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更新日:2015年9月30日

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防災・危機管理対策特別委員会管外調査(平成27年7月27日~7月29日)

国土交通省関東地方整備局 京浜河川事務所[於:二ヶ領せせらぎ館](神奈川県川崎市)

多摩川の治水対策について 

多摩川は、一級河川の中では、勾配が比較的急な河川で、昔から河岸浸食等による出水被害が数多くの地域で発生し、特に、洪水による河岸浸食の発生が著しく、堤防の大部分を削り取る被害も発生していました。

 京浜河川事務所では、多摩川の流域住民約380万人の安全確保のため、ハード対策とソフト対策の両面で、多種多様な治水対策を講じてこられました。

 治水対策は、大きく分けて、1.河道断面の確保、2.堤防の安全性向上、3.スーパー堤防の整備、4.防災拠点の整備等広域防災対策、5.緊急時のソフト対策の5つです。

 その概要は、

1.河道断面の確保として、多数の堰について流れを妨げない構造に改築され、また、無堤部の堤防整備、高潮堤防整備が行われています。

2.河岸浸食の度合いが高い地域の護岸整備が行われ、特に、勾配が急で、洪水時における横方向の浸食が大きい多摩川支流の浅川について、低水護岸と高水護岸の二重防護堤による特殊防護対策が実施されました。二重防護堤は、透水性を確保して地下水の流動に配慮するとともに、目立たない構造に設計しながら現地の土を被せ植生を回復させるなど環境面にも配慮されています。

3.スーパー堤防の整備は2地区で行われ、地域の開発計画と連動し、開発事業者や地域住民との綿密な調整を経て計画的に整備されました。

4.防災ステーションや緊急用河川道路を整備されました。

5.ソフト対策として、管内229カ所に監視カメラを設置し、警戒情報のメール配信サービス(配信先約4,500)を実施されています。

また、河川環境の取り組みとして、多摩川に親しみ、学習ができる仕組みづくりを進め、多摩川をまるごと博物館とする「多摩川流域リバーミュージアム」を推進するとともに、自然体験学習などを行う「水辺の楽校プロジェクト」が20校で実施されています。

さらに、平成26年にはアユが推定約520万尾遡上するなど、多摩川の自然再生も着実に進んでいるとのことでした。

主な質疑 

  • スーパー堤防の整備の進め方について
  • 河床を下げることができた理由について
  • 事業予算の状況と個所配分について など

概要説明聴取

視察(二ヶ領宿河原堰)

概要説明を聴取した後、二ヶ領宿河原堰を視察 

 

消防庁消防研究センター(東京都調布市)

消防研究センターの研究成果等について 

「地震・豪雨による土砂災害等大規模自然災害時の防災活動について」

 消防研究センターでは、1.消防防災に関する基盤から応用にわたる研究開発の実施、2.火災、危険物流失事故の原因調査の実施と支援、3.大規模・特殊災害発生時の専門家集団としての消防活動支援、4.消防の科学技術関係者の連携の構築、という4つのミッションのもと、活動を行われています。

 また、研究内容では、1.消防活動の安全確保のための研究開発、2.危険性物質と危険物施設の安全性向上に関する研究、3.大規模災害時の消防力強化のための情報技術の研究開発、4.多様化する火災に対する安全確保に関する研究、5.災害対応のための消防ロボットの研究開発、という5つの研究プロジェクトに基づき、研究開発を実施されています。

今回、広島市における豪雨による土砂災害の二次災害の実例を基にした「地震・豪雨による土砂災害等大規模自然災害時の防災活動について」の研究成果等を調査しました。

 これは、災害救援活動の問題点と対策について研究されたものです。まず、土石流には、主体が泥か岩かで全く違った動きをするとの分析結果に応じた対策を講じることにより、被害を最小限に食い止めることが可能とのことです。

