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京都府レッドデータブック2015

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京都府の鳥類相

京都府では、1999年時点で321種の野生鳥類が記録されていたが、2012年時点で344種に増加した。観察者の多い京都市周辺から南部の情報が多い一方で、中部地域や北部地域の情報が不足しているという傾向があるものの、他の分類群に比べると鳥類の生息状況はよくわかっているといって差し支えなく、おおむね生息の概況はおさえられている。

以下では、北から順に主な鳥類生息地の概略を述べる。

若狭湾にある島々の中で、鳥類の生息地として重要なのは冠島と沓島である。冠島はタブやアカメガシワに覆われ、オオミズナギドリの集団営巣地として天然記念物に指定され国設鳥獣保護区ともなっている。ハヤブサやカラスバトの生息地でもあり、春秋にはセンニュウ類やムシクイ類など小鳥類の渡りの中継地としても重要である。沓島は数千つがいのウミネコの営巣地となっているほか、カンムリウミスズメ、ヒメクロウミツバメ、オオミズナギドリなどの海鳥の営巣地ともなっている。

日本海側にある久美浜湾、宮津湾、阿蘇海、舞鶴湾といった内湾は、冬期にカイツブリ類、カモ類、カモメ類などの水鳥の集団越冬地となっている。その中でも、阿蘇海にコハクチョウが、久美浜湾にオオハクチョウが少数ながら定期的に渡来することは注目される。冬期、沖合にはウミスズメ類やオオハム類が渡来するが、岸からの観察が困難なためその実態はよくわかっていない。

府内の大部分は山地に占められているが、まとまった面積の自然林は限られている。数少ない自然林の中で最も鳥類の生息地として重要なのは、由良川源流の南丹市美山町にある京都大学芦生研究林である。ここにはブナ、ミズナラ、トチなどの天然林が多く、アカショウビン、コガラ、キバシリなど多くの鳥類が生息している。また、芦生研究林とともに、八丁平や大江山などブナ林のある地域には、コノハズク、コルリ、コマドリ、ゴジュウカラなどが生息している。丘陵から山地の比較的まとまった山地には、クマタカ、オオタカ、フクロウなどの猛禽類が広く生息している。

府内には規模の大きい湖はなく、池の数も隣接府県に比べると少ない。その中で、カイツブリ、バン、カモ類などの生息地として知られている場所に、京都市の広沢池や深泥池、亀岡市の平の沢池などがあげられる。また、天ヶ瀬ダム、喜撰山ダムといった山間部のダム湖もカモ類などの水鳥が渡来することで知られており、天ヶ瀬ダムではオシドリがよく観察される。

河川もまた鳥類の生息場所として重要である。南部地域にある宇治川の向島地区にある河川敷内には近畿地方でも最大級の広大なヨシ原が広がっており、夏から秋にかけてツバメ類の集団ねぐら地となることが知られている。桂川の久我井堰堤上流部を中心とした範囲は、多数のカモ類をはじめとした水鳥の越冬地となっている。木津川は、中州がチドリ類やコアジサシの集団営巣地の記録のある点で注目される。一方、鴨川のような市街地を流れる河川は、浅水部が多いこともあって、サギ類、カモ類、ユリカモメの越冬地となっている。

農耕地にも様々な鳥類が生息する。中でも府内で特筆すべきは南部地域の巨椋干拓地である。ここは、かつて巨椋池があった場所であり、現在は干拓されて水田地帯となっている。ケリが多数営巣しており、春秋の渡りの時期には多種のシギ、チドリ類が立ち寄る。越冬する小鳥類も多く、ノスリやコミミズクといった猛禽類も見られる。オジロトウネン、ホウロクシギ、ハイイロチュウヒ、コチョウゲンボウ、タマシギなども観察され、府内で最も重要なシギ、チドリ類の渡りの中継地であり、同時に重要な猛禽類の越冬地でもある。

種の選定基準

鳥類では、2002年の初版レッドデータブックおよび2013年のレッドリスト改訂にあたっては、ほぼ同じ考えで種選定およびランク判定を行った。

京都府産鳥類リストの中で、多数種、迷行種、情報不足種を除きランク検討種とし、多くの観察者から府内の各種の個体数規模、減少の有無に関する情報を得て、個体数規模と減少の有無を組み合わせて以下のような考えで判定した。なお、鳥類は長距離の渡りをする種が多く、それぞれの種の繁殖個体群、越冬個体群、渡りの時期に中継地に滞在する個体群別に評価して判定し、より厳しい判定をした個体群の結果をもとに種としてのランク判定をした。

各ランクの選定基準は以下のとおりである。

絶滅種

過去に継続的な繁殖や定期的な渡来の記録があるが、現在は継続的な繁殖や定期的な渡来をしていない種(かなり近い個体群はいても断定は難しい)。

絶滅寸前種

(個体群の)個体数が極めて少なく、大部分の個体群が減少している種。

絶滅危惧種

A:個体数は極めて少ないが、大部分の個体群が減少してはいない種。

B:個体数が少なく、大部分の個体群が減少している種。

準絶滅危惧種

A:個体数は少ないが、大部分の個体群が減少してはいない種。

B:個体数は少なくないが、大部分の個体群が減少している種。

要注目種

繁殖個体数が多く、特に繁殖個体群は減少していないが、島嶼に繁殖するなど限られた営巣地で繁殖する種。

2013年のレッドリスト改訂にあたっては、2002年の京都府レッドデータブックの判断内容とその根拠を改訂作業用ウェブサイトなどによって府内の日本野鳥の会京都支部ほかの野鳥観察者に示し、改訂につながる情報や意見を寄せていただき、レッドリストの改訂の検討をした。

