京都府 > 京都府感染症発生動向調査

文字サイズの変更

京都府感染症情報センター
  サイトマップ
京都府ホームページ 京都府保健環境研究所ホームページ
トップページ 今週の感染情報 情報バックナンバー 感染症情報センターとは アクセス リンク
情報バックナンバー

ホーム >> 情報バックナンバー >> 情報バックナンバー2010年 感染症 解説集


2010年(平成22年)解説 感染症について コメントバックナンバー

 インフルエンザ  RSウイルス感染症  咽頭結膜熱  A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 感染性胃腸炎  水痘  手足口病  伝染性紅斑
 突発性発疹  百日咳  ヘルパンギーナ  流行性耳下腺炎
 急性出血性結膜炎  流行性角結膜炎  ノロウイルス感染症  細菌性赤痢
 麻しん  結核  アメーバ赤痢  マラリア
 レジオネラ症  感染症予防(手洗い)

 バックナンバー トップ  2009年 バックナンバー   2008年 バックナンバー   2010年 バックナンバー

  
 インフルエンザ

 昨年末、第50週から第51週にかけ、インフルエンザ患者さんの1定点あたりの報告数が全国で1.41から2.06と増加、京都府でも0.76から1.15と増加し流行入りの目安である1.0を超え、全国から1週遅れで流行入りしました。今後、本格的な流行期に入っていくものと考えられます。
 国立感染症研究所の先月の速報では、新型インフルエンザウイルス(A/H1N1)の検出数が増加、一方でA香港型インフルエンザウイルス(A/H3N2)が減少し、新型インフルエンザウイルス(A/H1N1)の検出数がA香港型(A/H3N2)のそれを上回りました。また新型インフルエンザウイルス(A/H1N1)に対する抗体の保有状況が国立感染症研究所で調査されており、昨年12月に速報が出ています。それによると、10〜14歳、15〜19歳の年代で40倍以上の抗体価を有する人の割合が各々65%、64%と高く、一方0〜4歳、50歳以上の年代では13〜24%と低目になっているという結果でした。抗体はウイルスなどの病原体に感染したときに人の免疫系が作る蛋白で、抗体価はウイルスなどの病原体に対する抗体の量を反映し、抗体価が高いほど作られている抗体が多いことを示します。インフルエンザの場合には、40倍以上の抗体価があれば、罹患しても重症化予防の効果があるといわれています。抗体保有率の低い年代の方や重症化のリスクのある方(高齢者や基礎疾患(慢性疾患)を持つ方、妊婦や乳幼児)はワクチン接種を検討するようにして下さい。型の違いにより対処法が変わるわけではありません。引き続き手洗いやうがい、咳エチケットを心がけて下さい。睡眠不足や過労を避けることも大切です。

(2011年1月11日更新)

 インフルエンザの場合、流行入りの指標は定点医療機関当たりの患者報告数が1.0以上になることです。第48週はインフルエンザの患者さんの定点あたりの報告数が1.0を超えた県、すなわち流行入りした県が特に九州において増加しています。京都府と近隣の府県では定点1.0を超えたところはありませんが増加傾向にあります。今後も流行入りする地域が拡がるでしょう。
 今年は、これまでのところA香港型(A/H3N2)が新型インフルエンザ(A/H1N1)より多く報告されています。新型インフルエンザ(A/H1N1)は昨年小中高生の罹患者が多かったため、この年代で抗体保有率が高くなっていますが、罹患者の少なかった年代(乳幼児や50歳以上の中高年)では昨年罹患者が少なく、したがって抗体保有率も低いため今シーズン罹患の危険が高い年代です。インフルエンザワクチン接種の効果が期待できるようになるのは、接種から約2週間後からといわれています。高齢者や基礎疾患(慢性疾患)を持つ方、妊婦や乳幼児といった重症化のリスクのある方や希望される方は早めに接種をするようにしましょう。
 また感染性胃腸炎も増加しており、市内の一部では警報レベルに達していますし、冬期に増加するRSウイルス感染症の報告数も増えており今回5位に入りました。
 冬期には、インフルエンザだけではなくRSウイルス感染症感染性胃腸炎(この頃は主にノロウイルスによる)といった子供でよくみられる感染症の報告が多くなります。これらの感染経路の多くは、接触感染、飛沫感染ですので、普段からの手洗いと感冒症状のあるときには咳エチケットを心がけるようにして下さい。