 今までの土石流対策のほとんどは、直前の兆候に基づき対策を講じようとしたものであり、その時には既に手遅れになっているケースがほとんどだそうです。

 土石流の性質としては、長距離流れる、傾斜がほとんどなくても流れる傾向にある。そして、雨の状態に関わらず、何度も繰り返し発生する。形態も、川の流れが速くなって、底の土砂を巻き込む場合や、崖崩れの土砂が土石流に変化する場合、土砂ダムが決壊して起こるものまで、様々であるとのことです。

 災害の前兆は専門家でもぎりぎりの状況でしかわからず、前兆を把握して災害を防ぐことは困難であり、避難勧告等は見込みで行うことが大事だとのことです。

 二次災害を防ぐことは技術的には可能で、現在、崖崩れの前兆を遠隔でレーダー等で捉える取り組みを研究しているとのことでした。

 

 主な質疑 

  • センター研究者の研究環境について
  • センターの研究予算について
  • 研究成果の活用について など

研究成果概要説明

施設視察(消防研究センター)

概要説明を聴取した後、消防研究センター内を視察

 

国立感染症研究所(於:戸山庁舎)(東京都新宿区)

近年の感染症の動向と対策について 

国立感染症研究所では「感染症の情報(患者発生数、検査、検体など)」を収集・分析し、情報提供を行うとともに、有効で安全なワクチンを提供されています。また、感染症対策のネットワークの中心として、関係各省(厚生労働省、文部科学省、環境省)、各地方衛生研究所・保健所・検疫所、大学・研究機関、医療機関と連携体制を取られています。主要業務は、感染症に関する、1.情報の収集と分析、2.検査と診断、3.研究開発、4.有効で安全なワクチン・血液製剤の国家検定、5.国際協力が柱となっているとのことでした。

感染症サーベイランス(発生動向調査)は、異常事態を早期発見し、データ→報告→分析と解釈→還元→対策→評価→データ→というループをしっかり回す仕組みと体制を整えているとのことでした。現行の「感染症発生動向調査(NESID)システム」は、地方自治体と国の行政機関を結ぶネットワークで、リアルタイムな情報共有が可能となっており、今後、平成28年4月の改正感染症法施行、平成30年3月のNESID更改などの大きな動きが予定されているとのことでした。

 大きな感染症のうち、エボラ出血熱等については、アフリカ西部ギニア近辺のオオコウモリがエボラウイルスの宿主と考えられ、ギニア、リベリア、シエラレオネ等の西アフリカで、近年、かつてない大きなスケールで流行しているとのことです。微生物・病原体などは、その危険性に応じて、4グループに分けられ、最高度に危険なグループ4を扱うレベルの実験室をBSL(バイオセーフティレベル)-4施設という最高度安全実験施設とされており、研究所では、村山庁舎をBSL-4施設として稼働して、エボラ出血熱の研究を進める準備をしているとのことでした。

 デング熱のデングウイルスは、主にネッタイシマカ、ヒトスジシマカが媒介しているとのことです。デング熱の流行地域と患者数はこの10年間で拡大と増加の傾向にあり、WHOは再興感染症の中でもマラリアと共に世界的に最も重要な疾患として監視しているそうです。世界で年間約1億人がデング熱を、約25万人がデング出血熱を発症しており、日本では、ヒトスジシマカの国内分布は秋田県・岩手県以南東京都以北で確認されており活動期間は5~10年で、ネッタイシマカの国内進入事例は2012年~2015年に成田空港で幼虫とさなぎが発見されているとのことです。2014年にはデング熱の国内感染例が東京都の代々木公園周辺のみで確認されましたが、デング熱媒介蚊対策としては、蚊の捕集、蚊の密度調査、環境評価等の調査を行い、その調査を基に、ウイルス検出、蚊の種類・密度の評価などによりリスク評価を行われたそうです。リスク評価に基づき、散布する殺虫剤の選定と優先する散布場所の特定、散布技術の評価等を行い殺虫剤を散布します。散布後、対策の効果判定等結果の総括を行い、今後の方針決定を行われました。2015年、都内9公園においてヒトスジシマカ類の捕集調査を行ったところ、デング熱感染リスクが低下したことを確認したとのことでした。

