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自然観察路ガイド 花背大悲山(だいひざん)・峰定寺(ぶじょうじ)を歩こう


京都の自然200選「花背大悲山」

大悲山口バス停-0.7キロメートル(10分)-桑谷分かれ-1.4キロメートル(20分)-峰定寺-1.6キロメートル(25分)-ナメラ谷分かれ-0.8キロメートル(15分)-オコ谷分かれ-1.6キロメートル(25分)-オコ谷終点

大悲山 (標高746メートル) は、京都市の中心部から北へ約35キロメートル離れたところで、丹波山地の東南部に当たりますが、行政区分上は京都市左京区です。
この地域は、夏期でも月平均気温は22度前後と涼しく、冬期はマイナス1度前後で積雪量の多いところです。
大悲山の南斜面には、モミ、ツガ、スギ、ヒノキなどの常緑針葉樹やミズナラ、クリ、アカシデなどの落葉広葉樹林の自然林が見られます。

この大悲山を取り囲むように流れる渓流は、桂川の源流の一部となっています。
地質は、丹波帯秩父古成層から成り、硬いチャートでできた岩峰が見られます。
このように、急しゅんな山地とそれを縫うように流れる清流とが調和のとれた景観を保っており、大悲山は四季折々の表情を見せてくれます。

コースに沿って歩こう

大悲山口でバスを降りて、まず気のつくことは空気が冷たいことでしょう。真夏でも、日中の日ざしは強いものの、木陰に入ればさわやかです。
バス路線から「大悲山峰定寺」の石碑の前を東に入ります。しばらく行くと、2軒~3軒の家があります。道路の山側にナシの木があり、秋には直径5センチメートルほどの実を実らせます。
さらに進むと、道路は川沿いになります。川は硬い岩盤を縫うように曲がりくねって流れています。流れのカーブの内側では、小さいながら河原ができ、外側では川底が深くえぐれ、川のたい積や浸食の作用がよく観察できます。ここでは、アマゴ・アブラハヤなどの魚が岸辺や橋の下などの深みで流れてくるエサを求めている様子が見られます。

また、この辺りの山の斜面では、大きな岩が林の中から谷をのぞきこむように顔を突き出しています。このような岩の上ではカモシカの姿が見られることがあります。
バス停から2キロメートルほど行くと、花背大悲山保全地域への誘導板がある峰定寺参道入口に出ます。

峰定寺の境内は、京都府歴史的自然環境保全地域に指定され、モミ、ツガをはじめとする天然林を残しています。シダ植物やヒカゲツツジ群落など学術的に重要なものも多く、保護地区を指定して植物の採取を禁止しています。

峰定寺のコウヤマギ

駐車場を過ぎると道は未舗装の林道となります。峰定寺の寺務所を対岸に見ながら300メートルほど行くと、大悲山の中腹の木立の中に懸崖造の本堂を遠望することができます。
しばらく行くと、砂防えん堤があります。えん堤の上流側は浅瀬になっているので、水の中へ入って水生昆虫を観察することができます。水中の石などを起こしてその表面をよく観察すると、トビケラ・カゲロウ・ヒラタドロムシなどの幼虫が見られます。

峰定寺本堂

さらに林道を行くと、谷は大きく二つに分かれます。右はナメラ谷、左は寺谷の本流です。ナメラ谷の道は1キロメートルほど行って尾根を上り、峰床山を経て八丁平に行くことができます。
ナメラ谷と分かれて寺谷を300メートルほど行くと、大きな砂防ダムがあります。この上流部は、大量の土砂がたい積して広い川原になっています。橋を渡るとスギ林の伐採地があります。
この先で谷は更に二つに分かれます。右が寺谷、左がオコ谷です。左のオコ谷へ入ると、すぐ右手にアスナロの木があります。オコ谷は大悲山のちょうど北側に位置し、これまでに来た寺谷とは違って、アスナロが目立ちます。

林道の途中には小さな水たまりがいくつかあり、3月下旬にはヒキガエルのひも状の卵塊が多数見られます。
この寺谷川沿いのコースは野鳥の多いところです。川の流れに沿ってカワガラス・セグロセキレイ・カワセミ・ヤマセミなどの渓流の鳥が見られ、周辺の林ではオオルリ・アカゲラ・アオゲラなどのキツツキ類、シジュウカラ・ヤマガラなどのカラ類が一年中見られます。

また、寺谷川本流の谷からオコ谷へかけて、各種のカエデが観察されます。

観察ポイント

1 天然林の観察

大悲山周辺は、林業の盛んなところで、道路沿いの森林はスギ・ヒノキの植林で、木々が整然と並んでいます。そのようなものと峰定寺本堂周辺の森林を比べてみると、違いがよく観察できます。

峰定寺の境内林は、古くから伐採されずに自然の状態が保持されてきたため、立派な天然林が残っており、主な植物群落としてはヒメコマツ・ホンシャクナゲ群落、ヒノキ・ツガーアセビ群落、ミズナラ・アカシデーオオバクロモジ群落、クリーヒサカキ群落などがあります。なかでもヒメコマツ・ホンシャクナゲ群落は、この地域が地形的及び土壌的条件が厳しいことから、この地域の気候的条件で本来成立する群落とは別の安定した植物群落となっており、土地的極盛相の様相を呈している貴重なものです。

峰定寺山門とシャクナゲ

2 水生昆虫

水生昆虫とは、卵から成虫までの一生の生活環のうち、一部の期間でも水中で生活することのある昆虫の総称であり、陸上で進化してきた昆虫の一部が後になって水中に入って暮らすようになったといわれています。この地点の川の中で数多く見られる水生昆虫は、トビケラ・カワゲラ・カゲロウ類の幼虫です。

水生昆虫にはいろいろな種類がありますが、河川の水質、水温、流れなどの影響を受けやすく、とりわけ水の汚れの程度によって、その生息が大きく影響され、生息地域が異なってきます。水の汚れに弱いものや強いものがあって、どのような水生昆虫がどれくらいの個体数生息しているかを調べることによって、川の水の汚染度を知ることができます。このように、わたしたちに環境の状態に関する情報を提供してくれる生物を指標生物と呼びます。(実験コーナー「水生生物で川の水質を調べよう」をご覧ください。)
ここで見られる水生昆虫は、水のきれいなところにのみ生息できる種類であることがわかります。

3 カラの仲間

シジュウカラ科に属するいわゆるカラ類とエナガ科のエナガのグループは樹林内でよく見られます。樹冠部に行動することが多いのですが低木にまで降りることもあり、活発に移動しながら、昆虫やクモ類を捕えます。
繁殖期以外は群れを作り、これらの種の間で混群となることが多いのですが、ときにはキツツキ科の最小の種のコゲラまで混じることもあります。
シジュウカラ・エナガは深山から市街地付近にまで見られますが、コガラは市街地付近では少なく、芦生演習林の軌道沿いのコースなどで鳴き声が聞かれます。大悲山付近にも現れるはずです。

これらの種の識別点を図示します。

カラの仲間の見分け方

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