(12月13日更新)

 全国的にインフルエンザの報告が増えてきています。特に北海道での報告数が多くなっています。昨年は別として、例年より早い段階で流行のピークに達する可能性があり、京都府でも今後さらに増加していくと予想されます。現時点ではA香港型が主体で推移しています。
 昨年(2009/2010のシーズン)に新型インフルエンザ(A/H1N1)が流行するまでは、A型インフルエンザはA香港型(A/H3N2)あるいはAソ連型(A/H1N1)が主体でした。2007/2008のシーズンには、久しぶりにAソ連型の流行が到来し、A香港型の占める割合が減少しました。2008/2009シーズンもAソ連型が主体でしたが、その後の2009/2010シーズンに新型インフルエンザが他を圧倒するようにパンデミックを起こしました。今年も新型インフルエンザについては注意する必要がありますが、現時点ではA香港型の割合の方が多くなっています。
 インフルエンザの症状は型により特異なものはありませんが、A香港型インフルエンザウイルスはAソ連型よりも重症感が強いと言われており、インフルエンザ脳症の多くがA香港型の感染に伴って発症しています。A香港型は“季節型”ですが、“季節型”だから軽い症状で済むというわけではありません。A香港型が過去2シーズンは流行の主体ではなかったことも考え合わせると、高齢者やお子さんだけではなく各年代で充分注意しておく必要がありそうです。ワクチン接種をすることでインフルエンザに罹患したとしても重症化を予防することが期待できますから、インフルエンザワクチンの接種をするようにしましょう。

(11月29日更新)

 今年は9月以降、昨年流行した新型インフルエンザウイルス(H1N1)だけではなく、昨年にはほとんどみられなかったA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)の集団発生もあり、学年(学級)閉鎖などの対応がとられています。現時点で流行といえる発生数ではないものの、昨年を除けば例年よりも学年(学級)閉鎖が行われる時期が早く、例年よりも流行のピークが早くなる可能性もあると思われます。また昨年ほとんど報告のなかったA香港型インフルエンザウイルス(H3N2)に感染する方が増える可能性もあります。
 昨年の流行では、新型インフルエンザ患者の大多数は若年者で、高齢者は少なかったのですが(推計受診者数は約2060万人(2009年第28週〜2010年第10週)、そのうち0〜14歳が約60%)、高齢の新型インフルエンザ患者に重症例が多い(とくに呼吸器などに持病がある方)という特徴がありました。また季節型インフルエンザでは重症者が少なかった40〜50歳代の患者さんで、重症者が多かったということも分かっています(その理由はよく分かっていません)。
 インフルエンザワクチンはインフルエンザ発症の予防や重症化の予防に効果が期待できます。インフルエンザワクチンの効果は6ヶ月ほどすれば無くなりますし、流行するインフルエンザウイルスの型は変わります。重症化のリスクが高いといわれる方(慢性呼吸器疾患や慢性心疾患、糖尿病などの代謝性疾患、腎機能障害、ステロイド内服などによる免疫機能低下、妊婦、乳幼児、高齢者)には特にワクチン接種が薦められますので、かかりつけの医療機関でご相談ください。
 なお、ワクチン以外にも日常的な対応策も重要です。インフルエンザは飛沫感染(患者さんが咳などをしたときに飛び散るウイルスを含んだ小さい水滴が他の人の呼吸器に着いて感染)や接触感染で拡がります。体力が落ちないように栄養をとり、睡眠を充分とるようにするだけでなく、流行時に人混みを避けたり、手洗いやうがいを習慣としたり、咳エチケット、マスク着用で感染予防、感染拡大予防を心がけて下さい。

(10月18日更新)