 MERSの特徴としては、9点あり、1.発生が散発的である。アラビア半島全域で感染者が見つかっている。2.重症肺炎を引き起こし、腎炎や下痢も見られる。3.感染源はヒトコブラクダと考えられるが、ほとんどのMERS患者に動物接触歴がない。4.医療従事者の感染は全体の24%。5.濃厚接触によって人から人への感染が確認されている。6.潜伏期間は2~14日。7.治療薬、ワクチンがない。8.重症化した多くの人が糖尿病、がん、慢性の心・肺・腎疾患などの併存症を持っていた。9.高齢者ほど重症となる傾向がある。健康な人や子どもでは感染しても発症しない不顕性感染の場合もあるそうです。直近の韓国でのMERS感染について、韓国・WHOで合同調査を行ったところ、市中感染ではなく、病院での感染伝播が起こっていることが確認されました。これは中東での状況と同様です。感染拡大の背景としては、院内感染対策が十分でなかったこと。初期の接触者調査、接触者の隔離方法などに不十分な点があったことが考えられるそうです。MERSは、種の壁が低く、動物から人に感染する可能性があるとのことです。ラクダからヒト感染は、分泌物、未殺菌の乳や生肉などからの感染が考えられ、ヒトからヒトへの感染では、飛沫感染や接触感染が考えられるそうです。MERSは、感染拡大防止策的には、二類感染症で入院措置、病原体の取り扱いレベルは二種病原体でBSL-3の封じ込め実験室での対応が求められることになっているとのことでした。

主な質疑 

  • 各感染症の感染経路の究明について
  • 研究所運営に係る問題点について
  • 研究者の異動の問題について
  • 他の国や自治体の研究機関とのネットワークについて など

調査事項説明聴取

調査事項の説明を聴取

 

東京都議会(東京都新宿区)及び和田ポンプ施設(東京都杉並区)

東京下水道における浸水対策について 

東京都では、明治41年から浸水対策を開始し、下水道、河川の整備を進めたところ、広範囲の浸水被害が減少し、河川の水質も向上しましたが、一方で、局所的な集中豪雨の増加と、下水道への雨水流入量の増加により、都市型水害が多発しました。その特徴は、時間50ミリを超える豪雨の多発と、開発により、地下へ浸透していた水がコンクリートで浸透せずに、短時間に大量の雨水が下水道に流入するという現象が起きたとのことです。近年の浸水被害は、河川からの溢水は少なく、ほとんどが内水氾濫であったとのことです。

 このため、東京都では、浸水対策のため、雨水調整池の整備、ポンプ所の建設とポンプ所の能力増強、浸水対策幹線の整備などの様々な対策を実施されてきました。

 このような対策を講じる中、平成25年度に記録的な豪雨が頻発したことから、雨水整備水準のレベルアップを含めた「豪雨対策下水道緊急プラン」が策定されました。

 プランは3つの取組方針があり、1.時間75ミリの降雨対応施設を既存施設の下に整備する「75ミリ対策地区」の設定。新宿駅、渋谷駅、池袋駅、東京駅八重洲口など大規模地下街などが対策地区です。2.時間50ミリを超える降雨に対して既存の貯留施設を活用しながら、必要な場合に、既存施設の下に時間50ミリ対策幹線を設置する「50ミリ拡充対策地区」の設定、3.被害が比較的小規模な地域では、バイパス管の設置や、区と連携した雨水ます増設、雨水が通りやすいグレーチング蓋への取替えなど、現場状況に応じた対策を早期に実施する「小規模緊急対策地区」の設定、となっているとのことです。

ソフト対策では、アメダスの東京詳細版として都が開発した「東京アメッシュ」により降雨情報を平成14年から一般に配信提供され、アクセス数は平成26年度実績で7800万回となっています。

