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Noster株式会社(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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京都品質QOL向上支援新商品サービス提供企業群

腸内菌叢をターゲットにした革新的治療薬の開発

(掲載日:令和2年6月9日、ものづくり振興課 足利、中原、岩橋)

Noister企業イメージ

Noster株式会社(外部リンク)(向日市)の北尾浩平代表取締役CEOにお話をおうかがいしました。

腸内菌叢解析による創薬

―まず、事業の概要を教えてください。

北尾)祖父が創立した日東薬品工業株式会社(外部リンク)からバイオ研究部門を独立させるかたちで、Noster株式会社を2020年5月15日に設立しました。これは、腸内菌叢(そう)をターゲットにした創薬開発を加速させることを目的としています。例えば、難培養の腸内細菌を直接経口投与する微生物製剤の開発や、乳酸菌などの腸内細菌が産生する脂質の代謝物(ポストバイオティクス)である「HYA(エイチワイエー)」の開発です。

--微生物そのものが「プロバイオティクス」、そのエサが「プレバイオティクス」、その代謝物が「ポストバイオティクス」ですね。

北尾)そうですね。ヒト腸管には1,000種、100兆を超える腸内細菌が共生していると言われ、ヒトだけでは代謝できないものも、こうした腸内細菌が代謝してくれており、これまでの研究で、乳酸菌やビフィズス菌をはじめとした腸内細菌が人間の健康に有益な効果をもたらすことはわかっていましたが、最新の研究では、糖尿病や腎疾患などの基礎疾患、免疫系疾患や癌等と関連する腸内細菌の特定や腸内細菌が産生する代謝物が生体の免疫応答や代謝経路に重要な働きをしていることが明らかとなってきました。

--「マイクロバイオーム(微生物叢)」の研究から創薬を進めてらっしゃるところは他にあるのですか?

北尾)創薬をメインで進めているところは世界中を見渡しても珍しいと思います。当社は、科学雑誌「Science」を出版する米国科学振興協会AAASとの共同プライズ「NOSTER & Science Microbiome Prize」を設立しており、腸内菌叢研究の発展に貢献する若手科学者をサポートし、腸内菌叢をターゲットにしたグローバルな治療基盤の確立を目指しています。

賞

-えー!すごいですね。あの有名な「Science」と!?マイクロバイオーム創薬を先導していかれるわけですね。

北尾)分子レベルで有効成分を確認する従来の創薬とは異なりますから、既存の製薬メーカーでも難しい分野だと思います。当社は、日東薬品工業で長年培ってきた有用微生物の培養技術に基づいて、腸内細菌とポストバイオティクスの機能を解明する研究を進めてきました。

--なるほど。

北尾)もちろん、創薬開発には10年、15年と長い年月と多額の資金が必要ですから、機能性食品事業やコンシューマー向けの腸内菌叢解析サービス、知的財産権のラインセンス活動も並行して進めながら、アメリカやフランス等の企業・研究機関と共同で創薬開発に取り組んでいるところです。

--Nosterには何名くらいの方がいらっしゃるのですか?

北尾)30名弱で大半が研究者です。研究開発に会社の未来を先導させるという意思決定に基づいて事業を展開していますが、研究者だけでなくマーケティングや広報など、必要となる専門人材は大手製薬メーカーなど外部からも招いています。引き続き研究開発の拡大を図っていきます。

オンリーワンを支えるプロバイオティクス

--さて、菌のことについてもお伺いしたいのですが、自社株をお持ちだとのことですね。

北尾) 産業株としては現在7種類を扱い、その他にも植物や発酵食品由来の乳酸菌等を400株以上、またヒト由来の腸内細菌600株以上の菌株をライブラリーに保有しています。

--「1,000株」ですか?!

北尾) 京都は発酵食品の文化が進んだ土地ですので、すぐき漬けや菜の花漬けなどの珍しい漬物がたくさんあり、種類も豊富です。そうした漬物や植物などから単離してきた乳酸菌やヒト腸管から分離した難培養の腸内細菌を自社内でライブラリーにストックしています。

菌の例 菌の例 菌の例

--具体的にはどういう機能を有する菌をお持ちなのでしょう?乳酸菌は糖を分解して乳酸を作り、その乳酸が腸内を酸性へとpHをコントロールして悪玉菌の発生を抑えたりするわけですよね。

北尾) はい、プロバイオティクス乳酸菌として、フェカリス菌NT株(Enterococcus faecalis NT)、ブレビス菌T001株(Lactobacillus brevis NTT001)、ブレビス菌M003株(Lactobacillus brevis NTM003)、ロイコ菌M048株(Leuconostoc mesenteroides NTM048)があり、乳酸を産生して腸内環境を整える作用の他、それぞれ異なった特徴を持っています。フェカリス菌NT株は悪玉菌の増殖を抑える作用、ブレビス菌T001株はナチュラルキラー細胞を活性化させて自然免疫を高める作用、ブレビス菌M003株はプリン体を分解して尿酸値を下げる作用、ロイコ菌M048株はIgA抗体の分泌を促進して粘膜バリア機能を強化することや免疫バランスを整える作用が報告されています。