 10月から3価ワクチン(H1N1(2009)、A香港型、B型)、H1N1(2009)のみのワクチンの2種類がインフルエンザワクチンとして接種できるようになりました。
 今年8月10日にWHOは新型インフルエンザ(H1N1(2009))が世界的流行の状況から脱したことを宣言しました。しかし、昨年の流行時にはほとんどみられなかったH3N2(A香港型)など他の型の割合が増えているものの、現在もインドやタイなどでH1N1(2009)を主体としたインフルエンザの地域的な流行が続いています。日本でも9月に入り、日本国内各地でH1N1(2009)やH3N2(A香港型)によるインフルエンザの集団発生があり学級閉鎖や学年閉鎖が行われました。しかし現時点では流行と呼べる状況にはありません。
 昨年ワクチン接種をした方でもワクチンによって得られた免疫は弱くなっていきますし、昨年はほとんどみられなかったH1N1(2009)以外のインフルエンザウイルスにかかる方が増える可能性もあります。感染予防のため手洗いやうがいを行い、マスク着用といった対策を心がけてください。またワクチン接種により感染を100%防げるわけではありませんが、重症化の予防が期待できます。ワクチン接種も積極的に検討するようにしましょう。

(10月4日更新)

ページトップへ
  
 水痘(水疱瘡 みずぼうそう)

  京都府では、水痘(すなわち、水疱瘡 みずぼうそう)が47週から第2位に入っています。水痘は8〜11月には報告数が少なく、12月〜7月くらいに報告数が多い傾向があります。
 水痘は水痘ウイルスの感染が原因で、多くのヒトがかかります。いったん感染すると水痘が治った後もウイルスは知覚神経節に潜んでおり、免疫力が低下したりすると帯状疱疹として発症することがあります。
 水痘では、発疹が全身に出現し、発赤した丘疹から水疱を形成し、かさぶたを作って治っていきます。皮疹の全てがかさぶたにまでなれば感染性はありません。数日の間に次々と皮疹が出現していくので、水疱からかさぶたまで時期の異なる皮疹が同時期にみられることが特徴です。発疹出現後、大体6日間前後は感染性があります。合併症としては、皮疹への細菌感染、ウイルス性肺炎、脳炎、無菌性髄膜炎などがあります。15歳以上や1歳以下、免疫力の低い人では重症化することがあります。治療は軽症例では対症療法が基本で、細菌感染を防ぐためにカチリという外用薬を塗って皮疹が乾くようにします。水痘ウイルスに対しては抗ウイルス薬があり、重症例や重症化のおそれのある場合に使用します。
 感染経路は、飛沫感染、接触感染、空気感染です。麻疹ほどではないですが、感染力が強いウイルスです。ワクチン接種(ただし定期接種ではありません)が発症予防に有効ですし、接種後に発症しても(10〜20%程度です)極く軽症で済みます。

(12月20日更新)

ページトップへ
  
 ノロウイルス感染症

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生事例が多くなっています。発生のピークは例年12月となることが多く(ただし2009/2010シーズンは2010年1月にピークがずれました)、今年は2006年に次ぐ多さとなっています。
 ノロウイルスは大きく5つ(GT〜GX)に分類されますが、そのうち人に感染するのは主にGT、GUです。GTは15、GUは19と多数の遺伝子型に分かれるため、何度も感染を繰り返す場合があります。
 ノロウイルスは、患者の吐物や糞便にたくさん含まれ、症状改善後もしばらく(3〜7日間ほど)便中に排出されています。ごく少量のウイルスでも感染しうる感染性の強いウイルスで、しかも排出された後も寒い環境中では長く生き延びるため、冬期は2次感染する機会が多くなります。
 口から消化管へとノロウイルスが入り込むことで感染するのですが、口に入り込む経路としては、手指などを介する(接触感染)、ノロウイルスに汚染された食べ物の摂取(食中毒)、飛び散った吐物などが口に入る(飛沫感染)、があります。また環境中の塵に紛れたウイルス粒子を口に吸い込んでしまって感染(塵埃感染)することもあると言われています。
 このウイルスは次亜塩素酸や加熱(85度以上で1分以上)で感染性が無くなりますが、アルコール消毒は無効です。充分な手洗いが必要ですし、看護者が吐物の処理する場合には感染予防の対策が必要です。国立感染症研究所 感染症情報センターのホームページ厚生労働省のホームページも参照して下さい。

(12月6日更新)

