４．雄ガニの最終脱皮と成熟の関係

  最終脱皮は、雄ガニの市場価値と密接に関係していることが分かりました。それでは、生物学的にはどのような意味を持つのでしょうか。それは、成熟に関係しているといわれています。
  ここで、面白い実験結果を紹介します。ひとつの水槽に交尾前の雌ガニと最終脱皮を終えた雄ガニ（最終脱皮雄ガニ）と終えていない雄ガニ（未最終脱皮雄ガニ）とを収容して、交尾行動を観察します。未最終脱皮雄ガニは最終脱皮雄ガニに攻撃され、水槽の隅へ追いやられてしまい、雌ガニとの交尾に成功したのは、最終脱皮雄ガニだけでした。甲幅6cm以上程度であれば、未最終脱皮雄ガニでも交尾は可能であることは分かっています。すなわち、雌ガニとの交尾能力は、最終脱皮雄ガニが未最終脱皮雄ガニよりも優れていることを示しています。
  このようなことから、最終脱皮雄ガニを形態的な成熟個体、未最終脱皮雄ガニを形態的な未成熟個体と呼ぶ研究者もいます。また、最終脱皮雄ガニでもより大きいカニの方が、交尾能力に優れているようです。