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更新日:2017年9月15日

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「明日の京都」ビジョン懇話会 産業・労働部会(第3回)の概要

 平成21年7月29日に開催した「明日の京都」ビジョン懇話会 産業・労働部会(第3回)の結果について、下記のとおり概要を報告します。

日時

平成21年7月29日(水曜)午前9時~11時30分

場所

京都府庁第1号館 6階 政策企画部会議室

出席者

「明日の京都」ビジョン懇話会

今井一雄委員、植田和弘委員(部会長)、丸毛静雄委員
(※ 欠席 堀場厚委員) 

ゲストスピーカー

熊野英介氏(アミタ株式会社代表取締役社長)
津田純一氏(株式会社井筒八ツ橋本舗代表取締役社長)
長島善之氏(長島精工株式会社代表取締役社長)
山田敏之氏(農業生産法人こと京都株式会社代表取締役社長)

京都府

山田政策企画部副部長、長濱府民生活部男女共同参画監、山下商工労働観光部長、山口商工労働観光部雇用政策監、田中商工労働観光部副部長、小田農林水産部副部長、事務局ほか

議事概要

1 商工労働観光関係団体懇談会における「明日の京都」に対する主な意見について、京都府から説明

2 次のとおり、テーマに基づき、ゲストスピーカーを招聘し、議論

・「魅力あふれる農業ビジネスモデルの実践」について、山田敏之氏
・「消費者の価値観の変化に対応したビジネス機会の創出」について、津田純一氏
・「成長するアジアとの経済交流のあり方」について、長島善之氏
・「地球環境保全に向けた産業振興のあり方」について、熊野英介氏

 

山田敏之氏のスピーチと意見交換

(山田氏スピーチ要旨)

  •  元々はサラリーマン。就農後は年間の休日がそれまでの105日から22日に。それでも売り上げは初年度400万円、次年度700万円。通常、3人で1,000~1,100万円程度であり、京都市内では1,000万円以上売り上げれば頑張っている方。但し、ほとんどは農業収入だけでは賄えず、不動産収入に頼っている状態
  •  九条ねぎに絞り込んで栽培。東京で高く売れるよう、従来の太く長いものではなく、細く短く、見栄えの良い九条ねぎを生産。売り上げは上がったが、生鮮だと「市況」を理由に安定的な年間契約が困難。それがカットねぎという加工品になると、商品のレベルさえ要求に合えば安定的に需要が発生。
     京都市内では、ねぎを加工して販売する「ねぎ屋」という業態があり、王将、天下一品といったラーメン店とともに成長。また、全国的なラーメンブームもあり、カットねぎの需要は拡大。中央卸売市場への出荷から、ラーメン店との取引にシフト。カットねぎには、見栄えの悪い底値のものを加工することにより高値で売れるというメリットも。
  •  平成15年の長雨によるねぎの不作を契機に、営業から生産にシフト。農法等にこだわった野菜づくりを意識したが、市場で重要視されるのは棚保ちの良さ、見栄えの良さで味は二の次。「旬」よりも年間を通じた安定的な供給が主
  •  安心な食物を、とのコンセプトから卵の生産・販売も開始。また、中国産野菜の残留農薬問題に対する国民の食への不信感を受け、再び九条ねぎへテコ入れ。美山町で栽培を拡大
  •  京都市内の農家とのタッグのもと、「顔の見える農業」をPRするイベントをゼスト御池で開催。新しい枠組みで農業が育つことを期待
  •  安く仕入れた野菜を流通業者が高値で取引するため、東京の飲食店では「京野菜は高い割に味が悪い」という評価。旬の野菜はそれほど高くないが、旬を無視して取引するため、高値に。
     今後は、新しい枠組みの中で、本来の美味しい京野菜を届けたい。

(質疑応答・意見交換)

