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京都府自然環境目録2015

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種子植物のロゴマーク種子植物の概要

京都府全体の植物についてまとめられた出版物には竹内敬著『京都府草木誌』(1962)がある。幸いこの草木誌の基礎となった稀少植物の標本は、ほとんど京都府立植物園に保存されていたので、これを出発点とした。古い記録では伊藤圭介著『日本産物志』(1873)がある。これによると、比叡山にオオヤマハコベ、ヒメヒゴタイ、マツムシソウ、オキナグサ、マルバノイチヤクソウ、ヤマブキショウマ、シオガマギクが産することになっているが、現在比叡山ではこれらの植物はいずれも姿を消していて見ることはできない。

昭和36年(1961)京都新聞社から『比叡山──その自然と人文』という本が出版されている。その中に北村四郎・村田源による比叡山植物目録が掲載されていて、当時シダ以上の高等植物が1,020種自生し、過去に記録があって絶滅して無くなった植物が21種あることが記録されている。今回府内のレッドデータ植物調査にあたり、確認種リストとしてまとめた府内の野生植物の種類数は2,600種類となった。これは比較的安定して生えている外来植物(帰化植物)まで入れた現時点の京都府野生種子植物目録である。この種類数を確定することは極めて難しいと言うよりも、むしろ不可能に近い。と言うのは、栽培した植物の種子が飛んで道端に生えたり、水槽に栽培していた水草がいつの間にか逃げ出して川や池に繁茂したり、新設した道路の法面に緑化工事をしたあとから、もともと無かった植物が生えてきたり、生えていた植物がいつの間にか消えてなくなったり、どこまでを野生と判定するかも難しく、年と共に常に変動するからである。

京都府には高い山が無く、最高峰は滋賀県境近くにある皆子山(972m)である。しかも京都は1000年に及ぶ日本の首都として政治や文化の中心であっただけに、山地にも木目細かく人手が加わっており、自然植生が残っているところは少ない。それでも急峻で近寄りがたい渓谷、岩の露出した山の脊梁や海岸の絶壁、砂浜や湿地など人間でも利用出来なかった所には、自然度の高い植生が残っていて、過去の植物相を考える上にも貴重な存在となっている。

高さによる植生帯からみると、京都府はほとんど暖温帯(常緑照葉樹林帯)に属し、700~800m付近から上だけが冷温帯(落葉広葉樹林帯)に属することになる。その境は雨雲がかかるあたりと考えて良いであろう。700m前後の高さの尾根に野生と考えられるアシウスギの老木が点在するのは、雲霧帯による過湿土壌の分布と関係があるように思われる。南部の山城地域は太平洋型の気候下にあり、冬期にもほとんど積雪がなく、年平均雨量は約1,400mmで府内では最も少ない。比叡山~亀岡市以南の地が植物分布の上ではこの地域に当たる。ミヤコザサ、ナガバノスミレサイシンなど太平洋側に分布する種は、これ以北の地には現われない。さらに、マルバウツギ、ガクウツギ、オオチャルメルソウなどになると宇治市あたりから南でないと姿を見せない。

丹後地域は年平均約2,500mm前後の雨量があり、日本海型の気候で冬には雪が多い。日本海沿岸沿いに暖流が流れているので、近海の地は府内で最も暖かく、1月の平均気温は4~4.9℃あり、ミカンの栽培が行われている。中丹・南丹地域は気候的には両者の移行帯であるが、大部分が山地であるため年平均気温は海岸部よりやや低い。しかし、福知山、園部、亀岡などの盆地では夏期は海岸部より逆に1~2℃高くなるが、それでも京都市の中心部よりは平均で2~3℃低い。秋の良く晴れた朝などは、標高わずか100m内外の盆地でも、放射冷却で5~8℃も低くなることがあり、霧の発生が目立つのもこの地方の特性である。

京都府は上記のように温度や雨量では全域大きい変化が無く、植生に最も大きい影響を与えているのは、地形や地質に関係する立地条件である。
以下に自然度の高い植生の残る地域の概要を記す。

海岸砂丘

府内では日本海に面した丹後地域だけにあり、ハマウツボ、ハマエンドウ、ハマグルマ、ハマゴウ、ハマダイコン、ハマニガナ、ハマハタザオ、ハマボウフウ、ハマベノギク、ウンラン、オカヒジキ、オニシバ、ケカモノハシ、コウボウシバ、コウボウムギ、スナビキソウ、などから成る海浜植物群落をつくる。後背にはクロマツ-ハイネズ群落がある。鳥取砂丘が砂丘利用実験地として自然が破壊されたいま、久美浜町~網野町にわたる海岸、中でも箱石浜は史蹟に指定されているため、最も自然が良く残されている。また、ここにはカセンソウ、キスゲ、キジカクシ、ヒオウギなど大陸系の遺存植物も良く残っている(久美浜教育委員会編 1996)。

ブナ、シデ類の優先する自然度の高い林

丹後半島中心部の安山岩や集塊岩よりなる地域には落葉樹林が発達し、特に宮津市上世屋、京丹後市大宮町五十河付近にはブナ、イヌブナ、ミズナラ、イヌシデ、ハウチワカエデ、サワグルミ、ミズキ、トチノキなどの大径木が茂る林があり、京都府自然環境保全地域に指定された。福知山市の大江山鬼岳稲荷付近にもブナ、シデ類の優先する良い林が残っている。

福知山市大江町 岩戸山

アカガシ、アラカシ、カゴノキ、シラカシ、ツクバネガシ、ツバキ、ヤブニッケイなどの常緑樹に、ケヤキ、フジキなどの交じる自然林があり、岩戸神社のご神体として良く保全されている。

京都市京北 片波川原流域

丹波の山地脊梁部チャートの大きく露出した尾根にアセビ、ホンシャクナゲ、ヒノキ、ヒメコマツ、リョウブ、などからなる岩峰植生、頁岩の多い尾根にアシウスギの大径木、ブナ、イヌブナ、クリ、コハウチワカエデ、カナクギノキなどのある自然度の高い林があり、京都府自然環境保全地域に指定されている。

深泥池

京都市北区にある。わずか標高70mしかない小さい池に、浮き島があり、ホロムイソウ、ノハナショウブ、ミツガシワ、ジュンサイ、タヌキモ、ヒメコオホネ、ミヤマウメモドキなどがあり、深泥池生物群集として国指定の天然記念物になっている。ただ、近年はナガバオモダカ、オオカナダモ、オオバナイトタヌキモなどの外来水草が繁茂し、市民による除去作業が続けられている。

執筆者 村田源

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