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株式会社松尾商店(京都企業紹介)

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大豆のプロフェッショナル・松尾商店

画像:京都・清水五条の地で大豆を専門に商いを始めて半世紀

(掲載日 平成29年1月10日)

 平成25年度経営革新企業、株式会社松尾商店(京都市)の松尾友喜子専務取締役様にお話をおうかがいしました。

京都でも数少ない「大豆問屋」

―たくさんの新しい取り組みにチャレンジされてらっしゃいますが、まず、本体事業の概要から教えてください。

松尾) 大豆を中心に米、食用油などを豆腐店や食品メーカー等に卸す穀物卸問屋を営んでいます。特に当社のような「大豆問屋」は京都でも数少ないです。先代社長の父の時代に関係を構築した滋賀県産大豆を中心に扱っており、「滋賀県の大豆なら松尾商店だ」と言っていただいています。

―「問屋」のお仕事は、異業種や小売店が簡単に参入できるようなものではないのですよね。どういうところが難しいのですか?

松尾) 大豆の取引は入札、契約栽培、相対取引がありますが、農作物は収穫できる時期が限られていますから、一定の時期に1年分まとめて購入し、それを1年間かけて豆腐店や食品メーカーに販売していくわけです。従って、まず、落札、契約栽培実行、相対契約締結後2か月以内に支払をしなければなりませんから、資金繰りが大変です。また、何十トンという単位で購入しますから、産地の近くに問屋自ら倉庫を有してそこに貯蔵しながら、販売の都度、搬出して自社のトラックで輸送するというのは大きな手間とコストがかかります。そして何より、いかに情報を集め相場を読み適切に確保するかというところです。高値で仕入れれば卸値も上がり顧客にご迷惑をおかけします。例えば各産地の作柄や品種ごとのニーズの変動を念頭に、全体価格を読み取り、高騰しそうだという場合には予め多く確保しておくなどといった対応をするわけです。

「男社会」の業界で活躍する女性専務

―資金繰り、手間、そして情報、相場を読むノウハウなど、難しいものなのですね。

松尾) 2012年に父が心疾患で急逝し、急きょ家業を継がざるを得なくなりました。配達は3名の社員に任せ、私は仕入れ、営業、経理を中心に、現社長の母に代わり業務全般を取り仕切っていますが、豆の取引は素人でしたから、最初は大変でした。同業の商社担当者さんらにも教えていただき乗り切ってこられました。かつて父から大豆のことを教えてもらって恩義があるとのことでした。情報やネットワークが殊の外重要で、すごいしきたりもある業界ですが、そんな中、大変ありがたいことです。

―以前は何をされてらっしゃったのですか?

松尾) 当社の事務をする前は、米国NYで語学教育関係の仕事をするなどしていました。その当時からのネットワークが今の仕事に活かされている面もありますね。家業を継いだ際には「男社会」のこの業界で「よくぞ継いでくれた」と、結構話題になりました(笑)。

大豆の大いなる可能性を追求

経営革新計画、「SOY DELI」など、ユニークなお取り組みを展開されてらっしゃいますよね。

松尾) 大豆は、「畑の肉」と言われるように、食物の中で唯一肉に匹敵するだけのタンパク質を含有するとともに、鉄分や骨の形成を促すビタミンK、骨からカルシウムが溶け出すことを抑制するなど骨密度の高さに効果を発揮すると言われる大豆イソフラボン、整腸作用を促すオリゴ糖なども含まれ、大変栄養価の高い食物です。2020年には東京オリンピック、2021年にはワールドマスターズゲームズをはじめ、スポーツへの関心や健康志向の高まり、超高齢社会などの背景を踏まえ、更なる新製品開発を現在複数進めています。

―大豆は、世界的には大豆油製造用の栽培が大半であり、食用は数%だけだそうですが、若芽であるモヤシ、熟す前の枝豆、そして、乾燥大豆、きな粉、おから、豆乳、あるいは豆乳から作られる湯葉や豆腐、更には、大豆を発酵させたものでは醤油、もろみ、味噌、納豆など、挙げればきりがないほどの大豆食品に私たちは親しんでいます。

松尾) 豆乳は右肩上がりで販売量を伸ばしていますし、健康志向の高まりからも定着しつつあります。豆腐や油揚げなどは、付加価値のある大豆をお探しのお店やメーカーが増えてきており、地大豆と呼ばれる、その地域に昔からある大豆のニーズも高まってきていると実感しています。

「TOFU」の広まり― 豆腐屋さんの事業承継と起業

―御社は国産大豆を中心に扱ってらっしゃいますが、日本全体では輸入が多いですね。20世紀初頭までは東アジアに限って栽培された食用作物だったと聞いています。

松尾) 豆腐も東アジア、東南アジアを中心に親しまれてきた食品です。しかし、京都では豆腐屋さんの数が激減しており、商工組合の会員数もピーク時の約500軒から現在は約100軒にまで減少してきています。豆腐屋さんの事業承継、事業継続が大きな課題なのです。

―そうなのですね。

松尾) ヨーロッパではおしゃれな豆腐屋が出現してきています。日本語の「TOFU」が使われています。日本の柔らかい豆腐とは少し違った、チーズっぽいものであったり、肉の代用として少し硬めのものであったりが多いのですが、とても人気です。一方の京都でも、老舗で大人気のお豆腐屋さんもたくさんありますし、新しいタイプの豆腐屋さんも登場してきています。大豆や豆腐・油揚げなどを使ったお惣菜やお菓子のラインナップもウケがいいと思います。また、NY時代には、多様な宗教の方がいらっしゃったので、必ず複数の「選択肢」が必ずありました。そういう点で、インバウンドを意識しても、あるいは、健康志向、「食」にストイックなアスリートを意識しても、「オーガニック」も大きなキーワードかもしれません。

―なるほど。

松尾) 先でも述べた通り、今、昔からのお豆腐屋さんがどんどん廃業されています。しかし、新しいスタイルのお豆腐屋さんなどは、反対に企業のチャンスかもしれないですね。インバウンドも増加していますし、地域の方もきっと求めてらっしゃると思います!

 

同社と業界の今後の発展が楽しみです。

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