  •  京野菜というブランドは確立しているが、種を誰もが購入できるとすれば、何をもってそのブランド価値を担保するのか。
    …「京都府産」ということ、生産履歴を表示することで価値を担保している。
  •  産地表示については産地偽装問題で規制が厳しくなっているものの、多くの種は誰でも購入でき、水菜なども他県で盛んに栽培されている。地域団体商標登録できれば良いが、「さつまいも」などと同様、名称が一般化しており難しい。
  •  生産において市場への介入を行わないのであれば、中国産などの有機野菜が入ってくるのは必然。流通において販売のイノベーションが必要。これまでの部分最適から全体最適を模索することが重要。「売る」「加工する」の部分に農政が及んでいない。
  •  京都縦貫自動車道が整備された場合、例えば、府北部の方で野菜を生産し、集荷するという可能性はあるか。また、集荷してどの程度の時間で流通に乗せれば良いのか。その他、食の安心・安全の観点から何か御示唆あれば。
    …冷蔵技術さえあれば時間はあまり問題ではない。道路が整備されれば、北部からの集荷も可能。食の安心・安全は、価格と需要の問題
  •  山田氏のされているような取組を行政として支援したい。そのため、農業ビジネスセンターを立ち上げ、25億円規模の「きょうと農商工連携応援ファンド」を創設。
     模倣や産地間競争に打ち勝っていくためにも、こだわり農法、エコファーマーの制度を利用しながら、良いものを高く売れるようにしていきたい。 

津田純一氏のスピーチと意見交換

(津田氏スピーチ要旨)

  •  株式会社としては50期だが、店を開いてからは200年の歴史。原材料(米、砂糖、豆類)は昔から変わらない。それでも価値観の変化に応じてバラエティ化
  •  八ツ橋が長く愛されてきた理由。1.日持ちが良い、2.京土産としての情報発信、3.ニッキ(漢方)が体に良く、武士が戦の際に携帯食糧とした、など。日本人が昔から愛してきた原材料で作られていることも理由。
     鉄道ができてからは、京土産の代表例として八ツ橋と五色豆。技術革新により、生八ツ橋も。
  •  現在、主力の生八ツ橋は、南座の前にお店があることをきっかけとして、歌舞伎「廓文章」に因んだ編笠型のものを昭和22年に「夕霧」として発売したことが始まり。しかし、価値観の変化に気づきながらもそれを認めたくない京の業界は大反発。その後、少し形を変えたものが滋賀で大ヒットしたことから、逆輸入し、「夕子」として発売。今ではバラエティ化
  •  昭和39年からは、作業工程をオートメーション化。現在、新光悦村の工場では、1日に約1t、22万枚の生産。
     技術革新については、2つの目的。1つは社員の労働軽減。もう1つは、顧客の満足。八ツ橋の購入者はリピーターが多く、昔と一緒の味を通して京都を懐かしむ。しかし、実は昔と全く同じものではない。食べる方の歯の老化に合わせ、技術革新によって以前よりずっとソフトに仕上げている。これは「変化」ではなく「進化」。
     この他にも「進化」はある。以前使っていたザラメは、ミネラル分が多く味わいも良かったが、グラニュー糖はまた味が異なる。それに合わせた作り方の開発。また、生八ツ橋の中に入れる餡について、小倉大納言を発祥の地・小倉の里に持ち込み生産、これを今後、増産予定
  •  工場のある新光悦村は、水質が非常に良い。また、周辺で米、小豆、栗などの原材料が入手できる。今後は畜産物(美山牛乳など)関係でも連携が図れると期待。地域の人たちも非常に協力的
  •  時流に合わせたものを作るのは大変だが、時流は変わる。しかし、本質は品質。愛されてきた商品の「進化」が大切。品質を守りながら多様な価値観に対応するためには、いろいろな人とのコラボレーションが必要であり、その意味からも新光悦村に期待 

 (質疑応答・意見交換)

  •  「時流」と「本質」、「伝統」と「革新」など、良いキーワード。
     新光悦村の存在を初めて知ったが、「原材料が京都(市)のものではないじゃないか」という話はないか。
    …京都の名産品には、1.京都で作られた産物を原材料として作られているもの、2.他地域からの産物を京都の持つ優れた技術で加工したもの、の2種類。原材料、加工技術のいずれかの継承がある範囲で、京都の名産品と呼べる。
     全く同じ材料、同じ加工工程で作られ、パッケージだけ各地域のものに変えているような、いわゆる「レールもの」は、お土産ではあっても、名産品とは呼べない。
  •  原材料(米)について、産地との直接取引や生産者とのタイアップなどあるか。
    …今は粉業者から購入。その時々の米の状態を見ながら業者と相談し、京都府産と滋賀県産のものを使用。今後は直接取引なども考えたい。
  •  編笠の形をモチーフとした「夕霧」など、素材は変わらないが、意匠にインテリジェンスを持たせるということは素晴らしい。大量生産の商品がサブカルチャーからメインカルチャーへと変わりつつある現代、意匠のインテリジェンスを保つヒントは。
    …1つは、品質の改良。また、商品のストーリーを大切にすることも大事。例えば、八橋検校(八ツ橋の起源に縁のある人物)の箏曲道場跡への看板設置、八橋検校を顕彰するコンサートの開催等。3つ目として、バラエティ化した新商品の開発 