 冬には感染性胃腸炎が流行します。その原因の一つにノロウイルスがあります。最近ノロウイルス感染の集団発生の事例が報道されていますが、これから増加していくと思われます。
 ノロウイルスは嘔吐、下痢などの急性胃腸炎の症状を引き起こします。1〜2日の潜伏期の後に、嘔気・嘔吐、次いで下痢が出現します。ノロウイルスを抑えるような薬はありませんし、予防のためのワクチンもありませんが、多くの場合は発症しても軽症で数日のうちに自然に改善します。しかし、幼児や高齢者などでは嘔吐・下痢にともなう脱水に対し点滴を必要とすることもありますし、稀に重症化することもあるので軽視はできません。
 感染経路は主として接触感染、また飛沫感染です。ウイルスは口から入り込みますが、感染源としては、感染者の吐物や便、あるいはそれらに汚染された衣類などが挙げられます。また、二枚貝がウイルスに汚染されていることがあり、生で食べて発症することがありますが(ノロウイルスは食中毒の原因の一つです)、十分加熱すれば大丈夫です。調理に使用した包丁などを熱湯消毒すると汚染された調理器具からの感染予防につながります。
 予防のためには、十分な手洗いが重要です。またノロウイルスは環境中でも生き続けることが可能なので二次感染予防のためには、吐物・便に汚染された衣類、あるいは床などを消毒する必要があります。処理する際にも感染する可能性がありますから、マスク・手袋を着用するなどの注意が必要です。また少量のウイルスでも感染しますし、また症状改善後も数日から1週間程の間は便中にウイルスが排出されるので、二次感染に対する注意は症状改善後も必要です。
 国立感染症研究所 感染症情報センターのホームページ厚生労働省のホームページも参照して下さい。

(11月8日更新)

ページトップへ
 
 感染性胃腸炎

 感染性胃腸炎は特定の原因菌ないし原因ウイルスによる胃腸炎を示しているのではなく、種々のウイルスや細菌などによる胃腸炎を一括して扱っている、いわば症候群としての呼び方です。いろんな病原体が原因としてありうるわけですが、大体一定の発生パターンを示しており、例年ピークが冬と春ころにあります。病原体分離の結果からは、初冬に始まるピークはノロウイルスが、春にみられるピークはロタウイルスが主な原因と考えられます。アデノウイルスも胃腸炎の原因になりますが、同じウイルスでもノロウイルスやロタウイルスのように、とくに特定の季節に多いということはないようです。また夏期には食中毒による感染性胃腸炎が増えます。カンピロバクター、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌などが挙げられます。
 症状としては、発熱や下痢、腹痛、吐き気、嘔吐などが共通してみられます。小児ではウイルス性胃腸炎が多いですが、乳幼児ではウイルス性胃腸炎にともない痙攣を起こすこともあります。嘔吐、下痢が激しいと、とくに小児や高齢者では脱水に陥ることもあります。こまめに水分を摂ることが大事です。
 吐物や下痢便に触れ、あまり手洗いをせずに飲食したりすることで経口感染しますから、手洗いをしっかりすること、吐物や下痢便の処理のときにはゴム手袋を用いるといった対策が必要です。また汚染された食べ物から感染することもありますから、手洗いに加え、調理器具を清潔に保つこと、食品を充分加熱することなどが必要です。

(9月6日更新)

ページトップへ
  
 感染症予防 手洗い

 感染性胃腸炎が増加しています。「感染性胃腸炎」は、ウイルスや細菌による胃腸炎で特定の原因によるものを指すわけではありません。冬季にはノロウイルスが原因の一つとなっていますが、ここのところ集団感染の事例が増えてきています。
 ノロウイルスに関して、予防のために充分な手洗いが重要であると述べましたが、手洗いは種々の感染症予防に重要です。昨年は感染性胃腸炎の報告が減少しましたが、これは新型インフルエンザの流行により手洗いなどへの意識が高まった結果であろうと言われています。
 手洗いの方法に関しては、インターネットでも情報が得られます。動画でも紹介されていますので、一度ご確認ください。厚生労働省動画チャンネル(MHLW channel)“正しい手洗い”、“マスクの着用“といった言葉で入力検索すれば、該当の動画がリストの中に出てきます。手洗いでは、丁寧に洗うこと、タオルは一人ずつ使いきりにすることが大切です。アルコール性の手指消毒剤も有用ですが、アルコールのみでは除くことができないウイルスもあります。インフルエンザウイルスには有効ですが、ノロウイルスには効果が期待できません。洗い流すという行為自体も大切なのです。
 昨年の新型インフルエンザのような大きな流行がないためか、ついついおろそかになりやすいですが、毎年インフルエンザやノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の流行がありますので、予防対策を普段から心がけるようにしましょう。

