明治29(1896)年、奈良の地誌『平城坊目考』を見た碓井は、『京都坊目誌』の執筆を思い立ち、20年近くの歳月を費やし、独力で完成させました。首巻、上京乾・坤、下京乾・坤に分かれており、首巻では、京都の沿革、大内裏の概略について述べ、上京・下京の巻では、学区別に各町の歴史、町名の起源、旧跡、社寺について書いています。 明治43年、当時の皇太子嘉仁親王殿下(後の大正天皇)が京都府立図書館に行啓され、江戸時代から明治初年までの京都の地誌、歴史書などをご覧になりました。この時碓井は、刊行前の『京都坊目誌』上京の巻を皇太子に披露しています。その後、大正天皇の即位式の日(大正4年11月10日)には全巻を書き終え、翌年10月『京都坊目誌』は『京都叢書』の一部として刊行されました。 |