 現在、最新型レーダーの導入により、アメッシュをリニューアルし、雨粒などの観測精度が向上し、弱い雨から強い雨まで正確な観測が可能となったとのことです。また、下水道幹線の水位情報をリアルタイムで提供する取り組みを進めているとのことでした。

その他、雨期である6月を「浸水対策強化月間」と位置づけ、下水道のお客様に浸水対策リーフレットを配布するなどの対策を実施されているとのことでした。

 

主な質疑 

  • アメダスとアメッシュの違いについて
  • 地盤沈下との関係について
  • 耐震化のポイントと現状について
  • 汚泥の処理について
  • 貯留水の再利用について
  • 臭気の処理について など

調査事項説明聴取

施設視察(和田ポンプ)

概要説明を聴取した後、和田ポンプ施設を視察 

 

埼玉県議会(埼玉県さいたま市)

埼玉県における危機管理防災対策について 

埼玉県では、災害発生時の情報収集や応急対策を迅速かつ的確に実施するための拠点機能を確保するため、災害対応の中核施設として「危機管理防災センター」と5つの防災基地が設置されています。

 また、大規模災害時のオペレーション機能を強化するため、災害オペレーション支援システムについて、平成28年3月運用開始を目指して整備中とのことでした。システムは、災害関連情報の一元管理と情報可視化を図るもので、災害情報を地図上に可視化するとともに、市町村や消防、ライフライン事業者など防災関連機関との情報共有を行い、県民に情報発信する内容となっています。

 市町村の消防活動の支援及び県の災害対策等を実施するため、3機の防災ヘリコプターにより24時間・365日の運行体制が整えられています。県が機体購入、運行維持管理を行い、市町村が航空隊員を派遣し、航空会社が機体操縦、整備、格納を行う「埼玉方式」の体制となっています。活動状況は、県内の火災が18件、救助が44件、救急が33件、災害応急対策が4件、県外応援が23件の、計122件となっています。 

埼玉県独自の取り組みとして、「埼玉県特別機動援助隊」(埼玉SMART)を設置し、地震による建物倒壊、列車脱線事故などの災害現場に、迅速かつ効果的な救助・医療活動を行っているとのことでした。埼玉SMARTの登録部隊は、県内7消防本部からの8機動救助隊、埼玉県防災航空隊、災害派遣医療チーム(埼玉DMAT)16チームとなっています。

 業務継続環境の整備については、大規模災害時における電源確保のため県庁及び8支部に非常用都市ガス発電等の整備を行うとともに、情報収集・伝達手段を確保するため衛星系防災行政無線の再整備を行ったとのことでした。

 連携体制では、他自治体、各種団体・企業等と災害時における応援協定を締結し、防災力の一層の強化を図られており、食料・物資、応急復旧、輸送・保管、帰宅支援、仮設住宅、報道、金融、医療などの分野で合計284件の協定を締結されています。

 減災のため、「自助」として、家具の固定、水・食料備蓄などの普及啓発、研修・イベントの実施、「共助」では、自主防災組織リーダーの養成講座を開催されています。

 また、地域防災力の向上を目指して、女性消防団員の加入促進や装備の充実等消防団員の活動環境の整備などの取組を行っているとのことでした。

 

主な質疑 

  • 耐震化の現状と方向性、耐震化に関する助成制度について
  • 県、市町村、民間の役割と連携について
  • オペレーションシステムの構築方法について
  • 消防団員の確保について
  • 広域災害における他県との連携体制について
  • 埼玉SMARTの配備状況と活動状況について
  • 防災ヘリの指令系統について
  • 県外応援の費用負担について など

調査事項説明聴取

説明聴取(危機管理防災センター)

視察(危機管理防災センター)

調査事項の説明を聴取した後、危機管理防災センターを視察

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お問い合わせ

京都府議会事務局委員会課調査係

京都市上京区下立売通新町西入

ファックス:075-441-8398