(11月22日更新)

ページトップへ
  
 RSウイルス感染症

 RSウイルスは、大きくA、Bと二つのタイプに分かれ、遺伝子的にさらに細かいグループに分かれます。感冒の原因ウイルスの一つで、冬期に(とくに都市部で)流行します。ほとんどの感染者が乳幼児で、全感染者のうち1歳以下が75%ほど、4歳以下が95%ほどを占めています。生後6ヶ月ほどは、お母さんからの抗体(移行抗体)が乳児を種々の感染から守りますが、RSウイルスに対しては不十分であるため生後6ヶ月までであってもRSウイルスに感染するおそれがあるのです。
 2〜8日間の潜伏期を経て、発熱・鼻水などの上気道炎症状が現れ、多くは数日の経過で改善していきますが、肺炎や細気管支炎などを合併する場合は感冒症状に続いて咳が強くなったり、ぜいぜいして息苦しそうにしたりします。入院治療が必要になることもあります。  乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%が、このRSウイルスによるものと報告されており、とくに3歳までの乳幼児では、上気道炎にとどまらず症状が強くなり、肺炎や細気管支炎、気管支炎を合併する頻度が高くなります。また1歳までの乳児では中耳炎の合併が多いことも知られています。とくに心肺機能の弱い乳幼児や低体重出生児は重症化する傾向があるといわれています。
 乳幼児のうちにほとんどがRSウイルスによる感染を経験し、その後も感染を繰り返しますが、年長児や成人では重症例は少なく、軽く済むことがほとんどです。
 感染経路は接触感染や飛沫感染です。家族内で感染が拡がることも多いので、手洗いを充分にしましょう。特に乳幼児のお子さんのいるお宅では症状の推移に注意をし、症状が強い場合など気にかかる点がある場合には医療機関にご相談下さい。

(11月15日更新)

ページトップへ
  
 レジオネラ症

 今週はレジオネラ症の報告がありました今年16例目で、昨年1年間では11例の報告がありました。
 レジオネラ症は、レジオネラ属の細菌による呼吸器感染症で、主にLegionella pneumophilaという菌が原因菌となります。肺炎型と、肺炎が無く発熱・頭痛がみられるポンティアック熱という病型があります。後者は、一過性に発熱や頭痛などがみられ改善しますが、前者は病状の悪化が早く、重篤化し命に関わることもある疾患です。
 レジオネラ属菌は、土壌や河川、湖など自然界に広く存在しており、この菌を含んだ水滴や土埃を吸い込むことで感染します。ヒトからヒトへは感染しません。入浴施設、給湯系、冷却塔などに、この菌がみられることがあり、これが感染源となった集団発生の事例もみられることがあります。ただ、この菌にさらされても必ず発症するわけではありません。発症する危険が高いのは、高齢者や糖尿病などの病気で治療中の方など抵抗力の低下した状態にある場合です。レジオネラ症が疑われた場合には、尿中抗原検査、喀痰検査(ヒメネス染色など)を行います。治療には抗生剤を使いますが、通常の細菌性肺炎に用いられるβラクタム系などの効果は無く、ニューキノロン系、マクロライド系などの抗生剤が選択されます。

(11月1日更新)

