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知の京都- 小林 聡さん(同志社大学大学院 生命医科学研究科 教授)

産学公連携、産業振興の一環として、京の研究者・専門家の皆さんを紹介するページです。

chinokyoto mono 

転写因子によるがん発症メカニズムの究明

(掲載日:平成29年8月10日 ものづくり振興課)

kobayashiakira

 同志社大学大学院 生命医科学研究科 小林 聡 教授にお話をおうかがいしました。

転写因子によるがん発症メカニズムを研究

-まずは先生の研究内容から教えてください。ちなみに私、全くのド素人ですので、その点をご配慮いただいて、簡単にお願いします、すみません(笑)

小林教授) はい(笑)。私は現在、がんの研究をしています。がんはご承知の通り、日本人の死因の第1位であり大変重要なテーマだと考えています。人間の身体は60兆個の細胞からなっており、その数は巧妙にコントロールされているのですが、がんとは、簡単に言えば、細胞の遺伝子の異常により、細胞分裂のコントロールが効かずに過剰に細胞が増殖したり、あるいは転移して、生体が消耗したり臓器の機能不全に陥ったりすることです。ここで、細胞核の中にあるDNAの遺伝情報をRNAに転写する過程を促進あるいは抑制する、転写因子というものがあるのですが、私は転写因子NRF3ががんを発症させるメカニズムを研究しているのです。

-DNAの二重らせんがほどけてRNAに情報が転写されて、アミノ酸配列、つまり、体の主要成分であるタンパク質の作られ方、遺伝子が決まっていくとかいったことを、遠い昔に習ったような、かすかな記憶が・・・(笑)。今おっしゃった、NRF3ががんを発症させるメカニズムの前にNRF3はそもそもどうやってできるのですか?これもタンパク質ですかね?

小林教授) そのとおりです。大腸がんを例に説明しましょう。大腸上皮細胞という、文字通り大腸の上皮になる細胞があります。この幹細胞が細胞分裂あるいは分化することで大腸の表面を覆っていきます。この際、先ほど申しましたように、細胞増殖のコントロール、すなわち「アクセル」と「ブレーキ」のバランスが重要なのですが、ここでブレーキが壊れてしまうと、ポリープという腫瘍ができます。この段階ではまだ悪性腫瘍ではなく良性腫瘍であって、「悪ガキ」レベルです。このポリープができる時に、NRF3は機能しているようです。さらに他のアクセルやブレーキが壊れてしまうことで、「大人のワル」、つまり、がんになってしまうということなのです。

世界で最初に転写因子NRF3を発見

-NRF3は、もしかして、先生が最初に発見されたのですか?

小林教授) そうですね。東北大学大学院医学系研究科にいる時に発見しました。

-すごいですね!こうした研究をなさってらっしゃる方は、他にもいらっしゃるのでしょうか?

小林教授) 転写因子の研究をされている方はたくさんいらっしゃいます。例えば、NRF2なんかは有名でして、世界中の研究者が研究されています。しかし、NRF3については、他は、私のすぐ後にNRF3を発見されたカナダのチームくらいですね(笑)

-どういうことですか?

小林教授) 私自身、研究を重ね、細胞レベルまでは結果が出ていたのですが、次にノックアウトマウスを作成したところ何も異常が出ない、結果が出ない状況になり、関連するNRF2の研究へと「異動」になりました。その後、約10年前に同志社大学にお世話になることになり、研究テーマを何にしようと考え、再度NRF3にチャレンジすることにしたのです。実は、私がNRF3の研究から離れている間に、がんに関するデータベース、百科事典のようなものが世界中の研究者の協力により作製されており、大腸がんの患者さんについては、どの遺伝子に傷があるか?などのデータが公開されていまして、その1つにNRF3もあります。「果報は寝て待て」じゃないですが(笑)、ノックアウトマウスで結果が出なかったために私がNRF3から離れている間に、世界の研究状況が変化したのです。

縁の下の力持ち

-到達目標や課題はどういったことになりますか?

小林教授) 社会の課題に対応するということでは、やはり創薬に繋がることだと思います。しかし、10年、20年スパンの時間がかかりますし、あのNRF2をターゲットとしたお薬においてさえ、劇的な副作用が見つかり開発が難航している状況であり、並大抵のことでは実現しません。いつ役に立つか分からないですが、先ほどのがんに関するデータベースのように、研究を進めておけば必ず、どこかでいつか誰かのために役に立ちます。しかし、直接的に役に立つことばかりではなく、縁の下の力持ちも世の中には必要です。研究者としては、創薬だけがアウトプットではなく、誰も知らなかった重要な生命現象を突き止めていきたいですね。

-こうした厳しい道に、どうして先生は進まれたのですか?

小林教授) 父が開業医で医者になってほしいといわれていましたが、反抗して大学では化学に進みました。高校生の頃から、ずっと研究を続けたいと思っていたので、アカデミアでの研究の道に進みたいと考えていました。有機化学の研究は本当に楽しかったのですが、既に多くの先人が体系を築いてこられている分野でありましたので、大学院では新たに生命科学の分野にシフトしました。これまでの化学の知識も役に立ちましたね。

-さて、現在、中小企業の現場では、人手不足が大きな課題です。最後に、今の学生さんや人材育成についてお聞きしたいと思います。

小林教授) まず、豊かな国であるからか、「将来何をしたらいいか分からない」と言ったり、人生の目標がない学生が多いのが心配ですね。また、自分も20歳くらいの頃は「新人類」と言われた世代なのですが、今の子らは少し頑張りが効かないように思います。研究って本当に大変なんです。先ほどのノックアウトマウスも2年かかって、結局元気なマウスしかできなかったのです。研究にはこういう失敗がとにかく多いのです。だから学生も嫌がります。しかし、こうした誰もが嫌がるようなことを、粘り強く苦労してやり切るような人材を育てていきたいですね。

とても気さくに、しかも難しい内容を、ユーモアたっぷりに教えてくださいました!どうもありがとうございました!

 

株式会社OFFICE SAWAMURAの「知のスペシャリスト(外部リンク)」では、動画で紹介されています。

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