--なるほど。

北尾) 乳酸菌のほか、ヒトの腸内に最も多く棲みついている善玉菌で、乳酸に加えて酢酸も作り出し悪玉菌の増殖を抑制するビフィズス菌NT株(Bifidobacterium longum NT)、納豆から分離される善玉菌で、熱や酸に強い芽胞を形成し、ビフィズス菌の増殖を促進させる働きがある納豆菌NT株(Bacillus natto NT)、腸管粘膜のエネルギー源となり、更に炎症抑制作用を有する酪酸を産生する酪酸菌NT株(Clostridium butyricum NT)があります。酪酸菌を事業化しているのは国内で当社を含めて数社だけです。また、これら7種類の菌を産業用として培養していることも日本では珍しいと思います。

--7種類というのは多いのでしょうか?つまり、菌を培養するのは難しいものなのですか?

北尾) はい、医薬品や食品として製造するには高度な微生物培養技術が必要です。当社の場合は、乳酸菌、酪酸菌、納豆菌、ビフィズス菌など様々な菌を、その特性に合わせて培養しています。微生物という生き物を扱っているので非常に高い技術力が要求されます。簡単には真似のできない技術です。特に腸内細菌は酸素がほとんどない環境に生息している嫌気性菌であるため、自然環境下での培養は困難です。当社はこれら難培養の腸内細菌も独自の培養技術で培養できることが大きな強みとなっています。

まさに「クレイジー!」なマイクロドロップレット

--機密事項も多いと思いますが、差し支えのない範囲で、少しだけラボを拝見させてください。

北尾)はい。こちらは腸内菌叢を再現したラボです。ヒト腸管内は酸素がほとんど存在しない嫌気状態になっていますので、チャンバー内に酸素のない環境をつくり、様々な腸内細菌を培養しています。

--なるほど。

北尾)その培養方法の1つとして、マイクロ流体デバイスという特殊な装置で難培養の腸内細菌を包み込む方法です。PCの画面で丸く見えるのが直径30µmの油滴で、その中に1µm程の大きさの腸内細菌を一つずつ入れ、酸素に触れさせることなく培養しています。油で自動的に包み込む機構は、自社で独自開発したものです。この技術によってヒト腸管から腸内細菌を網羅的に分離することが可能になりました。

マイクロドロップレット

--この装置がなければ、これまではどうしていたのですか?

北尾)平板培地で培養した腸内細菌を1つずつ手作業で分離していました。これまでは培養に1日~2日、長いもので5日以上かかっていたことを思うと驚異的です。

--そうなのですね。この装置だと、自動で流れるように次々と・・・ですから、比較にならない程、スピードも量も向上しているわけですね。

北尾)「Science」の方々がこれをご覧になられて「クレイジーだ!」とおっしゃってくださいました。それくらい今までにない発想で取り組んでいるのです。これによって、PCRや次世代シーケンサーなどDNA解析工程に送る菌の分別も非常に速く簡単になります。

--なるほど。

北尾)そして、こちらは腸内細菌の代謝物である「ポストバイオティクス」を創り出すラボです。冒頭にも申し上げましたとおり、菌は、ヒトが消化できないものを分解(代謝)し、ヒトの体に有益なもの、例えば乳酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を作り出します。こうした代謝物には高い生理活性があり“プレバイオティクス”、“プロバイオティクス”に次ぐ“ポストバイオティクス”として腸内細菌の代謝物が世界的にも注目されています。当社はこの分野でも最先端の研究を行っており、京都大学や理化学研究所など様々な研究機関と乳酸菌の代謝機能を利用して生産する腸内細菌脂質代謝物「HYA」の研究開発を進めています。HYAは植物油に含まれるリノール酸から乳酸菌の酵素反応で作り出されるもので、腸管バリア保護効果や血糖値上昇抑制効果を動物やヒトを用いた試験において確認しています。将来的には画期的な新薬として世界中の人々の健康に寄与することになると確信しています。

HYA

--いいですね!

北尾) もう1つは、ロイコ菌M048株が産生するロイコサッカライドという難消化性の食物繊維(菌体外多糖)です。乾癬(自己免疫疾患で慢性皮膚疾患のひとつ)の症状を緩和することや肥満抑制効果などを細胞や動物試験で確認しています。プレバイオティクスやワクチンのアジュバントとしての可能性を感じています。

食物繊維

--ありがとうございます。最後に今後の展望を改めてお願いします。

北尾)「腸内菌叢と生命をつなぐ」をビジョンとして、腸内細菌とその腸内細菌が産生する「ポストバイオティクス」による微生物・代謝物ライブラリーを構築し、腸内菌叢をターゲットにした革新的治療薬を創出してまいります。

 

革新的治療薬、楽しみです!!

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp

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