埼玉県議会(埼玉県さいたま市)

官民挙げた児童養護施設退所者のアフターケアについて

埼玉県の平成23年度の調査によると、埼玉県の児童養護施設の退所者の74.4パーセントが就職先を3年以内に離職、就労者のうち正社員の割合は55.1パーセントであるなど、全国と比べ、離職率は高く、正社員率は低い状況にあります。また、大学進学率も13.8パーセントと低い現状にあります。

このような中、埼玉県では、平成26年度から全国に先駆けて「官民挙げた児童養護施設退所者のアフターケア」プロジェクトを推進されています。

「児童養護施設退所者を10年支える自立支援事業(ささえーる)」では、就労支援及び進学支援、生活支援を行っておられます。

就労支援の「未来へのスタート応援事業」では、就職希望者を対象にセミナーや模擬面接の実施、職業人講話などを実施されており、就職率は3年連続で98パーセントを超えているとのことです。

進学支援の「希望の家事業」では、埼玉県が民間アパートを借り上げ、進学者に低額で提供したり、社会福祉士がマンツーマンで生活相談に応じたりするなどのサポートも行われています。平成29年7月時点において、県内には「希望の家」が3か所設置されており、12人が利用されているとのことでした。

生活支援の「退所者支援センター事業」は平成29年度の新規事業で、さいたま市内のマンションの一角を確保し、社会福祉士の資格をもつ支援員が退所者や施設職員からの相談の対応をしたり、居場所を提供しているとのことです。

その他にも、民間企業・団体による自立支援もあります。「埼玉県児童養護施設等サポーター制度」では、児童養護施設や乳児院等の施設とその入所児童及び退所児童を支援している企業・法人・団体をサポーターとして登録し、その支援活動をホームページで公表されています。平成29年6月現在、登録企業は7企業で、中には、1名を対象に返済不要の育英奨学金を4年間で最大750万円給付される企業もあるとのことです。

これらの取組により、児童養護施設退所者の大学等進学率は平成25年度の13.9パーセントから平成28年度は21.1パーセントに、就職希望者の就職率は78.2パーセントから100パーセントに上昇したとのことです。

埼玉県の5か年計画においては、児童養護施設退所者の大学等進学率を平成33年度までに27パーセントとする目標を掲げておられるため、今後も着実に取組を進めていきたいとのことでした。

主な質疑

  • 児童養護施設等サポーターのマッチングについて
  • 「希望の家」の配置状況について
  • 「希望の家」の支援員の勤務形態について
  • 児童養護施設における障害をもつ子どもの割合について
  • 児童養護施設退所者の生活保護の受給状況について
  • 埼玉県における子どもの貧困の実態調査の実施状況について など

公益財団法人日本財団、特定非営利活動法人 Learning for All【於:子どもの第三の居場所】(埼玉県戸田市)

家でも学校でもない「子どもの第三の居場所」の取組について

公益財団法人日本財団は、生活困難な子どもの問題解決に取り組もうと、株式会社ベネッセホールディングス等とともに「子どもの貧困対策プロジェクト」を開始されました。この事業は、家庭でも学校でもない「第三の居場所」を整備し、貧困の連鎖を断つよう自立支援を行うものです。

戸田市の「子どもの第三の居場所」は、平成28年11月に第1号拠点として開設されました。運営は、東京都内で学習支援の実績があるNPO法人Learning for Allに委託されており、スタッフは保育士や放課後児童指導員など、常時6人程度が配置されています。

「居場所」の所在地については、通う子どもに配慮し、非公開となっています。平日の放課後から午後9時まで、小学1から3年生約20人を受け入れ、宿題の見守り等の学習支援や絵本の読み聞かせを行われているほか、整理整頓等の生活習慣の指導や食事の提供などもされています。

「居場所」は、希望すれば誰でも利用できるわけではなく、保護者が日中に居宅外で就労している場合や長期入院している場合などの申し込み条件があり、保護者を対象とした施設見学や面談も行われています。募集については、広報をされていないこともあり、保護者からの申し込みは少なく、学校からの相談や紹介がほとんどとのことです。

「居場所」には、リビングルームや学習スペース、読書スペース、キッチン、シャワールーム、リネン室などの設備が備え付けられています。また、戸田市から貸し出された本を置いたり、コミュニケーションツールとして、スタッフが好きなものを棚に配置したりするなど、さまざまな工夫をされています。

今後は、「居場所」内の活動だけでなく、地域の方々と昔遊びを一緒にするなど、地域との交流も広げていきたいとのことでした。

「子どもの第三の居場所」の2号拠点は、平成29年7月に広島県尾道市内に開所され、平成32年を目途に全国で100箇所を整備される予定とのことでした。

主な質疑

  • 開設・運営の財源について
  • 「子どもの第三の居場所」の開設自治体の選定理由について
  • 子どもの様子や変化について
  • スタッフの資格について
  • スタッフの勤務体制について など

社会福祉法人至誠学舎立川【於:児童養護施設 至誠学園】(東京都立川市)

児童養護施設至誠学園の取組について

社会福祉法人至誠学舎立川は、「至誠」(誠の心)の精神をもとに少年保護を目的に、明治45年に稲永久一郎氏によって創設され、100年以上の歴史を持っています。

法人としては、児童養護施設をはじめ、障害者福祉施設や保育園、高齢者介護福祉施設など、複数の施設を開設されています。児童養護施設は、「至誠学園」の他にも、「至誠大地の家」、「至誠大空の家」があり、対象年齢や受け入れ条件が異なります。

「至誠学園」の定員は現在62人で、中・高生が入所者の7割を占めているとのことです。

至誠学園では、さまざまな理由で保護者と一緒に暮らすことができない2~20歳までの子どもたちが、本園と7つのグループホームで生活し、地域の学校へ通学しています。子どもの発達に合わせた自立支援とともに、早期に家庭復帰ができるよう、家庭復帰を前提としたファミリーケースワークを行うなど、より家庭に近い環境の中で子どもたちが育つことができるよう工夫されています。

地域との交流も盛んで、地域住民や学生ボランティアの協力を受け、サッカーやバレーボールなどのスポーツ活動をはじめ、舞踏や絵画など、子どもたちの情操を豊かにする活動にも力を入れて取り組まれています。また、節分やひな祭り、クリスマス会など、年間を通して多彩な行事が催されています。

また、施設退所後を見越したさまざまな取組もされています。具体的には、「資金計画」で、大学に進学した場合のアルバイトや奨学金などの収入、学費や一人暮らしの支出を想定し資金計画を立てる練習を施設職員とともにされています。その他にも、子どもたちのより良い進路選択につながるよう、「職業図鑑制作プロジェクト」として、さまざまな職業を紹介する冊子を作成されています。職業に関する子どもたちの情報は少ないということもあり、この取組は、子どもたちが小さい頃から進路を検討するのに役立っているとのことです。

今後も、子どもたちが1日も早く家庭復帰できるよう、また、自信をもって社会で自立できるように育成支援を進めていきたいとのことでした。

主な質疑

  • 創業者について
  • 入所児童の入所期間について
  • 生活環境について
  • 入所を反対する保護者への対応について
  • 法人が開設するその他の施設について など

子ども4

概要説明を聴取した後、施設を視察

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京都府議会事務局委員会課調査係

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