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 クロアワビの種苗生産を現在実施している都道府県は、日本海側では福井県以西、太平洋岸では千葉県以西の計22都府県の種苗生産機関です。これらの都府県のうち、「水温上昇期の大量死」の発生があったとの公式報告が14府県からあり、これら14府県の発生事例における死亡率は単純平均で約50%でした。また、従来発生報告のなかったいくつかの県でも発生事例があるとも言われ、実際の発生府県はさらに多くなると考えられます。

  「水温上昇期の稚貝の大量死」は、通常波板から剥離した稚貝(0年貝)で発生することが多いのですが、剥離前にも発生します。したがって、年齢的には大部分は0年貝に発生します。しかし、0年貝の死亡時期と同時期に、1年貝も同様の症状で死亡することがあります。大量死は4月下旬〜7月下旬あるいは8月上旬頃の発生事例が多く、発生時期の水温は13〜25℃の範囲内です。水温が25℃以上になると、自然に治まる傾向が明らかです。
 
 大量死の事例で衰弱、死亡する稚貝の症状は次のようなものです。餌を食べなくなったり、波板に付着する力が弱くなり、動きが鈍くなったりします。そして、軟体部の萎縮(いわゆる「足」の筋肉がやせる)が主要な症状です。また一部の稚貝では、貝殻外唇部(貝の「へり」の部分)の一部が欠けたり、貝殻の内面が赤褐色に変色することもあります(写真1)。普通健康なクロアワビは昼間物陰に隠れ、暗い所を好む傾向がありますが、大量死の事例では昼間でも表に出てきます。明暗の区別がつきにくいようです。
写真1.大量死事例におけるクロアワビ稚貝の病貝(衰弱貝)の外観症状(スケール=2.5 mm)

 少し話が専門的になりますが、このような稚貝の病理組織検査を実施してみると、腹足筋肉(いわゆる「足」)中の中央に2本並列して走る神経幹および神経幹から分枝して腹足表層部に分布する末梢神経系に円形あるいは長楕円形の異常細胞塊が多数見られます(写真2、3)。
写真2.クロアワビ病貝の腹足の病理組織像(スケール=1mm) 写真3.クロアワビ病貝の腹足筋肉中の中央に並列して走る2本の神経幹の病理組織像(スケール=0.2 mm)
 同様の異常細胞塊は鰓や外套膜にも見られます(写真4、5)が、正常な稚貝には全く見られません(写真6)。また、衰弱、死亡稚貝の病理組織像においては細菌、真菌(カビ)および寄生虫の存在は全く認められませんでした。
写真4.クロアワビ病貝の鰓の病理組織像(スケール=0.2 mm) 写真5.クロアワビ病貝の外套膜の病理組織像(スケール=0.5 mm)
 写真6.健康なクロアワビ稚貝の病理組織像(スケール=1mm)

 
 ところで、大量死の発生は、クロアワビばかりでなく、マダカアワビやエゾアワビにおいても報告があり、症状もほぼ同様のものです。しかし、メガイアワビでは発生報告はありません。

 以上のように、京都府内ばかりではなく他の多くの府県においても、クロアワビの種苗生産、中間育成で発生する「水温上昇期の稚貝の大量死」は放流用種苗を量産する上で大きな問題となり、放流種苗の数量確保や生産コスト削減の障壁となっていました。また、放流種苗の健苗性に疑問を投げかける要因ともなっていました。
 


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