ページトップへ
  
 A群溶血性連鎖球菌(A群溶連菌)による病気:A群溶連菌咽頭炎、劇症型溶連菌感染症

 A群溶血性連鎖球菌(A群溶連菌)による病気は、A群溶連菌咽頭炎や猩紅熱、丹毒、膿痂疹、産褥熱、劇症型溶連菌感染症などがありますが、今回はA群溶連菌咽頭炎、劇症型溶連菌感染症を取り上げます。
 A群溶連菌咽頭炎は、学童に多い疾患です。咽頭や扁桃にA群溶連菌が感染し、同部が真っ赤になります。のどの痛みが強く、首のリンパ節が腫れ、発熱、時に腹痛を伴います。のどの症状の出現にやや遅れて、発疹や苺舌(舌の表面が苺のようにブツブツになる)がみられることもあります(猩紅熱)。飛沫感染をしますので、兄弟など家族内で感染することがあります。診断には培養検査や血液検査が用いられますが、迅速診断キットも利用されます。抗生剤治療により症状は数日もすれば改善しますが、リウマチ熱や急性糸球体腎炎、アレルギー性紫斑病といった続発症を来すことがあるため、症状が改善した後も抗生剤を指定された期間(約10日間ほどです)きっちりと服用することが非常に大切です。A群溶連菌は細胞壁の成分の違いによって細かく分類され、型が幾つもありますので、A群溶連菌咽頭炎を繰り返すこともあります。
 劇症型溶連菌感染症も主にA群溶連菌による感染症です。同菌による咽頭炎は子供に多いのですが、この疾患は30代以上の大人に多く、特に持病の無いような方でも発症します。2009年には全国で105例(京都府1例)の報告があり、今年はこれまでに全国97例(京都府2例)の報告がありました。咽頭痛、38度以上の発熱、四肢の筋肉痛などで始まり、急激に病状が進行し、数十時間のうちに種々の重篤な合併症をきたします。(敗血症と言って細菌感染による全身性の炎症反応を来たし、非常に速い経過で病状が悪化。血圧が低下、臓器不全に陥るのです。)抗生剤治療、また病状に応じて集中治療を行いますが、約30%の患者さんが死亡しています。なお患者さんからの二次感染や集団発生の事例は報告されていません。

(10月26日更新)

ページトップへ
  
 細菌性赤痢

 赤痢とは「赤い下痢」、すなわち「粘血混じりの下痢」ということです。ちなみに、白っぽい下痢が特徴である、ロタウイルスによる胃腸炎には、「白痢」という表現も用いられていました。
 現在赤痢といえば、細菌性赤痢かアメーバ赤痢のことを指します。アメーバ赤痢については別項の感染情報に記載しておりますので、今回は細菌性赤痢を取り上げます。
 細菌性赤痢の原因は赤痢菌(Shigella)です。1897年に志賀潔によって発見されたため、この名前があります。赤痢菌には、4種類(Shigella dysenteriae、S. flexneri、S. bodydii、S. sonnei)知られていますが、重症になりやすいS.dysenteriae感染は減り、軽症で経過する例の多いS. sonnei感染の割合が増えています。主に大腸炎を起こし、発熱、腹痛、下痢、嘔吐などで急に発症し、重症例では、しぶり腹、頻回の便意と粘血便が見られます。過去日本でも多くの患者がみられていましたが、上下水道の整備などもあり減少しています。2009年は、全国で181例の報告があり、そのうち国外での感染が126例と大半を占めるようになっており、輸入感染症としても注意が必要です。
 患者の便に汚染された手指や食べ物が原因で拡がり、少ない菌量でも感染しうるため家族内で二次感染が起こりえます。予防のために、手洗いは充分にする必要がありますし、細菌性赤痢の発生がみられる地域に旅行する際には、生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどは避けるようにする必要があります。感染地域としては、アジア地域(インドやインドネシアなど)が多くなっています。旅行時には、当該国の感染情報を検疫所のホームページなどで得るようにして下さい。

(10月8日更新)

ページトップへ
  
 麻疹(はしか)