選定種の概要

2013年の改訂レッドリストでは鳥類は108種が掲載された。

希少カテゴリー別の種数は(( )内は2002年における種数)、絶滅寸前種が8種(8種)、絶滅危惧種が48種(49種)、準絶滅危惧種が50種(45種)、要注目種が2種(2種)、計108種であった。

京都府では2012年時点で344種(既報告に1種増加)が記録され、このうち31.4%の108種がレッドリストに掲載された。2002年では京都府で321種が記録されており、32.4%の104種がレッドデータブックに掲載されていた。京都府で記録される鳥種の約3割が、何らかの希少性の指摘がされ保護する必要があるという状況に変化はない。

生息環境別に種数を見ると(( )内は2002年における種数)、海域、海岸域、離島が17種(13種)、河川、池沼、ヨシ原が17種(14種)、水田、畑地、草地が31種(30種)、山地、山林が40種(43種)、都市緑地など他の環境が3種(3種)、計108種であった。基本的なパターンは変わっておらず、府内の山地、山林などの森林環境とともに、海岸域や河川、水田などの湿地環境が鳥類の生息環境として重要であることが、あらためて確認された。

選定種を生息環境別に見ていくと、それぞれの環境における課題が見えてくる。

北部の海域、海岸域、離島の環境では、冠島、沓島といった島嶼の環境を厳重に保全することが必要となっている。これらの島は、国や舞鶴市の天然記念物、あるいは国の鳥獣保護区などとして法的に保護されているが、継続的な鳥類および生息環境のモニタリング調査にもとづいた保全策の実施が必要である。沓島における繁殖実態が近年明らかになりつつあるヒメクロウミツバメやカンムリウミスズメの保護のためにはドブネズミなどの侵入を警戒することも必要である。北部の沿岸帯沿いでは、ホオジロガモやクロガモ、ハクチョウ類を含む水鳥の越冬地の保全が重要な課題である。

山地、山林を生息環境としている種の生息環境保全のためには、ブナ林などの奥山の自然林だけでなく、里山など都市近郊にある山林の保全を意識する必要がある。

コノハズク、マミジロ、アカショウビンなど絶滅危惧種以上のランクに選定されている種は、まとまった面積の自然林が存在する限られた地域で確認されることが多い。芦生、八丁平、比叡山など個々の地域に、レッドデータ種がどのように生息しているかを詳細に把握し、それぞれの地域の保全上の課題を把握することが緊要な課題である。

またハチクマ、オオタカ、サシバ、フクロウなど、いわゆる里山で繁殖する猛禽類も多く選定されている。過去にあったような急速な丘陵地開発はにぶっているが、なお課題が残る。奥山も含め、里山は、シカ害やナラ枯れといった深刻な問題をかかえている。単なる保護だけでなく、持続的に地元の森林資源を利用する循環型の社会をどうつくるかが、山地、山林の生息環境の保全を進める上での課題となっている。

河川、池沼、ヨシ原といった生息環境では、木津川などの砂礫洲で繁殖する(または繁殖記録のある)シロチドリ、コアジサシ、イソシギなどの営巣環境の保全が必要である。一方、ヨシゴイやチュウヒ、ツリスガラなどの種にとって、宇治川向島地区のような規模の大きいヨシ原の保全が重要な課題となる。

水田、畑地、草地は、巨椋干拓地の広大な水田、農耕地環境を利用する多くのシギ、チドリ類やコミミズク、ノスリ、コチョウゲンボウなどの渡り期の中継地や越冬地の生息環境として重要である。最近、豊かな生物多様性も提供可能な水田経営への関心が高まっている。多様な鳥類の生息環境を保全する観点からも注目したい。

都市環境でも鴨川の河川敷におけるチドリ類、繁殖を開始したチョウゲンボウのように絶滅危惧種や準絶滅危惧種が生息している。都市環境におけるこのような種の生息環境保全を考えることも、多くの人々に生物多様性保全の意義を普及、啓発する上で重要である。

改訂概要

主な改訂の理由は以下である。

3種(チョウゲンボウ、コウノトリ、マミジロ)は府内であらたに繁殖が確認もしくはその可能性が確認された。チョウゲンボウは京都市内で、コウノトリは京丹後市で繁殖を開始し、マミジロは南丹市芦生で繁殖期の生息情報が得られた。いずれも極めて少数の繁殖個体群であることから、チョウゲンボウは準絶滅危惧種(越冬個体群)から、コウノトリはリスト外(迷行種)から、マミジロは準絶滅危惧種(通過個体群)から絶滅危惧種となった。

コウノトリは、兵庫県豊岡市における個体群復元事業により隣接する京丹後市でも少数個体が周辺生息するようになり2012年に営巣を開始した。

オシドリ、アオバト、コルリ、ジュウイチ、キバシリは、2002年の情報よりは観察記録があることから、絶滅危惧種から準絶滅危惧種となった。イワツバメとタカブシギは、観察結果(減少しておらず、少なくはない)からレッドリストから外した。さらに、オオマシコ、コイカル、ホシガラスもレッドリストから外した。これらの種は定期的に特定の地域に渡来する可能性がない迷行種と判断しなおしたためである。

本来2002年時点で、対象種として検討すべきだったがもれていてリスト外となっていた種で、ホオジロガモ、ミコアイサ、カワアイサ、ヒメウ、タゲリなどは、準絶滅危惧種(越冬個体群)となった。クロガモも対象種の検討からもれていたが、京都府だけでなく周辺県の海岸域における越冬期の調査でほとんど確認されておらず、絶滅危惧種(越冬個体群)となった。

執筆者 須川恒、中村桂子、狩野清貴、
梶田学、脇坂英弥、和田岳、塩崎達也

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