長島善之氏のスピーチと意見交換

(長島氏スピーチ要旨)

  •  87年、京都府からの依頼で、陝西省を訪問。省内の国営企業に技術指導。
     しかし、工場に活気がない。国営企業ということもあり、所長と労働者との間に給料の差がほとんどなく、「良い機械を作って顧客に喜んでもらおう」という意識もなかった。そのような中で技術面で指導できることはなく、「せめて工場内をきれいに」とだけアドバイス。
     92年、再度訪中。5年前に行った西安第三机床廠を訪問すると、随分変わった印象。アドバイスを取り入れ、工場がきれいに。
  •  学生時代から、「これからは中国の時代」との考え。パートナー探しに中国全土を回ったが、西安第三机床廠をパートナーに。96年、委託生産契約を締結。しかし、技術指導に行っている間は熱心に耳を傾けるが、日本に帰国すると不思議とまた元に戻る。元々、国営企業ということで斜陽化、作っても売れないような機械を製作しており、給料の遅滞も常態化
  •  99年、技術指導の打ち切りを切り出したが、先方から「会社を作ってほしい」との要望。その後、西安第三机床廠からの全面的協力により、全員中国人の会社を設立。その際、社員の給料を要求どおり認めたところ、品質が一気に向上。日本長島精工の製品と比べても遜色ないレベルにまで到達
  •  しかし、それ以降は、国家税務局との交渉に腐心。まだまだ権力の国、中国。毎週のように経理担当が税務署に呼び出される現状。その結果、西安長島精工は借入金ゼロ。利益勘定は大。中国当局の指導により、日本長島精工から利益が移転
  •  他方、日本の経済産業省も、海外進出にうるさすぎる。西安を見ても、アメリカ、ドイツなどの機械が幅を利かせている。中国当局よりむしろ、経済産業省が日本の中小企業の海外進出のネックとなっている印象 

(質疑応答・意見交換)

  •  中国からの日本への技術者受入は。また、技術者が技術を模倣(コピー)して独立してしまうなどのリスクは。
    …最近はまた変わっているかもしれないが、技術者受入については、外務省が拒否。特に独身者。妻帯者ならOKにはなっているが。
     また、技術の模倣について、長島精工の機械は手づくりであり、ローテクの部分。中国でも多聞に漏れずハイテクが好まれており、ローテクを模倣したがる人はいない。
  •  日本長島精工の利益が中国側へ移転してしまっているとのことだが、将来的にビジネスとして成り立つ芽はあるか。
    …総合技術で日本の社員が納得する程度になれば、「西安製」として逆輸入し、安く販売できる。部品は良いものを使うが、手間賃の部分で安くできる。
  •  中国でのビジネスで、人との関係の重要性は。
    …人間関係が一番大事
  •  「技能レベルは変わらない」一方、「総合技術が違う」との意味は。
    …技能は体で覚えるもの。総合技術には、加えて正しい知識が必要。日本の場合は技術を組織で持っているが、中国の場合はまだそこまで行っていない。また、模倣できる技術はすぐに模倣されるが、基盤技術は模倣が困難
  •  中国のWTO加盟が中国の経営の仕方に与えたインパクトは?
    …地域的なものもあるかもしれないが、中国当局は市場経済に疎い。外資系企業からの利益移転が第一であるという印象 

熊野英介氏のスピーチと意見交換

(熊野氏スピーチ要旨)