 麻疹、すなわち“はしか”は麻疹ウイルスが原因の感染症です。京都府ではこれまで10例の報告があります。軽い病気と思われることもあるかもしれませんが、日本では過去「命定め」といわれ命が助からないこともある病気として知られていました。確かに医療の進歩により致死率は低下しましたが、先進国における麻疹の致死率は約0.1%ですし、世界的にみれば年間十数万人の死亡が報告されており、発展途上国における小児の主な死亡原因のうちの一つになっているのです。感染力が非常に強く、感染すればほとんどの人(90%以上といわれています)に症状が出るうえ、感染者の約30%に何らかの合併症を生じうることも、この疾患が恐れられる要因になっています。合併症としては、ウイルス性肺炎、細菌性肺炎、中耳炎、クループ症候群、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(英語の略語ではSSPE: subacute sclerosing panencephalitis です)が知られています。このうちSSPEは稀な合併症で10万人に1人くらいの発症といわれていますが、麻疹に罹って数年以上の経過(平均7年)を経て発症する脳の病気で、数カ月から数年という時間をかけて知的能力・運動能力が奪われてしまう予後の悪い疾患です。厚生労働省で難病特定疾患の一つに挙げられ研究が進められています。
 麻疹ウイルス自体をやっつける治療法はありませんが、ワクチンによる予防法が大変有効で、かからないように免疫をつけておくことが非常に大切です。予防といえば、マスクで予防ができるのかという疑問が出てきますが、空気中をただようウイルスを吸い込むことでも感染しますので麻疹をマスクで予防することはできません。(麻疹ウイルスは、接触感染・飛沫感染の他に空気感染(飛沫核感染)します。)
 WHOでは麻疹排除(国内で麻疹ウイルスが伝搬していない状態)のためには、ワクチンの接種率を95%以上にすることが必要としており、日本でもこれを目標としています。日本は2007年に2012年までに麻疹を排除することを掲げて取り組みを強化しています。現在は、麻疹のワクチンは1歳になってから(第1期:1歳になってからできるだけ早めが望ましい)、小学校にあがる前年度(第2期)の2回接種することになっています。また2007年には年長児から若年成人に麻疹の流行が起きましたが、これはこの年代で麻疹ウイルスに対する抗体が無かったり弱かったりしていた方が多かったためです。この世代への対策として2008年から5年間は中学1年生、高校3年生にも予防接種の機会を持てるようにしています。
 麻疹は、重大な合併症を起こすこともある恐い病気ですがワクチン接種により予防が可能な病気です。取り組みの結果、2008年から2009年にかけて麻疹の患者さんは11,015人から741人にまで大きく減少しました。ワクチンは必ず受けるようにしましょう。

(9月28日更新)

 
ページトップへ
  
 結核

 さて、厚生労働省は毎年9月24日から9月30日を結核予防週間として、結核の正しい知識の普及啓発を図ることにしています。京都府でも保健所で結核健康相談や講習会、また関係団体と協働し啓発活動などを例年行っています。
 2009年の結核登録者の集計結果が今年8月25日に厚生労働省より公表されました。今年第32週の感染情報では2008年の集計結果を元に結核の動向を取り上げていますが、今回は2009年の集計結果の概要をご紹介します。
 2009年の新規登録患者は24170人で2008年の24760人より若干減少しましたが、減少幅は小さくなっています。また結核にかかっている方は高齢者に多く、70歳以上で50.1%(2008年は48.9%)となり半数を超えました。他に20歳代の新規発症患者の約1/4が外国籍の方であること、感染性のある働き盛りの30歳代〜50歳代の患者さんが医療機関に受診するまでに時間がかかっていること(2ヶ月以上かかっている方が約3割)、患者さんの数に地域差があり大都市に多くなっていることが指摘されています。こうした特徴は昨年含め、ここ数年同様に推移しています。
 医療機関への受診まで長くかかれば、病状が悪化していく危険がありますし、感染者が拡がる危険も高くなります。2週間以上続くような長引く咳や痰、疲れやすさ、食欲低下といった症状があるようでしたら早めに医療機関を受診するようにしましょう。京都府の結核予防対策に関するホームページ公益財団法人結核予防会のホームページなどもご参照ください。後者では、「結核の常識」というパンフレットを閲覧・ダウンロードできます。

(9月21日更新)

 結核はかつて国民病とまでいわれ、死因の第一位でしたが昭和25年以降罹患率は減少しています。現在結核は治療可能な病気になり、2008年には死因第25位まで低下していますが、それでも24,760人もの新規の患者の発生があり(罹患率は人口10万対19.4)、WHOの定義では中蔓延国(人口10万対で10以上100未満)にあたります。決して過去の病気とは言えない現状です。
 最近の問題点としては、高齢者での発症が増えていること(新規発症患者は80歳以上でピーク、70歳以上の患者さんの割合が48.9%)、20歳代での新規発症者の約1/4が外国籍の患者さんであること、働き盛りの年齢で受診の遅れがみられる割合が多いことなどが挙げられます。早期診断は患者さん自身のためだけではなく、感染の拡大を防ぐためにも重要です。結核の症状で特徴的なものはなく、咳や痰、微熱、体のだるさ、食欲不振など風邪の症状に似ていますが、こうした症状が2週間以上続くときには、早めに医療機関を受診しましょう。  結核予防会結核研究所のホームページ京都府ホームページもご参照ください。

