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京都府自然環境目録2015

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車軸藻のロゴマーク車軸藻類の概要

車軸藻類(車軸藻綱シャジクモ目シャジクモ科)は、主に湖沼、ため池、水田、側溝、小川などといった淡水環境の止水域に生育する大型緑色藻類である。世界で約400分類群(種、亜種、変種、品種)が記載されており、日本からは約80分類群が報告されている。車軸藻類は、淡水生態系のなかで“車軸藻帯(Chara zone)”と呼ばれる群落をしばしば形成して底泥を覆い、透明度維持に重要な役割を果たすことが知られている。したがって、淡水環境の生物多様性維持を考える際には、無視することはできない分類群である。

1960年代以降、淡水域の環境破壊(富栄養化、護岸工事による沿岸域植生の消失、ため池の管理放棄による遷移、水田などにおける農薬の使用、用水路のコンクリート整備など)により、車軸藻類は全国的に減少していることが明らかになっている(Watanabe et al. 2005)。最新の環境省版レッドリスト(環境省 2012)には、日本産車軸藻類のうちの約7割が掲載され、そのほとんどは絶滅危惧I類(CR+EN)に選定されている。車軸藻類が環境省版レッドリスト(環境省 2000)に初めて掲載されて以降、車軸藻類は都道府県レベルでも注目されはじめ、現時点で14の県のレッドリストに掲載されている(青森県、秋田県、栃木県、埼玉県、千葉県、福井県、長野県、兵庫県、鳥取県、広島県、愛媛県、福岡県、長崎県、宮崎県)。京都府版レッドリストにおいても、今回の改訂を機に車軸藻類を新たに掲載することにした。

過去の記録および今回の調査結果をまとめると、京都府において合計21分類群(種・亜種・変種・品種を含む)の車軸藻類が確認されている。これらの分類群には、日本固有種が4分類群、京都府にタイプ産地がある分類群が4分類群含まれている。過去の記録では、シャジクモ属3分類群(シャジクモ、イトシャジクモ、アメリカシャジクモ)およびフラスコモ属14分類群(ハナビフラスコモ、チンピンフラスコモ、ヒメフラスコモ、キヌイトフラスコモ、ニッポンフラスコモ、サキボソフラスコモ、ケフラスコモ、ミゾフラスコモ、カラスフラスコモ、ナガフラスコモ、ホンフサフラスコモ、オニフラスコモ、サイトウフラスコモ、タナカフラスコモ)が記録されている。

今回の掲載にあたり、過去の記録産地12か所のうち八つのため池の再調査に加え、新たに15か所のため池、湿地において車軸藻類の生育状況調査を行った。過去の記録産地の再調査では、すべての地点において車軸藻類の生育は確認されなかった。記録産地の一つである巨椋池は干拓により消失している。

一方、新規に調査した4地点で、5分類群(シャジクモ、ヒメフラスコモ、キヌフラスコモ、ニッポンフラスコモ、モリオカフラスコモ)の車軸藻類の生育が確認された。そのうちキヌフラスコモ、モリオカフラスコモは過去に記録されていない京都府新産種であった。さらに、旧巨椋池跡の底泥に含まれる埋土卵胞子の発芽実験の結果、京都府新産のミルフラスコモ、フタマタフラスコモが確認された。

過去の記録や今回の調査における産地は京都市周辺に偏っており、京都府全域の車軸藻類相とは言えないのが現状である。したがって、今後、京都府全域をカバーした詳細な調査による生育分布の把握が必要である。また、埋土卵胞子を利用した希少種の再生も重要になってくると思われる(松本 2012)。

執筆者 加藤将、坂山英俊

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