  •  環境市場は100兆円あるが、環境産業で1千億以上の企業はない。喫茶店はたくさんあるがスターバックスモデルはないなど、ビジネスモデルがブレイクスルーしていない。
     スターバックスはコーヒーを売っている業態ではあるが、スターバックスのビジネスモデルはコーヒーだけでなく空間、時間といった「無形性」
  •  単に安くて売れるのなら、ダイエーは潰れない。定価で売っているコンビニは高くても売れる。高いものを買うというよりは、便利であるということを買っている。
     コンビニのコンペティターは携帯電話。若い人が携帯電話でお金を使うと、コンビニでちょっとした買い物をしなくなる。こういった「無形性」の価値競争が始まっているにも関わらず、意識は未だに有形のものに行っている。
     例えば、職人は人に投資をする。しかし、バランスシート上、資産となるのはモノとカネ。人への投資は、損益計算書で経費となり、利益は悪化。今の会計では人への投資は表れない。
  •  石油の可採年数は残り33年。森林資源も激しい勢いで消失。貴重な資源にも関わらず、関心がないために森林価値が低下。自然資本を見直すべき時期
  •  優良企業も利益を出し続けることが困難な時代。持続可能な経営、永続性がキーワード。
     日本は世界第2位の経済大国ながら、自殺率第1位。国境なき医師団もここ数年、大阪・西成に医療問題で関わっている。先進国の間でそのような事態が発生
  •  1960~70年代は成長率6~7%。90~2000年代は0.5%~1%。しかし、年収1,000万円以上の人は増加。同時に低額所得者も増加し、格差は拡大。平均賃金が上がらず税収も低迷、エネルギー資源や食糧といった海外依存原料は価格上昇、天候不順も顕在化する中で、豊かな産業をどう作っていくか。それをかたちにできない企業は淘汰
  •  全体最適をめざすというのがアミタのプラットフォーム。持続可能なサステイナビリティ社会の要件は、自然資本と社会関係資本の向上。
     モノではなく、豊かな時間に焦点を合わせてブランディング。今後、商品には、1.「これを買ったら森が修復する」といったような自然関係などの修復への参加満足を表現していること、2.省エネや便利さ、満足などでランニングでメリットを認識できること、3.「無添加なので安全」というように健康面での安心を約束できること、4.希少価値などにより「心地よい」という五感に満足を感じさせることが必要。そういった価値の創造。モノを売るより感性価値の生産にウエイトを置いたとき、従来のものづくりのように、内部取引費用が少ないから企業は集中生産するのではなく、価値づくりにおいては、内部費用の方が高くなり、ウィキペディアなど外部からの方がむしろ効果的
  •  持続可能な要素は、食糧、資源、エネルギーという「有形性」の持続性と、コミュニティや文化という「無形性」の持続性とのマッチング。林業も農業も作業のピーク時に人と資材を投入するが、周年では暇な時期もあることから、その組み合わせで多能職化組織ができ、レイバーコストが効率化。また、農業であれば、健康的な農業を目指せば、健康的な農産物も生まれる。「無形性」の可視化の努力が今後のキーワード  

(質疑応答・意見交換)

  •  地球環境保全の観点から見た今後の農業のあり方について、何か御示唆があれば。
    …ヨーロッパの例で言えば、資源プレッシャーの時代を前に、関税障壁は高くできないため、環境障壁を高くした。環境に良いものしか市場に流通させない。それに伴い、環境に良い農業、工業、流通が普及。農業も農薬を使わないことから始まり、農薬を使わない花の認証が盛んに。
     また、2016年にはヨーロッパで鶏のゲージ飼いを禁止。健康な家畜を作ることで健康な食材にしていくという流れがヨーロッパでは当たり前。日本では、動物福祉の法律は動物愛護法であり、ペットの法律。その所管は農林水産省ではなく環境省。環境省の感覚と、安全な食料としての家畜の考え方というのが遅れている。
     ウルグアイラウンドでも、日本は工業を優先するために自然を犠牲に。
     ヨーロッパでは2001年にイギリスがCSR担当大臣を設置。着々と倫理ウォールを作ろうとしている。金融資本に対する一つの資本。日本は経済に血眼になっているが、経済への不信から、多額の個人資産も市場に流れ込まない状況。では、税で豊かになるのかというと国家の規模が大きすぎる。新たな仕組みを模索する時代。
    …モノの観点から効率性を追求するとイノベーションは消滅。効率性から発想した場合には、コストである「関係性」は切られてしまい、ノイローゼや鬱が増加。
     「関係性」がキーワード。今の日本の不幸の根元は孤独感。「孤独を追放する」というマジョリティの市場が出現。この市場について全ての産業にチャンスが発生。農業なら農業の技法を使い、「孤独を追放する」という市場の気持ちを掴むことで参画欲求が生まれ、消費者は購買を続ける。そういう視点が必要
    …ヨーロッパでは、環境産業から産業基盤へ、そこから社会的基盤へ。日本は逆に環境産業は公衆衛生のまま。この視点からでは、社会で必要なものも不要とされる恐れ。例えばおからは、豆腐屋が不要であるとしたため、産業廃棄物という取扱いに。延長線上の話で、工業の中で非効率になった年輩の人は、品質が劣化したかのように後期高齢者という扱い。その扱いを疑うような社会でないことが一番の問題

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