(8月23日更新)

ページトップへ
  
 マラリア

 マラリアはハマダラカの仲間によって媒介されたマラリア原虫によって起こる疾患で、高熱が特徴です。ヒトに感染するマラリア原虫は4種類で、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫があり、それぞれ熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアの原因となります。とくに熱帯熱マラリアは早期に治療を開始しないと重篤な経過をたどります。過去には、日本でも国内発生がみられましたが、1960年以降は、ほとんどが輸入例で国内発生はほとんどありません。しかし、WHOによれば世界的には感染症による死亡原因の第5位を占め、2008年には2〜3億人が罹患し、70万〜100万人が死亡しています。マラリア感染の可能性のある国は主にアフリカ、アジア、南アメリカの109カ国におよび、WHOで治療、予防対策が進められています。
 日本での報告例は輸入感染がほとんどで、熱帯熱マラリアか三日熱マラリアの頻度が多くなっています。マラリア原虫の種類により潜伏期間は異なり、潜伏期間の平均日数は、熱帯熱マラリアが最も短く12日、三日熱マラリアで15日です。ただ熱帯熱マラリア以外は、帰国後一ヶ月以上たってからの発症もありえます。診断にはマラリア流行地域への渡航歴の有無も大事ですので、医療機関受診時には海外渡航歴につき申告するようにしましょう。またマラリアと鑑別を要する発熱性疾患の一つとしてデング熱があります。これも輸入感染症の一つで、今年は報告例が多くなっています。海外渡航時には、滞在先で流行している疾患を確認するようにしてください。予防法・治療法などの情報を得ることができます。

(9月13日更新)

ページトップへ
  
 流行性耳下腺炎

 流行性耳下腺炎は、近年は4年毎に流行しており、今年は過去3年間よりも発生数が多くなっています。
 しかも流行性耳下腺炎は例年夏休みが明けてから報告数が多くなりますので、今後増加が予想されます。発熱、耳下腺の腫脹(両側が腫れると、いわゆる“お多福”のような顔になる)といった症状があるときには医療機関を受診しましょう。

(8月31日更新)

ページトップへ
  
 流行性角結膜炎

 流行性角結膜炎はアデノウイルス(いくつかの型が原因として知られていますが、主にD群である8型、19型、37型)による疾患です。
 流涙、目脂、結膜の強い充血が特徴で、熱や咽頭痛を伴うこともあります。小児だけではなく、成人を含めた広い年代でみられます。接触感染により感染しますが、感染力が強いため家族内でも広がる可能性があります。接触感染予防として、タオルや洗面用具を共用しないこと、充分な手洗いなどが必要です。また患者の入浴は最後の方がよいでしょう。夏期に多いウイルス性疾患で、例年ピークは8月の下旬になることが多いです。御注意ください。

(8月31日更新)

ページトップへ

  
 アメーバ赤痢

 今週、アメーバ赤痢の報告が1件ありました。2010年は京都府では今までに17件の報告がありました。
 アメーバ赤痢は全世界に患者がみられる消化器感染症で、海外渡航者が感染することが多いといわれていましたが、近年は国内感染による発症例が70%を占め、福祉施設などでの集団感染も報告されています。男性同性愛者にも多くみられ、性感染症の1つとも考えられています。日本での患者数は増加傾向にあります。
 感染経路は経口感染で、便中に排泄された赤痢アメーバに汚染された飲食物などから感染します。潜伏期間は通常2〜4週間ですが、数日〜数年にわたることもあります。主な症状は下痢、粘血便、しぶり腹などです。ワクチンはありませんので不衛生な食べ物を食べないようようにし、十分に加熱調理したものを食べることが重要です。

(8月16日更新)

ページトップへ

 バックナンバー トップ  2009年 バックナンバー   2008年 バックナンバー   2010年 疾患別


ページトップへ

Copyright(c) 2006 Kyoto Prefecture Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.